10 転生すると、あれこれ変わってしまうらしい
アフターサービスが死ぬまで続くとか自分の耳を疑いましたよ?
「いくら何でも期間が長すぎでしょう」
無期限保証と言っているも同然だからな。
「いいや、ワシはそうは思わんよ」
創天神様がそう言って星界神様を見た。
「むしろ短いくらいでしょう」
「そうじゃな」
「短いって意味が分かりませんよ」
「それだけ人間の寿命が短いということじゃよ」
相手が神様なのを失念していた。
寿命の短い人間と時間の感覚が同じ訳がない。
「龍の素材を使って融合させたから何倍にも伸びてますけどね-」
星界神様がとんでもない情報を披露してくれた。
「なぁ─────っ!?」
まったく、次から次へと驚かせてくれるものだ。
「そういう肝心なことは先に説明しておいてくださいよっ!」
「お主は怒りっぽいのう」
「そうよ、ちょっとくらい寿命が延びたくらいで大袈裟ねえ」
創天神様も星界神様も暖気なものだ。
神様たちからすれば人間の一生なんてカップ麺にお湯を注いでからの待ち時間みたいなものなのかもしれない。
「その調子じゃと、己の能力を把握したらしたで腰を抜かしかねんのう」
「ですねえ」
神様コンビの会話は頭痛のタネだ。
次から次へと不穏で不安になる話をしてくれる。
俺は言葉ではなく視線で抗議した。
何度も怒りっぽいなどと言われたくはないからな。
「大丈夫じゃ」
創天神様は俺の視線など柳に風状態で受け流してしまっていたけど、こっちはこめかみに青筋が浮かび上がりそうですよ。
「要は実体験を伴う形で確認すれば泡を食わんで済むじゃろうて」
「どのみち1回は腰を抜かすことになりませんかぁ?」
「そこはチュートリアルなんじゃから調整できるじゃろう」
「あ、実戦投入って訳じゃないんですねえ」
「バカ者め、慎重さが足りぬわっ。詫びということを忘れておるじゃろう」
「あっ、アハハハハ……」
漫才を見ているんじゃないかと錯覚するようなやりとりに俺は呆気にとられていた。
まあ、内心ではチュートリアルってゲームじゃあるまいしとかツッコミを入れていたけどね。
「さっそく行くぞ」
「善は急げでレッツゴー」
「え?」
俺がまともに反応する前に周りの風景が変わっていた。
どうやら瞬間移動したようだ。
神様のすることだから、これくらいはお手の物なんだろう。
場所は例の真っ白な世界である。
ただし、机やパソコンはないのでまったく同じ場所ではなさそうだ。
改めて考えてみても何処なのかサッパリ分からない。
ならば知っているであろう神様たちに聞いてみることにした。
「ここは何処なんです?」
「亜空間じゃよ」
「ここなら思う存分に暴れても周囲に被害が出たりしませんよぉ~」
「被害って……」
「龍の素材でできた体で本気を出すとそういうこともあり得るという話じゃな」
変身すると巨大化する特撮ヒーローじゃあるまいし俺は人間として転生したはずなんだが。
もちろん端から巨人だったなんてこともない。
どう見たって通常サイズの人間……
「あるぇ~?」
自分の体を見下ろして初めて気付いたのだが見慣れた感じとは明らかに違った。
生前の俺は153センチと男にしてはチビな方だったので見間違いということはないだろう。
これじゃ、まるでFFOの自キャラだったレイドル・ブレイバリーじゃないか。
ゲームの中でくらいは背の高い男になりたかったからプラス20センチで設定したのだ。
アバターデータもインストールしたって言ってたけど俺はてっきり知識や技術だけだと思っていた。
「その様子だと気付いたようじゃな」
「容姿はゲームの方にあわせてみました~」
星界神様にはパチパチと拍手までされてしまったさ。
「そっちの方が理想の自分に近いでしょ?」
この様子だと顔もレイドルだな。
まあ、自分の顔写真を元にして軽くいじった程度なので身長ほどの差はない。
輪郭と鼻筋を少しスッキリさせたり歯並びを良くして、名前に合わせ髪の毛や瞳の色を黒から紺色に変えただけである。
これだけでも別人のようになるから最初にキャラ作成した当時は我ながら驚きだった。
「否定はしませんが」
理想と言い切ってしまうのは微妙なところだけど。
NPCの女性キャラには嫌われたこともない代わりにモテた覚えもないからな。
フツメンは少しイジったくらいじゃフツメンのままって訳だ。
「だとすると名前もゲームの方に準拠している訳ですか」
そう考えるのが順当だと思ったのだが。
「いいや、空欄じゃ」
「ふぁっ!?」
予想外の返事に俺はまともな返事ができなかった。
「名無しの権兵衛さんってことですよ~」
星界神様はお気楽に言ってくれるものだ。
「これ、せめてNULLと言ってやらんか」
創天神様がたしなめてくれているが、言ってるのは同じことだ。
「おお、すまんすまん。本人を前にして言うことではなかったのう」
「いいですけどね」
思わず溜め息が漏れそうになったが、どうにか我慢した。
「了承してくれるなら話は早いのじゃ。ステータス画面で名前を確認してくれんか」
「どうすれば?」
「ステータスと念じるのじゃ」
「はあ」
生返事をしてしまったのは、現実の割にゲームチックだなと妙な感心をさせられたせいである。
厨二病に罹患していればドキドキワクワクしたんだろうけど。
とりあえず言われた通りにしてみる。
「うおっと」
VRMMOでおなじみの半透明なウィンドウが開いて各種ステータスが確認可能となった。
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Name:_
Rank:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
TLv.:1
HP:39.96|39.96 MP:43.29|43.29
STR:13/1 MAG:15/1
VIT:10/1 INT:13/1
AGI:13/1 DEX:11/1
* ability(figure/SLv.)
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「………………」
どのゲームとも異なる書式に些か気を取られたが、名前欄のカーソルがすぐに俺を現実に戻してくれた。
チカチカと点滅してるから嫌でも気付くわな。
これ以上ないというくらい俺の名前がない証拠である。
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