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110 救出して出し抜きます

「ストーンゴーレムの感覚共有準備OK」


「多重結界の構築はバッチリニャ」


「保護用の廃屋、強化完了しました」


「シャドウゲートの出口切り替えスタンバイ」


 声に出してすべての準備を確認していく。

 ゴーレム以外は湯水のように魔力を注ぎ込んだから慎重になろうというものだ。

 被害者の保護は絶対に成功させるし釣り上げた獲物も逃がさない。


「よしっ!」


 確認が完了したというのにエルフ組は妙に強張った表情で固唾をのんでいる。

 緊張しすぎで苦笑を禁じ得ない。


「なんで見学してたそっちが緊張するんだよ」


「いや、するだろ普通」


 すかさずグーガーにツッコミを入れられた。


「そうだな。ユートたちがここまで大がかりに準備するとか大概だ」


 リグロフも同意しながらツッコミの上乗せをしてくる。


「「「「え~……」」」」


 俺たちとしては大概と言われたことが意外なんだけど、リーアンとリーファンも雰囲気的に向こう側だ。


「スタンピードの時ほど派手にはやってないだろう?」


 何だかなぁと思いつつ反論してみたのだけれど。


「「「「………………………………………」」」」


 長い沈黙にジト目のオマケ付きで返されてしまいましたよ。


「そんなに派手か?」


 思わずケイトに聞いていた。

 ステラ様くらいの大雑把さがあれば、すんなり受け流せたかもだけど。


「そうは思えませんが」


 ケイトは俺と同様に困惑している。


「ニャーは結界をビリビリ震わせるような凄い攻撃をしてくる奴が来てほしいニャ」


 知らんがな。


「縁起でもないこと言うなよ」


 龍かそれに匹敵するのが敵として現れるなど考えたくもない。


「縁起悪くなんてないニャ。手強い敵を叩いて砕くのは、むしろ縁起がいいニャ」


 それを当然と思い込んでいる脳筋丸出しの無茶苦茶な発想である。

 考えを改めろと言ったところで聞き入れるはずもないので放置してスィーの方を見た。


「どんぐりの背比べ、五十歩百歩、大同小異」


 どうやらスィーの考えでは大した差ではないようだ。

 スタンピードと今回では、まったく違うと思うんだがなぁ。


「細かく考えすぎ」


「ん? どういうことだよ?」


「一定以上の規模になれば一般人にはド派手に見えてしまう」


 そういう発想はなかった。


「要するに今回のも許容できる範囲を超えているってことか」


「ん」


 短く言葉を発してスィーが頷いた。

 こんなにあっさり肯定されてしまうと反論の余地はなさそうである。

 何にせよ作戦変更はない。

 実行あるのみだ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「さあて、じゃあ行きますか!」


 グダグダになりかけた自分に活を入れると皆の表情が引き締まった。


「カウントダウン、行くニャーッ!」


 約1名、微妙に緊張感がない人がいますがね。

 いつものことだけどさ。


「3・2・1・GOニャッ!」


 レイの合図によって作戦が始まる。

 まずは既に亡くなっている者たちをシャドウゲートに沈み込ませ引き寄せることから始める。

 あんな陰気くさい場所に放置されたままじゃ成仏なんてできるはずもないからね。

 纏わり付いた瘴気は浄化するけど、とりあえずは引き寄せておくだけだ。


 彼らは作戦完了後に荼毘に付す。

 土葬の習慣がある地域の人たちだとしても生まれ故郷に戻すことはできないからね。

 見知らぬ地で土葬されたら成仏しきれずにアンデッド化することもあるかもしれないし。

 あまりに数が多いから各々の出身地を調べて墓を作るとかもやっていられない。

 俺にできるのはクズ三男坊とは何の縁もない場所で手厚く葬ることだけだ。


 クズ男の無軌道な非行ぶりに怒りを禁じ得ないが作戦は終わりではない。

 次は生者をシャドウゲートの対象にする。

 影に沈める直前に全員の魔力的つながりを魔力の糸でつかみ取った。

 そのまま向こうのつながりに干渉。

 被害者を眠らせると同時に今まで見ていたものを夢で見せれば影に沈み込ませても異常に気付かれずにすむ。


 魔力の糸を通して相手の反応を察知する。

 なかなか精密で繊細な作業にドキドキするが今のところ無反応。


「よし」


 被害者たちを影に沈ませていくが、やはり反応はなかった。

 だが、油断は禁物。

 相手の方が上手で誘い込まれていることだってないとは言い切れない。


 最も緊張するのは完全に沈み込ませる瞬間だ。

 亜空間に入ってしまうと夢が途切れてしまうから向こうに気付かれるのは避けようがない。

 何が起きたのかわからず混乱はするだろうけど。

 このタイミングで被害者たちと向こうのつながりを切断。

 ただし、こちらの魔力の糸はホールドしたままだ。

 向こうのラインごと引きずり込んでこちら側に釣り上げクレーターの中でたたずむゴーレムに接続。

 同時に被害者たちを予定していた廃屋の中へと引き上げる。


「おっ」


 魔力の糸に強くグシャグシャした感じの反応があった。

 視界が一瞬で暗転したかと思えば見覚えのないクレーター内の映像に切り替わったのだから無理からぬところか。

 今のうちにこちらの魔力の糸も霧散させる。


 これで奴には何がどうしてこうなったのかを知る術は失われた訳だ。

 後はどう反応するか。

 見物だね。


読んでくれてありがとう。

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