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5 異世界はハードorイージー?

「本当に申し訳ありませんでした」


 ようやく戻ってきた星界神様がショボーンとした様子で謝罪している。

 今度は土下座ではないものの見た目は酷いことになっていたので勇斗は唖然とさせられていた。

 ピンク色の髪の毛はチリチリのアフロっぽい状態になっていたし全体的に見ても煤けてボロボロになっていた。


「天罰と同じ雷をまとったアッパーカットでぶっ飛ばしたからの」


 俺の心を読んだかのように創天神様が解説してくれた。

 表情に出てしまっていたのだろう。


 それにしても物騒な技である。

 飛ばされていった時はそんな風に見えなかったのだが道理で黒焦げになる訳だ。

 いや、普通はそれだけでは済まないか。

 聞くところによるとストーカー元上司は天罰で魂を焼き尽くされたそうだし。

 見た目がボロっとした感じになるだけで済んだのは彼女が神様でなければ説明がつかない。


「あー、済んだことをとやかく言うつもりはありませんので」


 それで元通りになるなら、いくらでも言うけどな。

 セミリタイア生活もそんなに悪いものじゃなかったし。

 そんなことより、これからどうなるかを説明してもらった方が建設的というもの。


「それで異世界転生させてもらえるそうですが?」


「ほえ?」


 何故か星界神様はキョトンとした顔をした。

 まるで、そんな話は初めて聞いたという感じに見える。

 その一瞬で黒焦げ状態から元の美人さんに戻ってしまった方が俺には驚きであったが。

 さすがは上級神だね。


「ああ、此奴にはとにかく謝罪せよとしか言っておらんのじゃ」


 創天神様が納得の理由を説明してくれた。

 要するに異世界転生は創天神様の一存で決まった訳だ。


「でないと謝罪も碌にせず、お主を異世界に放り込みかねんからの」


 さすがはおっちょこちょいな女神様である。

 見た目は美人さんなのに残念なことこの上ない。


「酷いですよぉ。いくら私でもそこまで恥知らずじゃありませーん」


 唇を尖らせて星界神様が抗議するが、今ひとつ信用できない。

 土下座謝罪の時もどうして謝罪しているのかという説明がなかったもんな。

 猪突猛進というか何というか、とにかく残念女神様と言わざるを得ない。


「やかましい! お前はしばらく黙っておれ」


 創天神様が抗議をシャットアウトすると星界神様は再びショボーンとしてしまった。

 同情を禁じ得ないが特に何も言わないことにする。

 口出しすると話が先に進まなくなりそうだったからね。

 それで創天神様の話の続きを聞いたんだが……


「はあ」


 聞き終わった後は思わず生返事が漏れていた。

 要約するとチートでイージーモードが約束されているらしい。

 単に生まれ変わらせるだけでは詫びにはならんからというのが理由だ。


「何じゃ、不服かの?」


「不服と言いますか、そこまでしてもらうのはどうかと思うのですが」


「ふむ、簡単すぎてもつまらんという訳じゃな」


 ツッコミを入れると余計に話がややこしくなりそうなので黙ったが、チートがないと平穏が守れないようなハードな世界はできれば勘弁してほしい。

 既に手遅れな気もするけどね。


「ちょうど良い。ちょいとハードじゃが歯応えのありそうな世界があるんじゃ」


 やはり手遅れだったようだ。

 俺としては平穏な生活が送れれば充分だったのだが。


「お主がハマっておったゲームの設定に限りなく近い世界じゃ」


 何ですと?


「どうじゃ? 刺激的な毎日が送れそうではないか」


 そういうことは先に言ってくださいよ。

 ゲーマーの血が騒ぐじゃないですか。

 体が不自由になってからゲーム三昧の毎日を送ってきたのは伊達ではない。

 とはいえゲームと現実との差は明確にあるのだから過度に期待しすぎるのは禁物だろう。


「剣と魔法の世界なのはもちろん、ダンジョンに魔物がおる」


 ファンタジー系なら基本中の基本だね。


「経験値をためてレベルアップするところなどはゲームそのものとは言えまいか?」


「そこまでですか」


 思ったよりゲーム的な世界らしい。


「フフン、当然じゃ」


 創天神様も俺の驚きっぷりにドヤ顔である。

 これって詫びなんじゃなかったっけ?

 まるでイタズラを成功させた子供のような喜びようだ。

 まあ、サービスしてくれるみたいだし、いいんだけどさ。


「とはいえ良いことばかりではないのじゃ」


 創天神様がそこで言葉を句切って表情を引き締める。

 はて? なんだろう。

 俺も釣られるように神妙な面持ちとなった。


「お主のおった世界よりこちらの世界の方が混沌との結びつきが強いのじゃよ」


「混沌、ですか?」


「世界と対をなす存在じゃ」


「はあ」


 いまいち、よく分からないせいで生返事をしてしまった。

 いきなりスケールがでかくなりすぎである。


「世界が光とすれば混沌は闇じゃ」


「闇ですか」


 名前にしても例えにしても良いイメージが持てない代物だ。


「その例えからすると世界とは表裏一体で消去不能とかなんでしょうね」


「ホッホッホ。察しが良いのう」


「ありがちなパターンを言ってみただけで何が良くないのか全然わかりませんよ」


「混沌はのう、人の負の感情を取り込んで瘴気を世界に吐き出すんじゃよ」


 きな臭い話になってきた気がする。


「瘴気が吐き出されると、どうなるんですか?」


「様々じゃな」


 そう言って創天神様がいろいろな事例を教えてくれた。

 瘴気を人間が浴び続ければ狂気に囚われてしまい独裁者になったり凶悪犯罪者になったりするそうだ。

 あるいは神隠しと呼ばれる超常現象を引き起こしたり魔物を生み出したり。

 こちらの世界でも各地に伝わる未解明な伝説などの多くが該当するとか。


 ちなみに日本では魔物のことを妖怪と呼んでいたという。

 あれって実在していたのか……

 いずれにせよ、それらが現代に残っていないのはおかしいのではと指摘もしたが……


「混沌とのつながりを弱める試みを実行した結果じゃな」


 魔法を封じ科学が発展するように仕向けたのだそうだ。

 結果として魔物は生じなくなり超常現象も減少したという。

 代わりに公害や過去には無かった病気が広まったそうだが。


 結局、地道に瘴気を浄化するのが一番のようだ。

 魔物なんかは基本的に倒せばいいだけらしいので一般人でもどうにかできる可能性があるみたい。

 命がけではあるけどな。

 そういう点がハードモードなんだろう。

 ゲーム的な世界と考えれば、そう悲観したものでもないのかもしれないけれど。


「チートがないと平和ボケした元日本人な俺なんかは即死しそうですね」


「なぁに、心配無用じゃ。ワシらの詫びなんじゃし責任を持って償いをさせてもらおう」


「はあ」


 だったらイージーモードの世界でも良くはないだろうかと俺なんかは思うのだが。


「生憎と新しい体を作るための素材がその世界との結びつきが強くてのう」


 よく分からないが、最初からその世界に送り込むつもりだったんじゃないかという気がしてきた。

 まあ、記憶を残したまま人生をリトライできるんだから贅沢は言うまい。

 せいぜい自由に生きてみるさ。


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