魔法のお勉強
うーん・・・展開を考えるのがこんなに難しいなんてorz
昨日あれだけのことを起こしたにも関わらず、マリーとロイスは俺を普通に受け入れてくれた。それどころか俺を誇らしく思ってくれているみたいで、今日から英才教育を始めるようだ。
相談した結果これからはマリーと共に魔法を勉強し、俺が5歳になったらロイスが剣術を教えてくれることになった。
今までセンセイからいろいろ指導してもらっていたが、センセイは新しいことは教えてくれないのでこれから始まる特訓に俺はかなりわくわくしていた。
「さあルイ、今までごめんね。ママがもっと早く気づくべきだったわ。我が子が天才だったことに。これからはしっかり魔法について教えてあげるからね」
相変わずの親バカだ。
聞いていて恥ずかしいが嫌じゃない。
俺も今日からがんばるか。
「最初は魔法の基礎知識からね。魔法には属性と階級があるからまずはそれを理解しようね」
マリーの説明を聞いて整理すると概要はこうだ。
属性:火、風、水、土
階級:生活魔法、初級魔法、中級魔法、上級魔法、帝級魔法、神級魔法
「さすがルイね。理解が早いわ。属性は四大属性の他にもユニーク属性があると言われているの。でもこれは文献でした確認されていないからあまり気にしなくてもいいわよ。実際世界に四大属性以外を使える者はいないしね」
マリーの話では四大属性以外にも魔法属性はあるらしい。
その属性とは闇属性、光属性、時空属性の3つだ。
尤もこれは大昔の文献に大賢者が使用していたと記録されているだけで、現在使える者は存在しない。今となっては属性そのものが存在を疑われているようだ。
でもそれを聞いて俺は前世で読んだ小説を思い出す。
実際に登場していた属性なのでイメージも出来るし、ひょっとしたらあったかも知れないと思う。
いつか目にする機会はあるのだろうか。
「まあそれらは考えても仕方ないわ。四大属性を使いこなせるだけで十分な力を手に入れられるからね」
それもそうだな。
今はまずできることから始めよう。
「ママが得意としている属性は火と風よ。それぞれ上級までは使えるんだから。すごいでしょ!」
ニカっと笑い、マリーがドヤ顔で俺を見つめる。
どれだけすごいのかよく分からないけど、上級というぐらいだからすごいのだろう。
「母さんはすごいんだね! 水と土はどうなの?」
「土と水は残念ながら初級までしか使えないわね。相性の問題かな」
魔法に相性があるのか?
《はい。属性には相性があります。火と風は相性がよく、逆に火と水は相性が良くありません。火属性を得意とする魔術士は水属性を苦手とするのが一般的です》
センセイの解説頂きました!
なるほど。確かに火と水、風と土って逆のイメージがあるよな。
「ちなみにルイにこれまで見せた魔法は【ライト】と【ウインド】という生活魔法よ」
やっぱり一番階級の低い魔法だったんだな。
そしてマリーがこの二つの魔法について教えてくれた。
生活魔法だからか別に難しいことはなく、簡単に言えばこうだ。
ライトは闇を照らす火の玉。照明替わりだな。
ウインドはそよ風を出す生活魔法。扇風機替りぐらいしか使い道がない。
「ルイはウインドを使っていたけど、ライトも使えるの?」
「うん! 使えるよ」
そう言い、俺は指先からライトを発動させる。
もうウインドのような失敗はできないから魔力を抑えて小さな火の玉を出す。
「っ無詠唱!?」
俺が呪文を唱えないで魔法を発動させたことにマリーが驚く。
「ルイ! あなた魔法を無詠唱で発動できるの!? やっぱり天才だったんだね!」
俺の魔法を見てマリーは延々と無詠唱魔法のすごさを説明してくれた。
どうやら無詠唱というのは非常に難しいらしく、生活魔法程度なら無詠唱で使える者も多いが、初級魔法でも無詠唱は難しいようだ。
ただいくら生活魔法と言っても、俺みたいな子供ができるとなると見ていない人は誰も信じないそうだ。
またやりすぎたかな・・・
「何回も練習しているうちに出来るようになったよ」
「ルイは天才だから出来ても不思議じゃないよね」
どうやらなんでも天才で片付けられるらしい。
褒められて嬉しくないわけではないが、前世の記憶とチートスキルのせいで後ろめたい気持ちもある。
でも生まれ持った力も俺の力だ。
裕福な家に生まれた子は生まれながら一般人より有利であるのと変わらない。
いかんいかん。
俺はそれで油断して前世で失敗しているんだ。
もう同じ過ちは犯すまい。
「ううん。まだ分からないことがたくさんあるし、新しい魔法もいっぱい覚えたい!」
精一杯の子供アピールをする。
それがマリーは嬉しかったのか、また俺を抱きしめて頭を撫でる。
本当に親バカだな・・・
「えらいわルイ。才能に溺れず謙虚なのはいいことよ」
油断しない。調子に乗らないをモットーにしてます。
ハイ。
「ライトもちゃんと使えるみたいね。それなら水と土の魔法もルイに見せてあげる」
マリーが指先を地面に向ける。
「土よ形をなせ、アース」
呪文を唱えた瞬間、地面から拳サイズの小さな突起物ができた。
「どうルイ? 今のは【アース】という土魔法よ。土を操る力があるわ」
「すごいね母さん! 形は自分で変えられるの? 大きさも調整できる?」
そういうとマリーは気まずい表情をして答える。
「土魔法が得意な人ならある程度形や大きさを変えられるけど、ママは土との相性が悪いからこれが精一杯ね。だから土魔法はほとんど使ったことがないの。それに土の生活魔法は使い勝手がそんなによくないから、使う人もなかなかいないわ。」
マリーはできないようだが、応用は効くみたいだ。前世でフィギア作りにはまった時期があり、うまく土を操れたら面白いと思う。
「次は水魔法ね。見てて」
マリーが気を引き締めて指先を地面へ向ける。
「水よ集え、アクア」
呪文を唱えると指先から小さな水の塊が生まれた。大きさはコップ一杯分ぐらいか。水が宙に浮かぶ姿なんて異世界でしか見られないだろう。
幻想的だ。
そしてマリーが魔法を解除すると水玉が地面へと落ちる。
この魔法も俺が持っているイメージとあまり変わらない。
「これは【アクア】という水の生活魔法よ。ちなみに飲むことも出来るけど味は途轍もなく不味いから緊急時以外は好んで飲まないわね」
水が出せるのはかなり便利だと思うけど、まずいのは意外だったな。
「じゃあ早速ルイもやってみて」
マリーに促され俺も先ほどの魔法を思い出しながら呪文を唱える。
「土よ形をなせ、アース」
魔法を発動した瞬間、地面からバスケットボール大の土の塊ができた。
「お、大きい・・・ こんなに大きいなんて」
マリーさんや。
その言い方はいろいろと誤解されるぞ。
「さすがルイね! 最初からこんな大きな土を扱えるなんて」
「きっと母さんの教えがいいんだよ」
どうやら魔法に込める魔力が大きかったらしく、現れた土の塊はマリーよりも大きかった。
尤もマリーはわざと魔力を抑えて先程の大きさにしたみたいだけど。
「そ、そう? そう言ってもらえるならママも嬉しいけど。でもやっぱりルイはすごいわ」
そして次に水の魔法を試そうと、指先を地面に向ける。
「水よ集え、アクア」
やっぱり魔力が多かったのかアース同様アクアもマリーのより大きなものが出現した。
「・・・もうルイだから何が起きても驚かないわ。アクアも一発で成功させるなんてね」
マリーが言うには生活魔法だとしても習得には時間が掛かるし、こんな幼い子供が一発で出来るじゃないと言う。
俺はこれまで散々魔力制御を練習しながら魔力増強してきたからな、その成果が出たんだと思う。
そう言えば、マリーは魔法で作られた水はまずいと言ってたが、どんな味なんだろ?
初めて自分で生み出した水を飲んでみたくなり、俺は水の塊に手を伸ばす。
「あっ、ちょっと!」
「・・・まっずぅぅ!!」
「あはは、そりゃそうだよ。もぅ、だから言ったじゃない」
実際飲んで見て分かっlたが、これは人が飲める水じゃないな。
兎に角臭い。
泥沼や掃き溜めみたいな匂いがした。
誰も好んで飲まないのも頷けるな。
待てよ。
マナを共鳴させたらどうなるんだろ?
確かマナ共鳴って魔法の威力だけじゃなくて効果も向上させられるんだよな?
《その通りです》
だよな。
ならちょっと試してみるか。
俺は周りのマナに集中して共鳴させていく。
するとアクアの周りがキラキラと輝きだした。
よし。うまく魔法にマナを込められたぞ。
もう一回試してみよう。
「ちょっとちょっと! また飲む気? 気分悪くしちゃうよ?」
アクアに手を伸ばす俺をマリーは慌てて止めようとするが、それを無視して俺はもう一度飲んでみることにした。
「・・・おいしい」
「え?」
「すごくおいしいよ!」
「うそでしょ?」
俺の声を聞いたマリーが不思議そうな顔をしたが、美味しそうに魔法の水を飲む俺の姿を見て自分でも試してみることにしたようだ。
恐る恐る手をアクアに伸ばし、片手で掬い取ってから口へ運ぶ。
「なにこれ!? おいしいよ!」
本当に驚いたようで、水を飲んだマリーの目が大きく開かれている。
やっぱりマナを魔法込めて共鳴させると普段とは違う効果が出るようだ。
《はい。込めるマナの量とイメージで魔法の効果は大きく変わります》
効果を変えることも出来るのか?
《可能です。マナ共鳴はマスターの意思によるものなので、イメージ通りの現象を引き起こす力をもっています》
なるほど。
今はちょっと魔法威力や効果を強化することしかできないけど、いろいろ工夫できそうだな。
これからの課題にするか。
「ねぇ、何でルイの水はこんなに美味しいの?」
「え?」
しまった!
これどうやって言い訳しよう・・・
それから俺はマリーの問にひたすら誤魔化しながら答え、結局最後はマリーが俺を天才だからと結論付け、それ以上質問することもなかった。
ここはマリーが親バカであることを感謝しよう。
その後俺とマリーは魔法訓練を再開し、ひたすら生活魔法を繰り返し練習した。
前世で体験できない魔法は俺には新鮮で楽しく、時間もあっという間に過ぎていく。
そしてお昼になる頃には俺は全ての生活魔法を無詠唱で発動できるようになっていた。
やっぱ魔法って最高!
お読み頂き有難うございます。
次話は明日投稿します。