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8 説明を求む

 席に着いている2人は正体不明というか周りにいるメイドが邪魔になって誰だかわからなかっただけだ。

 近づけば確認することも難しくはない。

 向こうも俺が近づいてきたことに気づいて、こちらを見てきた。


「はぁろぉ~う」


 にこやかに笑みを浮かべて手を振ってくるピンク髪の美人さん。


「やあやあ、ようやく目覚めたようじゃのう」


 そして微笑ましく孫を見るような目を向けてくる白髪の爺さん。

 この世界に転生してからは初顔合わせになるな。

 言わずと知れた星界神ステラリー様と創天神イスカリオン様である。


「どうも、こんにちは」


 平静を装いながらどうにか挨拶したが内心では大騒ぎである。


「どうしてここに!?」


 そう叫ばなかった自分を褒めてやりたいくらいだ。

 神様が堂々と人前に顕現してくつろいでいるなんて普通じゃ考えられないもんな。


「浮かぬ顔をしておるのう」


 フォッフォッフォと笑いながら創天神様に指摘されてしまった。


「まさか、いらっしゃるとは思いませんでしたから」


 バレているなら隠し事をしてもしょうがないし素直に白状しましたよ。


「アフターサービスは万全でないとのう」


 創天神様の仰りように、すぐには言葉が出てこなかった。

 万全どころか過剰サービスじゃないだろうかとさえ思ってしまったからだ。

 1人の人間相手に上位神が2人もかかりっきりになるとか普通じゃないと思わないか?


 え? 神様は柱で数えるものだって?

 そうかもしれないけど何処か人間くさいから、つい人で数えてしまったんだよ。


「これまた微妙な顔をしておるぞ」


 なんて指摘してくる割に創天神様は楽しそうだ。


「驚いて何も言えなくなってるんです」


 思わず嘆息が漏れてしまったさ。

 ちなみに「驚いて」の部分は「呆れて」と読み替えると、より正確に俺の心情を表していると思う。

 空気を悪くしないよう言い換えたのは秘密だ。


「あー、仕事をほっぽり出して油を売ってるとか思ってるんでしょー」


 星界神様がクスクスと楽しげに笑いながら指摘してきた。

 顔に出てしまっているんじゃ言い換える意味は薄いけどな。


「ええ、まあ」


「フォッフォッフォ、それならば大丈夫じゃ」


「そうそう、心配無用よぉ」


 2人して俺の懸念を否定するが、何処が大丈夫で心配無用だというのか。

 テーブル席について優雅にお茶を楽しんでいるようにしか見えないんですがね?


「意味が分かりません」


「この姿はのう、言うなれば分身のようなものなのじゃ」


「並列で処理してる案件のひとつで使っていると考えるといいわね」


「君たち流に言うなればアバター? とかいうものに近いじゃろうな」


「つまり、本体は別の場所にあって仕事はそちらで行っていると?」


 何処のマルチタスクコンピューターかとツッコミを入れたくなったさ。

 神様をコンピューター呼ばわりするのは不敬が過ぎると思ったから言わなかったけど。


「理解が早くて助かるのう」


「創天神様、アバターに例えたのが良かったんだと思いますよ」


「ほほう。若者の言葉も使ってみるものじゃな」


 なんというか気の若い神様である。

 いや、それよりも神様が俺1人のためにここまでしてくれるなんて、どれだけヤバいことをやらかしたのかってことだな。


「で、君の新しい体についてなんじゃが」


 俺が少し考え込んでいる間に創天神様が話を切り替えてきた。

 そんな話題を持ち出されると不穏な気配を感じずにはいられない。


「最初に言っておかないといけないことがあるのよねえ」


 軽めのノリがデフォっぽい星界神様もちょっと重めの空気を醸し出しているせいか、ますます嫌な予感がするんですがね。

 移動に不自由を感じることはなかったし体は死ぬ直前の半身麻痺が思い出せないくらい快調なんだけど。


「使った素材が良すぎてのう。そのせいで不具合があるのじゃよ」


「え?」


 良すぎるから不具合って意味がわからん。


「どうにか種族を人間にすることはできたんだけどねえ」


 星界神様から不穏な発言があった。


「ええっ!?」


 どうにかしないと人外になっていたとか聞いていないんですが?


「お陰で年齢の調整を失敗するところだったわ」


「うむ、さすがに人間で数百歳になるのはマズいじゃろう」


「はあーっ!?」


 目玉ドコーなお話ばかりが続くんですが


「大丈夫よぉ。年はちゃんと16歳で安定させたからぁ」


 ケラケラと星界神様が笑うが俺は笑えずジト目で見るばかりである。

 当然だろう。物語のエルフじゃあるまいし下手をすれば世界最高齢記録をぶっちぎりでマークしかねなかったのだ。


 しかも星界神様には、うっかりミスで俺の体を消し炭にしてしまったという前科がある。

 でなければ今も俺は不自由な体と折り合いを付けながら日本で暮らしていた。

 まあ、俺の冷たい視線など星界神様はどこ吹く風とばかりに気にもとめていないのだが。


「それよりも不具合の方が問題で、ちょっと人間離れしてるのよねえ」


「主語が抜けてるんですけど」


「端的に言うと能力が全般的に、よ」


「具体的には?」


「戦闘力たったの5か、ごっこができるわよ」


「………………」


 ゴミめ、とは言わないよ。

 まったく何処でそういうネタを仕入れてくるんだか。


「そんなのリアルでやったら化け物扱いされて迫害されるのがオチですよ」


「あ、やっぱり分かっちゃう?」


 テヘペロまでされてしまいましたよ。

 もうヤダ、この神様。


「一体、どんな素材を使ったらこんなことになるんですかっ」


「ドラゴンじゃよ」


 俺の疑問に答えてくれたのは創天神様だった。


「漢字で書けば画数の多い方じゃな」


 わざわざ魔法で指先を光らせながら空中に龍の字を書き綴ってくれた。

 さすがは魔法、何もない場所に光る龍の字が浮かんでいる。


「はあ」


 そこまでするからには相応の理由があるとおもうのだが俺には皆目見当がつかなかった。


「ピンと来んようじゃな」


 創天神様にもあっさり見抜かれてしまいましたよ?


「エンシェントドラゴンと言った方がいいんじゃないですかぁ?」


「なっ!?」


 星界神様のフォローに俺は凍り付くしかなかった。

 上位種のドラゴンとか、とんでもない素材を使ってくれたものだ。


「その中でも最上位の神龍じゃな」


「ふぁっ!?」


 シャレにならん。

 更にとんでもないことを付け加えてくれましたよ?


読んでくれてありがとう。

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