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「サラちゃん、次の舞台が決まったよ」


一緒に朝ご飯を食べているジェイダさんが、さらりと言った。


「え?舞台って?」

「サラちゃんが歌う舞台よ」


私、何かの舞台で歌うんだ~!

今初めて聞いたよ!


「いつですか?どこの何?」


え?の顔で止まっている私の代わりに、ミアが聞いている。


「来月の建国祭ね、一番大きい広場で。一番大きい広場、中央広場、わかる?あそこ毎年大きな舞台が出来るの。色んな興行が催されるのよ」


へぇ~。

広場は分かるけど、建国祭は初めてだ。何するんだろ?


「建国祭って何するんですか?私たちこの春に王都に出てきたんで全然わからないです」

「あぁ、建国祭はね…」


と教えてもらったものは読んで字のごとく、建国を祝うお祭りだった。


そういえば日本でも建国記念日なんて祝日があったなぁ。

学校がお休みになるってくらいしか意識してなかったけど。

なんて思い出していると


「で、その舞台でまたサラが歌うんですか?その舞台って誰でも立てるものなんですか?()()()ただの学生なのに」

「あぁ、ちょっとした伝手があってね♪本来なら私たちのような成人前の子供が立てる場ではないんだけど、来年度就職する宮廷の魔法省に、有益な実験をするといって了承されたのよ♪」


えっ!すごい!すでに宮廷の内定が出てるんだ!

さすがここ何十年で一番優秀な代といわれてるだけあるな!


「もう内定がとれてるなんて先輩方凄いですね!」

「え、そこ?」


親しい先輩を自慢に思って賞賛すると、即座にミアがつっこんだ。


「まぁ、そういう訳で、また曲と演出を考えようね。曲調で測る感情の設定もし直さなくちゃならないし」

「「は~い」」


ミアと二人で返事した。

おやミアさん、一緒に舞台に立つ気満々ですね!




結果からいっちゃうと、建国祭の舞台も大盛り上がりの大成功だった。

実験も思うようなデータがとれたようで、先輩たちは喜んでいたし。


この後も、先輩方が卒業するまで毎月のように何かしらの舞台を用意され、客数はまちまちだったけど、せっせと、まぁ実験を繰り返したよ。


そうして出た結論は(まだ途中だけど、学生としての先輩たちの結論)私はアンゲルスウォクスの持ち主だろうという事。


ただし文献にあった、命じた事を従わせる力があるまでの強力なものはなく、それでも歌声を聞いた人の心を掴むほどの力はあるだろうというものだった。


何だろな…。

それで何ができるっていうんだろ?

ミアのように植物の収穫量が増えるとか味がよくなるとか、わかりやすく益になる力がよかったよ。


残念に思いつつ、歌って人を元気にできるなら嬉しいけど、と思い直す。

そういえばあの頃、ウィルとウィルのママさんはそう言ってくれたなぁ…。

と思い出して、少し、いやだいぶ、方向性が定まった。


前世で多感な思春期の頃、歌にはずいぶん元気をもらった。

失恋した時は、寄り添ってくれるような歌をヘビロテで聞いた。

歌って、楽しい時に歌ったり聞いたりするばかりじゃないよね。

どっちかっていうと、辛い時に救われる歌の方が心に入ってくるし、残る。


うん。もった魔法属性が声なら、この声でできる事を探していこう。

わからない事は、きっとジェイダさんたちが一緒に考えてくれる。

私は私にできる事をがんばろう!


そんな訳で、ジェイダさんたちとは生涯お付き合いする事になったよ。




建国祭が終わって数日たった、ある日のお昼時の事。

食堂に向かう私たちの前に、とても綺麗な女の子が立ちふさがった。


「サラってどっち?」


いきなり知らない女の子からそう言われてびっくりしたよ!

何でか攻撃的な目で見られてるし。


え? 私何かしちゃったんだろか? 覚えがないんだけど…?


いつもなら私をかばう様に出るリアンとウィルが動かないので、危険はないと思われる。

たぶん同じ一年生の女の子だしね。


「私だけど。あなたは?」

「エレオノーラよ。おまえ、ウィルとリアンを自分のものだと思っているでしょう!二人はおまえのものではないから!」


ん? リアンとウィルを見る。

二人はフルフルと頭を振った。


「エレオノーラ様、私たちはそんなんじゃありませんよ」

「エレオノーラ様、サラは姉です。私たちは命令されている訳ではありません」


エレオノーラ様! 騎士科にいるっていうお姫様だ!

うわぁ~!リアルお姫様!! お姫様初めて見た!!

綺麗~!可愛い!顔ちっちゃ!! 


エレオノーラ様は獣人だった。

白い髪はツヤツヤに輝いている!瞳は金色で、何かもう神々しいよぉ!

スラリとしたしなやかな身体はママと通じるものがある。十歳なのにしっかりアスリート体系だ。


大興奮しながらうっとり(脳内が忙しいよ!)見ていると、エレオノーラ様は苛立って言った。


「ウィルとリアンに言わせてないで、何とか言ったらどうなの!」

「お姫様って顔だけじゃなくて怒ってても声まで可愛いのねぇ。はぁぁ、可愛い!

その髪!どんなお手入れしてるんだろう。ツヤッツヤだし!金色の瞳なんて初めて見たよ!綺麗だわぁ…」

「サラったら!」


ミアが盛大に噴出した。

おっと、心の声が漏れてましたかね?

リアンとウィルも噴き出した。「サラらしい!」って。


エレオノーラ様は呆気にとられて…、それから睨んだまま徐々に顔を赤らめていった。


「申し訳ありません、うっかり心の声が出てましたね! …えぇっと。何でしたっけ…? エレオノーラ様があんまりお綺麗なので見惚れちゃってて失礼しました」

「……もういい!」


エレオノーラ様は顔を赤くしたまま行ってしまった。

あぁ…。もっと見ていたかった。残念!


「リアンやウィルとはまた違った綺麗さだったね~。やっぱ男の子と女の子は違うのかしら」

「なに言ってんの、サラったら!あの人に言いがかりをつけられてたのに!」


噴き出していた筈のミアに怒られた。


「え?言いがかりだったの?エレオノーラ様の勘違いじゃなくて? だってリアンもウィルも別に私の物じゃないじゃない?」

「そうだけど! そうだけどさ、 …もう!」


私は二人を見る。


「ちょっとぉ、私は二人の事を所有物だなんて思ってないからね?何かそんな風に感じさせる事しちゃった?」

「いや、そんなの思った事もないよ」

「うん、安心して。エレオノーラ様、何か勘違いしたんだと思う」

「ならいいけど。二人は、あ、ミアもね!大事な姉弟きょうだいだからね!」

「「うん!」」




その後も度々エレオノーラ様は私の前に立ちふさがり(はぁぁ可愛い!!と、うっとり見惚れる私)

文句を言って(それもまた可愛いんだけど!)

ニコニコしている私に、ふん!と踵を返して去っていくを繰り返した。


高い子供の声で何を言われても気にする訳ないじゃん。女子中高生の嫌味に比べたら全然なんて事はないよ。エグイ女の戦いの経験はないけど、軽いの?なら少しはあるんだから。


だいたいお姫様なんて最高位にいる子に嫌味や悪口を言うヤツなんていない。

いないから、エレオノーラ様は嫌味や悪い言葉遣いなんてできないんだよね。子供のかわいい我儘くらいなもんよ。


だけどエレオノーラ様、私に何か言うのは見当違いですよ?


言われている内容や態度を見て思うに、エレオノーラ様はリアンとウィルを好きみたいで、仲良しの一番になりたいみたいだ。

よくある、子供の独占欲みたいなもんだよね。

話の中で私の名前が出ていて焼きもちを焼いたって感じかな。

ミアの名前も出てたと思うのに、何故か私だけ敵視されるという謎。


でもまぁ、文句でも何でも会いに来てくれる(違)なら、リアルお姫様が見られるという私にとってはご褒美だよ!

どうかずっと勘違いしててください♪




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