プロローグ
思えば、ヒロインと会話しているのが僕だったことはなかった。
作中の主人公を通して俺が会話しているのではなく、また、僕を通して主人公が会話しているのでもなく。
僕は主人公たちの会話を見ているだけに過ぎなかった。
いくら主人公の心情が僕と近くても、名前が同じでも、それは僕じゃない。
そんな当たり前のことを考え始めてしまうほどに今の僕はパニックな状況というわけで。
つまり何が言いたいのかというと、僕は今実際にゲームのヒロインと出会って、会話をしなくてはいけない状況に陥っていた。
予想だにしない現実を目の当たりにすると人はこうも思考がそれていくのか、なんて客観的に自分を見つめつつも、会話を紡ぐための話題探しも脳の端も端で行われていて、まったく脳のその部分にしても不憫なものだが、とにかく僕は思考を巡らせていた。
「え〜っと、アマギ海良、であってるよね? なぜだかあんまり話したことなかったけど……」
「……うん、あってる。そういう君は星影ユウキ」
星影ユウキ。髪型から仕草までボーイッシュな少女。
男友達も多く、学級委員長まで務めるみんなの人気者。
実は恋に憧れる乙女な一面もあったりするのだが……。
僕が知っていていい情報と現状知っていてはおかしい情報の取捨選択までしていかなければならない。
なまじ情報を知っているだけ無駄に思考回路が複雑なことになっていた。
「それで、一体どうしてこんな時間に?もしかして寝坊でもした?」
「……へへへ」
「なんかキモい!?」
結局乾いた笑いしか出てこなかった。
一体どうしてこんなことになったんだっけ……。
読んでくださりありがとうございます。デカ百足です。
キネティックノベル含むノベルゲーム、恋愛ゲームが好きなので初めて物語を書き応募してみることにしました。
生暖かく見守っていただけると幸いです。
(なんどか文章に訂正を加えると思います)