魔力増強
目を覚ました時は朝になっていた。
「おはようルイ。しっかり寝たわね。やっぱり昨日は運動して疲れたのかな?」
声に目を向けるとマリーがベッドの隣で座っていた。
相変わらずの美人で、横に座っているだけで幸せな気分になる。
しばらくマリーを鑑賞し、昨日の事を振り返る。
昨晩は同じ魔法を2回放つことが出来たから魔力はしっかり増えているだろう。量にしてどれぐらいかは分からないが、まだ大したことはないはずだ。これから毎日限界まで魔法を使っていこう。
センセイは幼少時代は魔力の増加率がいいと言ってたが、どこで増える量が減るかも分からないしな。今回の人生は油断しない、調子にのらないをモットーに生きよう。
この日のマリーはなかなか部屋から離れず、俺にいろんな話をしてくれた。早く魔法を練習したいと思いながらも、これはこれで俺に必要なことだからとしっかり耳を傾ける。
話を聞いていると、どうやらマリーとロイスは冒険者らしい。
昔一緒にパーティを組み、世界各地を冒険したようだ。ロイスは脳筋ではあるけど腕はしっかり立つらしく今や街でも有名な剣士だそうだ。そしてマリーも魔術士としては一流らしい。
今では子育てのためパーティは解散となったが、ロイスはまだ現役で、たまに臨時パーティを組みながら生活のために出稼ぎに行っている。
通りでたまに家にいないわけだ。
「マリー、ルイ! 帰ったぞ! 今回はスノーベアを仕留めたぞ」
噂をすればなんとやらで、ロイスが帰って来たようだ。
「今回はなかなかの大物だったよ。これでしばらくは楽できるな」
大袈裟に笑い、ロイスが小さな袋をマリーに投げ渡す。
「いつもお疲れ様。これだけあれば今年の冬は問題なく過ごせるわね」
どうやら袋の中身はお金らしい。
輝く銀貨が沢山入っており、金貨も何枚か見えた。
この世界の物価と貨幣価値が分からないから目の前のお金がどれだけ多いのかよく分からないが、マリーの喜ぶ姿を見て決して少なくないことは判断できる。
そういや、俺って前世から一度もお金を稼いだことがないな。この世界では将来しっかり稼ごうと密かし誓いを立てる。
「ありがと。今晩はご馳走をつくるね!」
「そいつは楽しみだ! はっはっは!」
美男美女が二人して笑い合う姿は随分と絵になる。
まだ自分の顔を見たことないけど、この二人から生まれた俺はちゃんとイケメンなんだろうな?
喜ぶ二人はしばらく話してから漸く俺の部屋から出て行った。
ここからは俺のターンだ。
早速魔力増強のため魔法を練習しよう。
どれだけ魔力が増えてるか分からんが、今日は3回以上使えるだろうか。
「火よ闇を照らせ、ライト」
呪文を詠唱すると指先に火の玉が現れ、俺はすぐにそれを消す。
そして魔力切れを起こすため俺は同じように呪文を唱えていく。
「火よ闇を照らせ、ライト」「火よ闇を照らせ、ライト」
普通に3回使えたぞ。しかもまだ魔力が残っているのが分かる。
もしかして、これは魔力切れを起こす度に魔力が倍に増えるのか?
なら結構な速さで魔力って増えていくんじゃないか?
《マスターが成長限界突破のスキルを所持しているためです。本来は決まった量しか増加しませんが、マスターは使用した魔力分が増加されます》
チートキター!!
この成長率はハンパないわ。
あの女神は大した力は与えられないと言っていたが、かなり大したことあるだろこれ。
ならもう一度魔法を使ったら俺は魔力切れを起こすはずだ。
「火よ闇を照らせ、ライト」
案の定、出現した火の玉を消すと俺はまた魔力切れを起こし気を失った。
そして意識を取り戻したのはその日の夕方前だった。
以外と早く回復できたな。
回復にもっと時間が掛かるという先入観があったが、思ったよりも魔力って早く回復するみたいだ。
《それは周囲のマナによる力です。本来は自身の力でしか魔力は回復しませんが、マスターは漂うマナから魔力を吸収できます》
なるほど。
これも加護の力か。
女神様さまだな。
なら次に訓練できるのは夕飯後だ。今もう一度魔力切れを起こすとさすがにマリーが心配するだろうからな。
その日の夕飯を食べている時、俺はマリーとロイスの談笑を聞きながら魔力について考えていた。
俺の場合、魔法を使えば使うほど魔力がその倍増えていく。このペースで行くと間違いなく短時間で魔力量はでとんでもないことになるだろう。
今はまだいいが、将来魔力量が大幅に増加して使い切るのが大変になる時がきっと来るはずだ。
何かいい手はないだろうか。
「おやすみルイ、ちゃんと寝るんだよ」
夕食後、俺をベッドに寝かせたマリーが部屋から出ていく。
そして俺はその姿を確認してから再び魔力を鍛えるため、お馴染みとなった魔法呪文を唱える。
「火よ闇を照らせ、ライト」
目の前の火の玉に意識を向ける。
これまではただ魔法を発動させるだけだったが、今回はどれだけ制御できるか試してみよう。
まずは指を動かして火の玉の様子を観察する。
すると俺が指を動かした分だけ火の玉もそれに合わせて移動する事がわかった。今のところ何も違和感は感じない。
次は指先から離れて火の玉を動かせないか試す。
移動する様子を想像しながらじっと火の玉を見つめる。すると最初は全く動かなかった火の玉が徐々にではあるが、ゆっくりと動き始めた。
どうやらイメージがはっきりしていると魔法はそれに応えてくれるようだ。
しばらくそうしていると俺自身が操作に慣れて来たのか火の玉がイメージ通りに動くようになってきた。最初のろのろと動いていた火の玉も徐々にその動きはスムーズになっていく。
そして俺はどこまで火の玉を移動させられるのかを試すため、火の玉の高度を少しずつ上昇させる。
火の玉が俺から離れれば離れるほど操作は難しくなり、何とか天井に火の玉が届いた瞬間――
意識がまた闇へと落ちた。
そして俺が目覚めたのはまだ日が昇らない深夜だった。
どうやらまた魔力切れを起こしたらしい。
まだ一回しか魔法を使ってないのにどういうことだ?
《魔法制御は魔法発動より更に魔力を使用するからです》
そういうことは早く言えよ!
って、待てよ?
魔力切れを起こしたってことは、魔力は増えているのか?
《はい。当然増えています》
まじか!
それなら毎回呪文を唱えて火の玉を出すより魔法制御した方がよっぽど効率いいじゃないか!
これは使えるぞ。
そしてこの日から俺はひたすら魔法制御を行い、魔力切れを起こし続けた。
お読み頂き有難うございます。
次話は明日投稿します。
よろしくお願いします。