誕生日会
今回は短めです。
そうこうしているうちに俺は1歳の誕生日を迎えた。
今の俺は相変わらずベッドに横たわっているが、ベッドの下では小さな火の玉がくるくると回っている。毎日のように魔法制御を行ったことで、魔力量も魔法制御も随分向上したものだ。
マリーは初めて誕生日を迎える俺のために部屋のあちこちで飾り付けをし、ロイスは今日のご馳走のために朝からウサギ狩りに出ているようだ。
「帰ったぞ! 山うさぎが3匹も捕れたから今日はご馳走だな! はっはっは!」
そうこうしている内にロイスが帰ってきた。
手には茶色いウサギを3羽持っており、見ると前世で見たウサギとほとんど変わらなかった。
ご馳走って言うけど、うまいのか?
しかもそれ君たちの分だよね? 赤ん坊の俺に食わせるんじゃないよね?
「おかえり! あら、美味しそうなうさぎね。ちゃんと美味しいご馳走を作るから楽しみにしてて!」
「はっはっは! そりゃー楽しみだな!」
マリーがロイスを出迎え、早速ウサギを持って厨房へ向かう。
しばらくして部屋の中に肉の焼ける香ばしい匂いが漂い始め、赤ん坊の俺にはまだ食べられないが、匂いだけで食欲がそそられた。
そして夕食の時間になり――
「「ルイ、1歳のお誕生日おめでとう!!」」
マリーとロイスが俺に向かってお祝いの言葉を贈る。
自分のためにお祝いをされるのは前世も含め何年ぶりだろう。恥ずかしくも嬉しい気持ちになる。
しょうがねーな。
ここは俺も少しはサービスをするとしよう。
「ままー」
「っ!?」
俺はわざと子供らしさ全開でマリーを呼ぶ。するとマリーは手を口に当て、大きく目を開く。
「ルイ! もう一回! 今ママって呼んだわよね!?」
「ままー」
再度マリーを呼ぶとマリーは目に涙を浮かべ俺を抱きしめた。
「おい! ルイ! 俺は? 俺のことはわかるか?」
しょーがねーな。
今日はロイスにもサービスしてやろう。
「ぱぱー」
「なっ!?」
ロイスを呼ぶとマリーと同じように驚き、そして固まってしまった。
「ぱぱー」
もう一度呼ぶとロイスはマリーから俺を奪い、力強く抱きしめ、感極まってか泣き出してしまった。
「ルイはお前に似て賢いなぁ。もう言葉が分かるようになってきたんだな! はっはっは!」
「ふふ、当然よ。私の子なんだもの!」
ロイスは俺を床に下ろし、今度はマリーを抱き上げる。相変わらずこの二人の満面の笑みは絵になる。
二人が喜んでいる姿を見ると俺もなんだか嬉しくなってきたぞ。
よし、ここはもう少しサービスをするとしよう。
俺は両足に力を入れ、微妙にバランスを崩すという演技も交えながら立ち上がる。
「「!?」」
俺を見て驚く二人を無視して俺はよろよろと二人に向かって歩き始める。そして足元にたどり着いた時にとどめの言葉を発する。
「ままーぱぱー」
一瞬固まっていた二人だったが、すぐに奪い合いながら俺を抱きしめ、頭を撫で回す。
「ルイ! すげーじゃねーか! お前もう歩けるようになってんのか!」
「本当にすごいわ! もしかしたらうちのルイは天才かもしれないわ!」
俺の行動に二人は心底喜んでいる。
若干早まったかもと思ったが、親バカの二人にはどうやら俺が天才に見えたようだ。人に褒められることなんてもういつ振りだろう。
こんなに嬉しいものだということも忘れていた。
その日の二人は夜遅くまでお酒を飲み、喜びを分かち合っていた。
そんな声を聞きながら俺は自室で改めて新たな人生は精一杯生きていこうと思った。
二人の笑顔を絶やさないようにと。
―深夜―
マリーさんや、ロイスさんや、そろそろ寝ませんか?
うるさくて寝れんわ!
580PV・・・有難うございます!
本日はもう一話投稿します。