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9 体は龍の素材でできていた

「体は龍の素材でできていたって──」


 何処かの魔術師が固有結界を操るために唱える呪文の一節じゃあるまいし。


「何じゃそりゃぁ──────────っ!?」


 神様が目の前にいるってだけでも常識外れなのに新しい体はエンシェントドラゴンの中でも最上位の神龍だとか驚き桃の木山椒の木ってなものである。

 御冗談でしょう?

 内心はそんな気持ちであふれかえっている。


「あらら、勇斗くんが壊れちゃいましたよ、お爺ちゃん」


 星界神様が他人事のように言っている。


「誰がお爺ちゃんじゃっ」


 ツッコミを入れつつジト目で星界神様を睨む創天神様。

 俺の方は意図的にスルーしているようだ。

 まともに相手をされないことで頭に血が上るということはなく程なくして俺は混乱から脱することができた。

 転生する前ならゼエハアと肩で息をしていたであろうくらいには興奮していたんだけど。

 そういうこともなくスペックの高さの片鱗をこんなことで実感することになった。


「勘弁してくださいよぉ」


 とにかく抗議した。

 既に体と魂が一体化しているから結果は覆らないのは承知の上でだ。


「フォッフォッフォ、驚かせてしまったようじゃのう」


 いや、そういうことじゃなくてですね。


「こんなのは序の口じゃよ」


「は?」


 何を言っているのだろうと思ったのだが。


「ついでにVRゲームのアバターデータもインストールしておいたのじゃ」


「何ですとぉっ!?」


 もはや訳が分からない。

 俺は一体、何者になってしまったのだろうか。

 龍の素材でできた体に魂が融合したってだけでも驚きなのにゲームのデータが入っているらしいとくれば混乱するのも道理というもの。


「こういうのを、お主らはチートと言うのじゃろう?」


 どうやらおわびの転生にオマケをしてくれたようだ。


「そういうことですか」


 とにかく、てんこ盛りである。

 龍の素材まるごとを使って体だけでなく拠点やそれに付随する装備。

 ゲームで蓄積した各種技術と情報。

 些か過剰なサービスと言わざるを得ないのだけれど、ここまでしてもらって文句を付けると罰が当たりそうである。

 相手が神様だけにね。


 貰えるものは貰っておくのが無難で利口というもの。

 幸いにしてストラトスフィアは宇宙にあるので誰かに見とがめられることはないはずだ。

 問題があるとすれば体の方だな。

 チート過ぎて制御しきれるのかどうか怪しい気がする。


 ん? あれ? 今まで特にどうということはなかったよな。

 目覚めてから起きる時に手をついただけでベッドを叩き壊すようなことはなかったし。

 ブリッジで端末を操作した時も違和感なく操作できた。

 格納庫でもあれこれ触ったけど何かを破壊した覚えはない。


「ひょっとして……」


 俺は無意識のうちに呟いていた。


「何じゃな?」


 創天神様に問われて自分の独り言に気づいたが、声をかけられたのは逆に好都合だったかもしれない。

 もののついでに俺の方から質問してみるのはありだろう。


「聞いていいですか?」


「もちろんじゃとも。そのためにワシらはここにおるようなものじゃからな」


 アフターフォローって訳だ。

 無闇に放り出された訳じゃなかったことに安堵し心の内で感謝した。


「アバターデータのインストールがされていなかったら適切な力加減ができなかったんじゃないですか?」


「おおっ、なかなか鋭いことに気付くのう」


 愉快だと言わんばかりに創天神様がフォフォフォと笑う。


「残念じゃがハズレじゃ」


 鋭いと言われたから正解だと思っていたんだけどガクッときた。


「この宇宙船はそう簡単に壊れはせぬよ。お主の体を創造する時に用いた素材の余りでじゃからの」


「なっ……」


 驚きのあまり言葉がまともに出てこない。

 体どころかストラトスフィアまでもが龍の素材でできていたとは。


「仮に壊れても自動修復するように作っておいたから安心せい」


「自動修復ぅ!? 俺、CWOでストラトスフィアにそんな機能は付けてなかったっすよ!?」


「フォッフォッフォ、これは外観を似せただけの代物じゃ。機械ではなく魔道具として作ってあるからのう」


「ふぁっ!?」


 思わず素っ頓狂な声が出てしまっていた。

 機械だと思い込んでいたものが別物だと言われれば、そりゃあね。

 てことはアンドロイドもゴーレムとかの類いですかね?

 それはそれで凄いと思うんだけど。


「この船は人工的に重力を制御しておるじゃろう」


「ええ、そうですけど」


 船内では地球上と同じ重力を発生させ船外へは影響しないように遮断するというのは、CWOでは割とポピュラーな技術である。


「そのあたりが同じになるよう重力魔法を使うておる」


 他にもあれやこれやと説明を受けたが至れり尽くせりだと思う他ないようなことばかりだ。


「本当にここまでしてもらって良いのでしょうか?」


 聞かずにはいられなかったさ。


「謙虚な男じゃのう」


 とてもそうは思えないんですがね。


「遠慮せんでええわい。こういうことは滅多なことではないからのう」


「はあ……」


 しょっちゅうあるようでは世界はチート持ちの転生者だらけで大混乱ではないだろうか。


「ワシらもアフターサービスを全うするついでに堪能させてもらうつもりじゃて」


「は?」


 一瞬、創天神様の言った言葉の意味が分からずに間の抜けた声を出してしまう。

 アフターサービスというのは分かるが堪能って?


「えっと、どういうことでしょう?」


「んー? 分からんかのう」


「はい」


「お爺ちゃん、私たちの予定をちゃんと言わないとダメじゃないですかぁ」


 星界神様が横からツッコミを入れてきた。


「誰がお爺ちゃんじゃっ」


「あのぉ~」


「おお、スマンスマン。具体的な話をしておらなんだのう」


「はあ、具体的な話ですか?」


「アフターサービスの期間についてじゃ」


 ああ、そういうことか。

 それは確かに聞いていなかった。


「期間は、お主が死ぬまでじゃ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 驚き方が現実的なものと乖離しているのではと思う。 鬱陶しい。
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