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不可思議な博物館

作者: 倉本保志

連休はいかかがお過ごしでしょう? 私は部屋でクーラーをかけ、テレビを見ながら、創作に精を出しております。早いもので、わたくし倉本保志の短編小説も、はや、6作目となりました(多分あってるよね6作目で・・?違う・・?)アイデアはまだまだ頭の中にあります。これからもどんどん投稿する所存でおります。皆様どうか、食わず嫌いはせず、くそ生意気な、わたくしめの、超絶に面白い作品をぜひご覧になってくださいまし・・・


不可思議な博物館


今日はゴールデンウイークの初日、天気同様、N田は気分も最高に良かった

かれは、K県にある 鄙びた 博物館に来ていた。

実は、ここに来たのは当初の目的ではない。

午後から、この近くにあるキャンプ場で会社の同僚たちとバーベキュー

を楽しむのが、メインの予定なのだが、高速道路の混雑を予想して、N田は

早めに自宅をでた。

しかし、意に反して、道路はそれほどの混雑がなく、結果、2時間も早く

目的地に着きすぎてしまった。N田は 時間つぶしに、キャンプ場からすぐの

この博物館に訪れたという訳である。

「しかし、こんな山中・・というか人里離れたところに、博物館なんて、」

N田は、すこし違和感を覚えていた。

(いったい何の博物館なの・・?)

博物館の周囲を見回し、彼は 入口のそばにある小さな窓口を見つけた。

「入館料50円、へっ・・安っ・・・」

「まだ、時間もあるし入ってみるか・・」

入館料から察するに、展示物もたいしたものはない、かつて地方に存在していた

昭和のB級遺産である‘秘宝館‘的なものだろうと、N田は勝手に推測していた。

入場券を買うと入口の小さなドアを開けた。 

ギュイイイイ・・・

木造の古いドアのきしむ音がした。

中に入ると薄暗いエントランスに痩せた初老の男が立っていた。

鼻の下のひげを細長くのばし、渦巻き状に整え、服装は上下黒のモーニング

スタイルで、少し前の、マジシャン風でもあった。

(へえ、館長直々のお出迎え・・・)

その一種異様な雰囲気を、まるでデコレートするかのように、館内から

酸いような、異臭が漂ってくる。

「ようこそ、よくおいで下さいました、私が館長の、‘サルバドール・ダレ‘

でございます。」

「誰・・・だって・・・?」

「左様でございます、」

「えっ・・・いや、だから・・・誰?」

「はい、・・・では、さっそく館内をご案内いたしましょう」

「トラやウマもおいおい見られますよ。」

そうN田は、かみ合わない会話に、少しいらついたが、男の後をついていった。

予想どおり・・いや、それ以上に異様な光景を、N田は目にしていた。

「なんだ・・これ・・? 」

「うわっ・・・ひどい」 

そこに展示されていたのは,トカゲ、蛇、イタチ、カメ(甲羅)

アジ、フナ、イナゴ、・・・

などなど、カラカラに乾燥した動物の死骸であった。

視覚的にもかなりの問題があるように思えたが、それ以上にN田を

動顛させたのは、その展示物から発せられる、強烈な臭気であった。

「これって・・・衛生的には大丈夫なんですか・・・?」

N田は、鼻を押さえながら館長である、ダレに訊いた。

館長は振り向いて

「内臓を取り除いた、いわばミイラです。問題ありません」

こう、即座に答えた。

一応、展示物らしく、ライトアップされてはいるが、カエルなどは、

車に轢かれたものが、そのまま干からびた感じにも見えた。

「展示物はすべてケースに密閉されています。」

「中には 防虫剤もちゃんと・・」

N田と館長は、さほど広くもない館内をおよそ5分ほどで見終わった。

「一般の展示物はここまでですが、実は・・・」

館長のダレが、話すと、それを遮るようにN田が語気を強めて言った。

「あの、もういいです。帰ります・・」

そういって、元来た道を、帰ろうとした。

「この奥に、とっておきの、超レアな展示がありますが・・」

館長のダレは目を細めて呟いた。

「超レアもの・・・?」

N田は振り向いた、レアもの・・ビンテージ・・・という言葉に、N田は

以前から、かなり、よわかった。

「ただし、見るには条件があります。」

「条件・・・どんな?」

N田は、すでに館長の巧みな勧誘の術中に嵌っていた。

「ここで見たことは決して他言してはなりません。約束です、」

「・・・・」

N田は固唾を呑んだ。

「もう一つ条件があります」

館長はすかさずたたみかける。

「見学料を1万円ほど・・・」

「さっき、払いましたよ、50円、入場券買いましたけど・・・」

「それとは別途です。」

N田は、あまり良くない頭をフル回転させていた。

(1万円も見物料を取るというのか、頭がおかしいのでは・・?

いや、あながちそうとも言い切れない、なぜなら他の、死骸を

展示物として、わずか50円ほどで見せている。安くして入場者

を増やすのが目的だ。それに50円なら、あんな展示物でもおいそれと

文句がつけにくい・・・実に巧妙だ。)

「1万円出す価値があるというんですか・・?」

N田は訊いた。

「もちろん、私が、保証します。」

「だれか・・見た人は・・?」

「かつて一人だけ・・でも今はこの世にはいません」

「いないってどういうこと・・・?」

N田は館長の顔をまじまじと見つめて訊いた。

「残念なことにその方は私との約束を反故なさったために・・」

・・・・

静かな沈黙が二人を包む。

「え、まさか・・殺されたの・・?」

「それは私の口からはなんとも・・・」

「もし、もし僕がこれを見たとしたら」

「はい、世界中でたた一人でございます。」

(なんだ、・・?この身体の奥底から湧き出てくるような衝動はなんだ・・

1万円は法外に高い、しかし、その金額が逆に、この展示物のプレミアム

さを、切実に訴えかけてくる。どうする・・・俺・・?)

あと10秒待ちます、どうなさいますか・・・?

館長は早口で、訊いた。N田には、1秒が、酷く長く感じられる。

「あ、拝観します」

N田は無意識に答えていた。

「ではこちらへ・・・」

館長のダレは、薄暗い館の奥を静かに歩いていった。

「なんだ、やっぱり・・・ミイラ?」

N田は少し拍子抜けしたが、改めて見ると、その迫力に圧倒された。

これまでの展示物とは明らかに違う・・・

それは人間の死体であった。

服装から、判断すると男、年齢は60、いや70は過ぎているか・・・?

ミイラだが、それが老人であることは分かる。

「・・・・・」

「大丈夫なの、こんなの展示して・・?  本物の遺体でしょ・・これ?」

「ええ、心配には及びません」

「まさか他殺体じゃないよね・・?」

「滅相もない、もしもそうであるのなら、私は、ここには、いません。」

(捕まって、塀の中というわけか・・)

「いや、じゃないとしても、まずい、法的に絶対まずいと思うけど」

「大丈夫なのです」

「なぜ、・・なぜそんなことが簡単に言える・・・?」

「・・・・・」

言葉を失っているN田を見つめながら、館長のダレは語り始めた。

「これは、この博物館の元館長 つまり私の父なのです」

「父親?」

「この、館をつくったのは私の父で、自身の展示も彼の意志なのです」

(そういうこと・・)

そういえば、以前、修行を成し遂げた大僧侶のミイラをテレビで見た

ことがある。

(それとこの遺体は、文化財的に、同じだというわけか・・・?)

N田はまだ信じられなかったが、そこにただ拘っていても仕方がない。

約束のキャンプの時間も近づいている。

「貴重なものをありがとうございます」

そういってN田は金を払うと、足早に出口にむかった。

「御来館ありがとうございました」

「あ、それと約束は絶対にお守りください・・・」

「ええ、それは大丈夫ですよ」

「では、またのお越しを・・・」

(いや、もう来ないから、絶対に・・・)

館長の言葉を再び遮ってN田は帰りかけた。

「あ、そうだ、」

「なにか、忘れ物でも・・・・」

館長は訊いた。

「確か、あなた・・・」

「最初にトラや馬がいるって言ってましたよね・・・」

「見てないよトラと馬」

「・・・・・」

「ここでご覧になったモノ達は不定期に思いだされます」

「いや、だから・・見てないんだって・・・・?」

「あなた自身が、トラ、ウマ それ自身なのです」

(よそう、時間もない・・)

「じゃ、どうも」

そう言って、N田は近くにあるはずのキャンプ場へと車で向かった。

 

キャンプは盛り上がり、とても楽しかった。

そしてすぐに連休も終わり、N田はまた、忙しい日常に戻った。

連休以前と何一つ変わらない、少しやさぐれた日常に・・・

いや、実は、ひとつだけ変わっていた。

最初はさほど気にならなかったが、日がたつにつれて、そのことは

だんだんと、大きく、そして重く、彼の心を蝕んでいくことになった。

時々、かれは夢でうなされたりした。

夢の中でN田は、あの、博物館にいて、薄暗い展示室の中で、例の死骸を

なぜか楽しそうに見ている。すると、突然、背後から、実際に見ることの

なかった、虎と馬が襲い掛かってくるのである。

そして、虎が、彼を押し倒し、首筋に噛みつこうとする間際で、いつも

この悪夢から覚めるのであった。

N田は寝汗を拭くと、思わず呟いた。

「トラウマになりそう・・・マジで・・・」

「って、そういうことかい・・・」

N田は、館長の言葉を思い出していた、そして意味不明だったその言葉

の意味をようやく理解して、酷く苛ついた気持ちになった。

「ふざけやがって、あのじじい・・・」

そして事実彼の言葉どおりに変容しかかっている自分自身にも酷く

腹が立った。

「くそ・・・意地でもなってやるもんか、トラウマなんか・・・」 


そういって、N田は掛け布団を手繰り寄せると、顔を埋め目を閉じた。 

・・・・・

眠りにつこうと思ったが、なかなか寝付くことはできなかった

                             おわり


あ、毎回繰り返していますが、私 倉本保志は三島由紀夫の生まれ変わりだと自負しております。

「文体もなにもかも、すべて三島作品とは 違うだろ、違うだろおおお・・・、貴様なんかと三島由紀夫をいっしょくたにするなあああああ」とお叱りの声を受けることもなく、へらふらと執筆活動を続けております。

いまにわかります、私がこの先、芥川賞でもとれば、・・いまにきっと・・・

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