episode11
家に帰って風呂に入る。
普通ならば、落ち着く、だけど、、黄色のスポーツカーを目にした時に聞こえた声、それが心の中の声だったのか、車からの声だったのか?はわからない。
だけど、、駒乃自身の声音だから、わかること、
それは、心から渇望している走りへの探求心……
走りたいという願望が、
いつか体に現れてくるようで、
ー駄目だ!ー
目を両手で塞ぎ、
現実との境界を作る。
確かにロータリーエンジンとか、昔の車にはロマンがある。
だけれど、それは、昔が自由だったから、
走りにロマンを求める若者が多かったに過ぎないからだ。
だけれど、そうだけれど、今はどうした?
今の世の中は?と駒乃は自問自答する。
規制ばかりじゃないか、
速度制限を破ったが故に悲しい結末を迎え、
酒を飲んで運転したがゆえに、罪のない親子が死んでしまったり
走り屋は漫画では英雄のように見えて、
それは、漫画だけのこと、
だけど、、憧れは消えない。
色彩が真っ白になることなんて、決してないんだ。
駒乃は本棚から、漫画を取り出す。
『イニシャルd』
彼は、その漫画が好きだった。
父が読んでいたのを興味本意で読んでみたに過ぎない。
そして、次第にアニメで見て、車のドリフトの様子が
技術的にも、感性でさらに没入した。
美の曲線美という言葉があるが、
駒乃はそこに美を見いだしたのかもしれない。
美とは乃ち、物のあはれに通ずる、
つまり、趣深さ、
ドリフトは並大抵の運転手には出来ない高等テクニック、
そして、タイヤを犠牲にしてまでも、
ドリフトに命をかける走り屋がいた昔。
出来ることなら、彼はタイムスリップしたかった。
だけれど、所詮、本の中でしか、様子を知ることが出来ない。




