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強化習得

あれ?

剣術はどこへいった?


「父さん、それじゃ分かんないよ。もう少し詳しく説明できないの?」

「いや分かるだろ? だからこう体の奥から力を込めてだな――」


 何度聞いても結局分からん。

 ロイスは感覚派らしく人に説明するのが大の苦手のようだ。

 逆になぜ俺が分からないのかが分からないようで、まるで俺が物分りが悪いような目で見ている。

 これだら脳筋は・・・


 でも俺には関係ない。

 センセイ!

 お願いします!


《肉体強化は魔力を筋肉に定着させ、その魔力を一気に開放させることで筋力を向上さる技術です。その方法は――》


 あざーす!

 流石センセイ!

 どっかの脳筋とは大違いだ。

 センセイの説明を整理すると肉体強化の仕組みが大分理解できた。


 肉体強化とは魔力によるパワーアシストスーツのようなものだ。

 まずは魔力を体の各所に流し擬似筋肉のように定着させる。

 テーピングみたいなもんだな。

 この時如何に全身に魔力を巡らせられるかで効果が変わるらしい。


 ロイスが言っていた「ぐっと力を溜めて、すーっと体に流す」とはこのことだ。

 分かるか!


 更に驚くべきことに、身体に魔力を流す時は上級魔法のように抵抗が強く、本来定着させるのは容易ではないのだが、ロイスは感覚的に魔力を圧縮させて流していた。

 咄嗟にティアについた嘘だったが、ロイスは本当に魔力圧縮を使用していたのだ。

 普段のおちゃらけからは信じられないが、ロイスも十分天才だと言える。

 

 話が逸れた。

 ロイスが最後に言っていた「ドンっと弾けさせる」は、全身に巡らせた魔力を一気に開放させ、運動エネルギーへ変えることを言っているらしい。

 省略しすぎだろ。


 これが肉体強化の正体だ。

 前世でも様々なアシストロボットが開発されていた。

 ただどれも装置が大きく重量もある。

 しかも動作レベルはまだまだ実用的ではなかった。

 それに比べ肉体強化は自身の体がそのまま強化されるんだから使い勝手は比べ物にならない。

 この世界ならではだな。


 それにしても、もしセンセイがいなかったら多分俺は一生肉体強化の仕組みも分からず習得できなかっただろう。

 まさか最大の難関がロイスの説明だったとは夢にも思わなかった。


「――なら最後はグンじゃなくて、ボワっ! なら分かるか?」


 本気か?

 もうそれはいいから・・・


「う、うん、なんとなく分かったよ」

「そうかそうか、やっぱりボワっの方が分かりやすかったか。なら実際にやってみろ」


 ロイスが一人でぶつぶつ言ってるのを無視して俺は目を閉じて集中し始める。

 まずは魔力を練り上げる。

 魔力がどれだけ必要かよく分からないが、取り敢えずさっきロイスと同じ程度を練り上げる。

 ここまでは何の問題もない。

 伊達に帝級魔法を扱っているわけではないからな。


 次に体に魔力を流してみる。

 あれ?

 うまくいかない。

 初めて上級魔法を使用した時と同じように魔力が押し戻される。

 これがセンセイの言っていた抵抗か。

 なら、簡単だ。

 俺は溜めた魔力を圧縮させて、それから一気に体へと流し込む。


 不思議な感覚だ。

 魔力を流した箇所が軽くなっていくのを感じる。

 筋肉が疲れきった時にテーピングするのと似ている。

 俺は更に魔力を操作して全身に巡らせる。

 よし。


 最後に俺は全身に流れている静かな魔力を一気に開放させる。

 !?

 魔力が自分の体の中で弾け暴れる。

 熱い。

 高熱でも出しているかのようだ。

 でも、力が込み上げてくるのを感じる。

 試しに足元に落ちている小石を持ち上げ力を込める。

 するとまるでクッキーのように小石は粉々に潰された。

 ここまでパワーが上がるとは想像以上だ。

 成功だ。


「っう」


 と思ったらすぐに体から力が抜け、その反動で俺は地面に膝を付ける。

 どうやら肉体強化が切れたようだ。


「おいおい、お前一発で成功させたのかよ・・・」


 俺が肉体強化を成功させたことにロイスが驚く。

 もっとも成功と言っても数秒しか維持できていないが。


「うん、なんとか出来たよ。でもやっぱり難しいや。魔力制御も魔法の時とは感覚が違うから維持が難しいね。もっと練習が必要だよ」

「それでも十分すぎるぞ。俺が習得するのにどんだけ時間と苦労をかけたと思ってんだ。やっぱお前はすげーな」

「魔法の訓練をたくさんしたからじゃない?」

「それは否定しないけどそれだけじゃないぞ。もしそうなら世界中の魔術士は肉体強化が使えてる。実際そうなっていないってことはお前が特別なんだよ。実際俺はお前が習得するのに相当時間がかかると思っていたからな」

 

 確かに肉体強化の魔力操作は魔法の時とは全然違った。

 例えるなら普段右手で箸を持ってるのを左手に持ち変える感じだ。

 何とか出来ないことはないがかなりぎこちない。

 他の人の場合はその違和感が更に強く、だから順応できないとロイスは言う。

 なんな訳で早いうちから魔法を使うか肉体強化を使うかを決め、それに特化した訓練を行うのだ。

 訓練の期間が長ければ長いほどその癖が強くなり、後から切り替えるのは難しいらしい。

 子供の時期から両方覚えさせるのが理想的だが、子供だと片方の習得だけでも難しい。

 つまり俺が異常ってことだ。


「でもすぐに強化が切れてしまうからまだまだだね。これじゃ実戦では全然使えないね」

「一発でこれだけできれば上的だ。しかも実戦で使えないなんてとんでもない」

「こんなにすぐ切れるのに実戦で使えるの?」

「当然だ。もちろん今のままじゃ厳しいが、時間が短いのは問題ない。実際俺たち剣士が肉体強化を使うのはほとんど敵を切る一瞬だけだ。そんな長時間肉体強化を使えるやつなんていやしない」


 言われてみればその通りだ。

 魔力量が多い人は普通魔術士を目指す。

 つまり剣士は魔力量が魔術士より少ないはずだ。

 でも剣士は魔術士に使えない肉体強化が使える。

 どちらがいいかは判断が難しいが、なるほどよくできている。


 待てよ。

 それなら俺の場合はどうだ?

 魔力量ならもう誰にも負けない自信がある。

 ティアも俺はすでに人外レベルだと言っていた。

 そんな俺が肉体強化を自由に使いこなしていたら?


 やっべー!

 完璧に最強じゃねーか!

 俄然やる気が出てくる。


「父さん、肉体強化をもっと長時間使えるようにするにはどうしたらいいの?」

「それは訓練あるのみだろ。俺の場合習得した時は3秒ほどしか使えなかったが今では3分ぐらいは継続できる。ちなみに10年以上使ってそれだ、簡単には行かないぞ」


 なに・・・?

 10年以上使い続けてたったの3分だと?

 カップ麺が出来上がったら強化も切れるのか。

 しかもロイスが言うにはこれでも長い方らしい。

 1分間でも継続できたら一人前のようだ。

 俺は数秒で効果が切れてしまったから何とも言えないがそういうものなのか?

 俺がイメージしていた理想像が崩れていく。


《長時間持続できない理由は二つあります。それをクリア出来れば長時間の発動も可能です》


 さすがセンセイ!

 ここぞとばかりにフォローを入れてくる。


 センセイの説明では剣士の魔力量は魔術士に比べ圧倒的に少なく、長時間継続する土台がまずないそうだ。

 これは剣士は魔術士と違って魔力を使い切るのが難しく、幼い時期に魔力増強を行っていないのが原因らしい。

 もしティアにこの話をするとまた興奮しそうだな。


 そして次の理由はほとんどの剣士は精密な魔力制御ができないからだ。

 肉体強化は体内に魔力を流し、それを開放させる技術だが、そのままだと体内の魔力がすぐに体外に漏れてしまい強化が切れてしまう。

 確かにロイスの時も体から魔力が漏れていたのを確認している。

 だから体内の魔力を開放させるのと同時にそれを体内に留める必要があるが、その制御は相当難しいらしく、それを鍛えるくらいなら剣を磨いた方が効率がいいそうだ。

 剣士はあくまで剣士であり、剣を極めるのを優先するものらしい。

 魔力強化は剣術を使う一瞬で十分だと認識されていることも原因だ。


 センセイあざーす!

 やっぱりセンセイの解説は分かりやすくていい。


 ふむふむ。

 センセイの説明を整理すると益々あれだな。


 俺マジで最強になれそう!!!


お読み頂き有難うございます。

次話は明日更新予定です。

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