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12 新しい体をチェックしてみよう

 神様のおわびが強烈すぎる剣について。

 いや、剣じゃなくて件なんだよ。

 俺もかなり動揺しているな。

 1人でボケて1人でツッコミを入れるとか、むなしいにも程があるというのに。


 とにかく、ちょっと確認しただけでも常識外れなのがよく分かった。

 俺がレベル2になるだけで普通の人間からはボスクラス認定を受けそうだし。

 これはもうチートと言って済ませられるようなレベルの話じゃないぞ。

 レベルの話だけに……


 いや、まだまだ動揺しているな。

 つまらない冗談を言っている場合じゃない。

 体は龍の素材でできていた、という事実は劇薬を飲まされたに等しい話だ。


 だというのに創天神様ときたら……


「では、納得したところで次じゃ」


 微塵もやり過ぎとは思っていないようだ。

 おそらくチート過ぎると訴えたところで否定されるかスルーされるかするだろう。

 そんなことを考えていたら星界神様に苦笑いされてしまった。

 本音が顔に出てしまっていたみたいだな。


 ただ、俺が苦々しく思っていることに対する何かしらのフォローなどはなかった。

 あの苦笑は「諦めろ」という意味合いのものだったに違いない。

 俺の心の平穏はいずこにあらんや。

 そう主張したいが、状況は待ってくれない。


「ほれほれ、召喚するぞ」


 創天神様がパチンと指を弾き鳴らすと少し離れた床面に光の魔方陣が浮かび上がった。


「は? え?」


 情けないことに出てくる言葉はこの程度止まり。

 動揺しているのは誰の目にも明らかであった。

 あの魔方陣が何かを召喚するためのものだというのは直感で分かったというのに……

 まともに反応できないのでは意味がない。

 我ながらメンタルが豆腐過ぎるだろうと内心でセルフツッコミを入れるのが精一杯。

 この状態で何かしろと言われても上手くできないのが目に見えている。


 内心で愚痴っている間にそれは魔方陣の中から迫り上がるように姿を現した。

 召喚されたのは半透明な濃緑色のゴーレムで、サイズ的には小学生くらいの子供だな。

 造形は色々と略されており特に顔はのっぺらぼうだった。

 老人を思わせるほどの猫背でかがみ気味の姿勢は子供らしさとは縁遠い。


「ゴブリン?」


 思わずそう口に出してしまっていたのはFFOに出てくるゴブリンを連想してしまったからである。


「左様、ゴブリンのデータをインストールしたゴーレムじゃ」


「あれと戦えと?」


「うむ。まずはあれを仕留めて自分の能力を確認するとええじゃろう」


 俺、レベル1なんですが?

 とはいえ能力を確認するために白い世界に来たのも事実なのだから何処まで通用するかは確認しておくべきだろう。

 この体にはゲームのデータもインストールされているそうだし。

 武器はなくても格闘術を使えばゴブリン相手なら問題なく通用するはずだ。


 念のためにヒット&アウェイでやってみよう。

 動きはゴブリンでも相手はゴーレムだから痛みなど感じるはずもない。

 どういう素材でできているかも分からないから軽く殴ったくらいじゃ壊れないかもしれないし。


 それで反撃されて怪我なんてするのは勘弁願いたいところである。

 故に油断は禁物。

 ならば一気に踏み込んでぶっ飛ばすまで。

 方針が決まれば迷うことなど何もない。

 俺は一瞬で間合いを詰め──



 ドンッ!



 床面に力強く踏み込むと同時に肘をゴーレムに叩き込む。

 生前の俺の身長なら相手の胸元に入っていた一撃だが、今の俺はゲームで使っていたアバターと同じ身長なので173センチある。

 俺の肘はゴーレムののっぺりした顔面に吸い込まれていった。



 ビキッ!



 インパクトの瞬間に堅いものが割れる音がしたかと思うとゴーレムの体が浮き……

 そして仰け反るように飛んで行った。

 俺も踏み込みの反動を利用してバックステップで元の位置へと戻る。


 が、ゴーレムの方は止まらない。

 背中から落ちた後はゴロゴロと転がっていった。


「ほほう、面白いように転がっていくのう」


「ボウリングのピンでも立てておけば良かったですねえ」


 俺にいきなり戦わせておいて創天神様も星界神様も暖気なものだ。

 まあ、これから異世界で生きていくにあたって俺に覚悟を促したつもりなのかもしれないが。


 とにかくゴーレムが、ようやく止まった時には随分と離れた所にまで転がってしまっていた。

 そしてピクリとも動かない。

 目をこらして見てみるとカメラでズームしているかのようにゴーレムの顔面が大きく見えるようになった。


「………………」


 スキルなしで、こんな真似ができるとは龍の素材でできた体は伊達ではないということか。

 それはともかく、ゴーレムの状態である。

 顔面は陥没してヒビが入っているのが見て取れた。


「見事なまでの一撃必殺じゃの」


 創天神様が淡々と呟いた。


「そうですねえ」


 うんうんと頷きながら星界神様が追随する。


「全身の隅々にまでダメージが浸透してますよぉ」


 どうやらゴーレムのダメージは頭部だけではないらしい。


「ゴーレムにしておいて正解でしたね」


「そうじゃな、いきなりスプラッタシーンになってしまうところじゃったわい」


「そんな大袈裟な」


 俺は苦笑するしかなかった。

 顔面陥没は確かにショッキングではあるが、スプラッタと言うほどではないと思うんですがね。


「いやいやいや」


 星界神様が自身の眼前でそれはないと言わんばかりに手を振っていた。


「あれが生身の魔物だったら肘が当たった直後に全身が吹っ飛んでいたわよ」


「え?」


「左様。圧力が一気にかかって破裂しておったじゃろうな」


「破裂って……」


 想定外すぎて、ただただ困惑するばかりだ。

 それを見た星界神様が何を勘違いしたのか──


「きたねえ花火だ、の方が分かりやすいかしら?」


 なんてことを聞いてきた。


「そういうことじゃなくてですね」


「じゃなくて、どういうこと?」


「破裂と言われても今ひとつ実感が湧かないんですよ」


「そうなの?」


「あのゴーレムは破裂なり粉々になるなりしなかったじゃないですか」


「ああ、そういうことね」


 星界神様がそう言って苦笑した。

 いやいや、どういうことやねん?


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[一言] 「俺がレベル2になるだけで普通の人間からはボスクラス認定を受けそうな気がする。」 それだけ強力なステータスと言うことは、周りがざこばかりと言うことになり、少々経験値を得てもレベルは上がらな…
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