ver.5.0 一日の終わり
僕たちはそのあと何をするでもなくベッドに寝転んでいた。
ちなみにフタツキは猛烈に上のベッドを所望していたが、僕は本当にどっちでもいい、というか下の方が楽そうだったから良かったかもしれない。
しばらく体や精神を落ち着ける時間を作ったあと、この世界について考え事を始めようとしたところでフタツキが口を開いた。
「明日からどうしようか」
「……明日は来るんだろうか。俺はまだこれが夢だと思ってるんだけど」
「来るさ、多分。オレは2日過ごしてる」
「それ込みで俺の夢という可能性はあるんだがな……」
しかしこのままベッドで寝転んで終わってしまうというのは、なんとも寂しいような気がした。
「ま、明日覚めてしまう夢ならそれはそれでいいか。それよりは覚めずに続く現実を憂うべきなのかもな」
「アマギは時々難しいことを言うな」
「そうか?」
まず、僕たちの第一目標はこの世界からの脱出、で間違いないのだろう。
ではそのためには何をするべきなのか?
それはまだ全くわからない。
ではそれはなぜか?
この世界に来たばかりだからだ。
では、
「オレはこのままオレたちの同士を集めたいと思う。何か情報を持っている奴がいるかもしれないし」
先を越された。
「まあ、そうだな。並行してこの施設についてもいろいろ見てみたいと思う」
実際には、もう僕たちと同じ境遇にある人はいないかもしれない。
いるかも分からない人を探し続けるというのは、危うい。
制限時間だってあるかもしれないのに。
そのためには、僕は積極的に自分の足でいろいろ探ってみたかった。
とりあえず考えるのもいいけれど休むことも大事だ。
今は脳内で情報を整理させるためにも休んでおくとしよう。
「じゃ、おやすみ……」
布団を深くかぶって横になる。
「え?寝るの?」
「ん?」
「食事とか風呂とかは?」
「え?あぁ……」
なんか、すごい忘れてた。
………………
…………
……
カポーン。
と桶の置く音が地面に響き渡るような。
なかなかに広い銭湯のような場所に来ていた。
「いや、こんなでかい風呂があったとはね」
「全くだ。作中にはない描写も完備されてるんだな」
適当に生徒がチラチラといて、皆自由に喋ったり黙々と体を洗ったり、目をつぶって何か感慨にふけっていたり、思い思いに時間を過ごしていた。
当然、全員男。
「欲を言うならよー、混浴が良かったなぁ〜」
「ははは……」
「あるいは、覗きに行くか……?」
「やめとけよ」
適当に会話をしながら周りを注意深く確認する。
何か、何か違和感のようなものを探して。
「でもよ、……ってアマギ?」
「…………」
例えば、何か体に印でもあればわかりやすい。
背中や足元を注意深く観察してみるが、これといって特に何もなさそうだった。
「お、おい……何を見ているんだ……?」
「…………」
なら、視線はどうだろう。
一人、いや一人に限らず何かを注意深く見ている人物は?
僕と同じ状況で同じ思考なら同じことをしてるやつもいると思ったが……。
いないか。
「ヒェ……」
「?」
隣でなぜかフタツキが怯えていた。
収穫は特になし、か。
こちらから何かアクションを起こして気づいてもらうというのも考えたが、今するのは効率が悪いような気がした。
「そろそろ上がろう」
「え、あ、うん……あの、アマギよ」
「なんだ?」
「恋の形は様々あると思うがあまり人の体をジロジロ見るのはマナー違反だと思うぞ……」
「ちがう!!!!」
注目を浴びた。