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特訓の成果

テンポが遅くて申し訳ございません・・・

 月日が経ち、俺は2歳になっていた。

 既に俺が走り回っても両親は何も疑問に思わず、それどころかすごいと俺をベタ褒めする。今日も家の周りを走り基礎体力を鍛えたところで、マリーが俺にタオルを差し出す。


「お疲れ様ルイ、まだ子供なんだからあまり無理しちゃだめよ?」

「うん。分かってるよ母さん。ちょっと部屋で休むね」


 心配するマリーにそう告げて俺は自室へ戻る。

 もちろん休憩するつもりはない。

 今の俺の体力は2歳のそれとはかけ離れており、家の周囲を走ったぐらいじゃ疲れやしない。しかも自分の体を見ると筋肉も随分付いたことが分かる。


「さてと。次は魔力の特訓だな」


 次の瞬間、俺の目の前にいくつもの火の玉が現れ、すばやく俺の周囲で上下左右に動く。


 いつからか、俺はこの魔法を発動するのに呪文を必要としなくなり、体が感覚を覚えたのかイメージするだけで火の玉を出せるようになったのだ。

 そして女神が俺に与えた並行思考のスキルをセンセイに解説してもらい、今では同時にいくつもの魔法を同時発動できるようになっている。

 しかもマナを共鳴させたことでライトの大きさも光も通常の倍以上だ。


 そのお陰で現在魔力はかなり増えているが、効率良く魔力を消費できている。普通に一回一回ライトを発動させてたら一日かけても魔力を消化できないのだ。


「そろそろだな」


 体に独特のダルさを感じ、魔力切れの前兆だと分かる。そして俺は目の前の魔法を一斉に消した。

 今となっては別に魔力切れを起こさなくても十分魔力を増やせるため、いつもギリギリのところで止めているのだ。


 そして俺の周りがキラキラと輝きはじめ、マナが俺に集まり魔力が回復していくのを感じる。

 これももう見慣れた光景だ。


「俺もすっかりこの世界に染まってきたな。この分ならお昼までには回復するだろう」


 これにて魔力増強作業を終えた俺はいつものようにマリーのところへ向かう。

 これで何度目か分からないお願い事を今日もマリーに告げた。


「ねぇ母さん、そろそろ魔法を教えてよ」


 そう。

 そろそろ新しい魔法を試してみたいのだ。

 最初はライトでも十分楽しかったが、やはり毎日同じ魔法というのは飽きが来てしまう。

 しかし今日もいつもと同じ答えが返ってきた。


「ルイったらまたそんなことを言ってー。まだルイには早いわよ。魔法はね、体内の魔力を使うの。子供のルイにはまだ魔力がほとんどないからすぐに魔力切れになるわよ?」

「それでも試してみたい!」

「こらこら。無茶言っちゃだめよ。それで体に負担が掛かったらどうするの?」


 センセイの説明で大丈夫だと知っている俺と違い、マリーは俺を心配して魔法を教えようとしない。

 そりゃ魔力切れを起こしたら気を失うから、体に負担がかかると思われても可笑しくはないけどな。


 相変わらずの回答にうんざりするも、これも自分を心配してのことだと思い気持ちを切り替えた。

 まぁ、もともとダメ元で聞いてるだけだしな。


「そうね。ルイは魔法に興味があるようだから、今日は特別に違う魔法を見せてあげよう」


 まじで!?

 予想外の言葉に驚く。

 今まではライトしか見せて貰えなかったが、今日はどうやら違う魔法を見せてくれるようだ。

 自然と期待感が高まる。


「うん! 見てみたい!」

「じゃぁ見ててねー」


 マリーが指先ではなく手のひらを俺の方へ向けてきた。

 そして新しい呪文を唱える。


「風よ吹け、ウインド」


 呪文を唱えるとマリーの手の平から柔らかな風が吹く。ドライヤーの風よりも若干弱いぐらいか。新たな魔法を目の当たりにして俺の心が躍る。


「母さんすごいよ! 風が気持ちぃ!」

「へへへ、すごいでしょ」


 俺のはしゃぐ様子を見てマリーの顔が得意そうに笑っている。

 こういう子供っぽいところもマリーの魅了だ。 

 しばらく新しい魔法を満喫して、俺はマリーの魔法にマナを共鳴させその変化を観察するとこにした。


 ぶぅぉおん


「あら? やっぱりルイの前で魔法を使うといつも調子いいんだよね。これが親子の力なのかしらね?」


 ふふふと笑いマリーが俺の頭を撫でる。

 この世界の人はマナを感じられないから当然マナによる共鳴など知らない。

 だから自分の魔法が強化されたことにも気づかず自分なりの理由をつけて納得しているのだ。

 まぁ親子の力がどういうものか俺には想像もできないから否定はしたくないが。


「ルイは賢いしママの子だから、将来きっと立派な魔術士になるわ。だから焦らなくても大丈夫よ」


 相変わらずの親バカぶりに俺は呆れるも母の言葉を素直に喜んだ。


「うん! 母さん、いつか魔法を教えてね」

「もちろんよ。楽しみに待っててね」


 それだけ言い残し、俺はマリーの元を去り慌てて自室へと戻る。

 もちろん新しい魔法を試すためだ。


「おっしゃー! ついに新しい魔法を試せるぞ!」


 この時俺は童心に戻り、意気揚々と新しい魔法を試そうとする。

 これまでずっとライトのみを使い続けてきたのだ。新しい魔法に興奮して我を忘れるのも無理はない。


 そこで事件は起きた。


「風よ吹け!ウインド!」


 ブゥゥウウオオオオオオオオオン!!


 そよ風程度だと思っていた風魔法が暴風のように吹き荒れる。

 どうやら俺は気合を入れすぎて魔力を込めすぎたらしい。

 あらゆるものが風に乗って部屋中を飛び回り、当然部屋内に物がぶつかり合う大きな音が鳴り響く。


「どうしたのルイ!?」

「何事だ!? ルイ大丈夫か!」


 大きな物音を聞いてマリーとロイスはすぐさま部屋に駆け込んできた。

 そしてすぐに部屋の光景を見て唖然とする。


「・・・なにこれ?」

「なんじゃこりゃ? ルイ、お前がやったんか?」


 やってしまった。

 調子に乗りすぎてしまったようだ。

 この事態をどう説明しようか必死に頭を回転させるが、思考はネジが切れた時計のように止まり、何も言い出せない。

 


「もしかして・・・魔法を使ったのルイ?」

「はぁ? まさかな」


 考えが纏まる前にマリーが問いかけてくる。

 必死に言い訳を考えるもいい案が思い浮かばず、結局俺は観念して正直に話すことにした。


「・・・うん。僕が魔法を使ったよ。母さんが見せてくれた魔法を真似たらこうなってしまったの。ごめんなさい」


 もしからしたマリーやロイスから不気味がられるかもしれない。

 もしそれで俺がこの家から追い出されたらきっと俺は立ち直れないだろう。

 そう思うと恐怖でいっぱいになる。


「おいおいおい。こりゃとんでもねーな」

「ええ、信じられないわ」


 やっぱり2歳児が部屋で魔法を使い、しかもこうも部屋を荒らしたとなると、普通に考えて気味悪い。

 あぁ、俺の新しい人生はこんなにも早く詰んでしまったか。


「すごいじゃないルイ! あなたはやっぱり天才よ!!」

「すげーなおい! こりゃ大物だ!」


 は?


 俺の意に反してマリーもロイスも俺を気味悪がるどころか、大いに俺を褒め称えている。

 ・・・どうやら親バカフィルターのことを俺はまだまだ見くびっていたようだ。


「ルイ! あなた魔法が使えるの!? いつからなの?? きゃー! ルイ、すごいよ!」

「こりゃ俺の負けかな。どうやら本当に魔術士の才能があるみたいだな。いやいや、でもルイは体力もあるし剣術を教えてもすごいことになるはずだ」


 何その反応?

 心配した俺のガラスハートを返せ!

 そう叫びたい気持ちを抑え、こんな俺でも精一杯愛する家族にただ感謝するしかなかった。

 

 あとは言い訳だな。


「ごめんなさい。母さんの魔法を見て自分で練習してたら出来るようになったの」


 さすがに全部話すわけにはいかないので、肝心なところは伏せて説明した。


「ルイは本当に天才だったんだね! まだまだ小さいと思って魔法を教えなかったけど、明日からは私ができるだけ教えてあげるわ! こんな才能を眠らせるなんて勿体無いわよ!」

「いやいや、ルイは魔法のセンスもあるけがきっと剣術の方もすごいに違いない。もう少し体が成長したら俺も剣術を教えるぞ!」


 前世と合わせると俺はマリーとロイスよりも年上だが、二人の暖かい声を聞いて俺は大粒の涙を流した。


「ありがとう!母さん、父さん!」



 二人に感謝を告げたこの瞬間、俺は二人の子供になったのだろう。



お読み頂き有難うございます。

次話は明日投稿します。

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