118 見極めろ
よく目をこらしてウナギ魚人を見てみる。
雷属性で攻撃してくるから耐性もあると思っていたが、そうではないようなので見極める必要がある。
龍の素材でできた目は誤魔化せないということを証明してやろう。
触手を回避しながらなので忙しないけどね。
ただ、反撃が通ったことで向こうも慎重になり攻撃してくる勢いが弱まっている。
かわりにフェイントや死角をつくような攻撃も織り交ぜてきた。
おかげで観察がおろそかになる。
「ええい、面倒なっ」
毒づきながら新たな武器を錬成する。
今度は三節棍だ。
深く間合いに入り込んできても対応しやすい利点がある。
ハルバードだとこういうのは、やりづらいもんな。
その分リーチや攻撃力の面で劣ってしまう訳だけど。
ただ、今回は攻撃するためではなく触手を弾くために用いるので問題にはならない。
棍の部分は絶縁素材にしておいた。
さっそくウナギ魚人の触手を弾いていく。
「ギュワァンッ!」
奴が悲鳴を上げるように吠えた。
痛みを感じたというよりは意外な防御方法だったことに意表を突かれ驚いた感じか。
「ギュオオオォォォォォォォォッ!」
そして苛立たしげに吠える。
入ったと思った攻撃が回転する棒に弾かれたのがお気に召さないらしい。
その分、怒りにまかせ手数が増えるので忙しくなる。
こういう攻撃はパターン化しやすいので回避も防御もやりやすいけどね。
「ギュワアアアァァァァァンッ!」
向こうにとっては面白くないから更に頭に血が上った攻撃が増えるという悪循環に陥ってくれるのでさばきやすい。
観察もはかどるというものだ。
「ふむふむ、なるほど」
放電は体内からではなく体表から少し離れた場所で行われているようだ。
これなら常に帯電していても感電はしない。
逆に電流が通れば感電するということか。
もしかして耐性がない?
いや、触手による攻撃が当たれば自身にも電流が通るはず。
考え込み始めた俺の様子を見て隙だと思ったのかウナギ魚人が触手の先端を数本俺の方へ向けた。
「何だ?」
「ギュオォンッ!」
その咆哮は食らえと吠えたように聞こえるほど気合いを入れたものだった。
触手の先端から雷撃がほとばしる。
「っとぉ」
三節棍をプロペラのように振り回して弾きながら回避した。
普通はそんなことで雷撃が弾かれるものではない。
そこは三節棍に魔力をまとわせていたからできたことだ。
良い子は真似をしてはいけません。
「どうせなら実験してみますかねっと」
再び雷撃を放ってきたので今度は魔法で反射させる。
「ギュアッ!」
またしても悲鳴。
いや、今度こそ仰け反って触手を引っ込めた。
どうやらウナギ魚人の雷属性に対する耐性はないようだ。
デンキウナギのように瞬間的に放電して我慢するようなものよりはマシという程度か。
「ギュアッギュアッギュワアッ!」
怒り狂ったように触手を打ち付けてくるウナギ魚人。
三節棍で弾きながら回避していくが……
「これは痛がらないんだよなぁ」
違いが不明で、ちょっとした謎である。
これを解き明かすためにも雷撃を再び放ってほしいところだ。
しかしながら反射攻撃がよほど堪えたようで、ただの一発も射出してこない。
ならば、せめて叩きつけるのが平気な理由だけでも見極めないとな。
触手が叩きつけられる瞬間に目を向ける。
バチン!
三節棍が触手を弾いた。
「そういうことか」
ちゃんと見ていれば、どうこう言うほどのことはなかったのだ。
インパクトの瞬間に放電をカットし接触面がなくなってから再放電していただけ。
相手だけ感電するようにタイミングを見計らっていたとはね。
問題は武器が弾かれる対策には使えそうにない弱点だってことだな。
いや、奴が見えない見切れない攻撃をすればいい。
速さで置き去りにして翻弄するか。
死角をついて欺くか。
手数で圧倒して蹂躙するか。
そんな訳で棒手裏剣を錬成してみた。
投擲武器ならスピードも調整できるし、小さいから見極めるのが難しくなるはずだ。
まずは1本、手首のスナップをきかせて投げてみる。
ヒュゴッ!
思っていたよりも重そうな風切り音になった。
振りかぶって投げた訳でもないのに勢いはアニメや漫画で見そうな剛速球レベルを軽く超えている。
「ギュオォンッ!」
ウナギ魚人の悲鳴。
脇腹に棒手裏剣が突き立っていた。
「あれで貫通しないのか」
それどころか先端が刺さった程度だ。
思った以上に防御力がある。
「なら、超飛翔魔球だ!」
俺は奴の背丈よりもずっと高く飛び上がりオーバーな投球フォームで2本目の棒手裏剣を投げ放った。
爺ちゃん秘蔵の野球アニメからコピーした技だ。
が、命中はしなかった。
「外した!?」
俺の投擲モーションを見て予測されたか。
そして奴はお返しとばかりに刺さっていた棒手裏剣を引っこ抜いて投げてきた。
「っとぉ」
俺はそれをつかみ取ると、その動きに合わせてロール回転する。
「今度は超ローリング魔球で行くぞ!」
その勢いを利用して棒手裏剣を投げ放った。
回転の勢いが投げる瞬間を見極めづらくさせ威力も上げた一撃になるはずだ。
今度こそ太ももに命中。
「ギュオオオォォォォォォンッ!」
悲鳴も一段と鋭くなったように感じた。
その割には刺さり具合が深くなっただけという結果になったが。
「あれで貫通しないのか」
読んでくれてありがとう。




