プロローグ
こんなはずじゃなかった。
最近は常にそう思いながら日々を過ごしている。
中学までは何事も順調だった。
父は小さいながらも会社を経営しており、母は周りが認める美人、誰もが羨む家庭で俺は育った。
成績は良く、スポーツ神経も抜群。
その結果、常に学校では人気者で、モテた。
当時は毎日が楽しく、充実していたと思う。
変化が起きたのは高校に入って間もない時だった。
父の会社の経営が悪化し、冗談のように借金が膨れ上がり、結果倒産した。
それまで当たり前だった暮らしが一変し、アパート暮らしに変わった。
思春期だった俺には生活の急変に順応できずにグレ、両親ともよく揉めた。
ダラダラと毎日を過ごしていたら成績も底辺に落ち着き、気が付けば高校生活は終わっていた。
父は事業に失敗しても腐らず、母の支えもあって、今はそれなりの会社で管理職にまで出世した。
一方、俺は家から出れなくなった。
引きこもりである。
でも両親もこんな俺に対しても罪悪感を覚えてか文句は一切言わない。
俺はそれに甘え、毎日PCに向かい合い、ゲームやラノベ小説に浸った。
ただの現実逃避である。
こんなはずじゃなかった。
成績優秀、スポーツ万能だった俺は、普通に大学生活を送りながら彼女を作り、そして大手会社に就職して結婚する。
少なくとも平均以上の生活が送れるはずだった。
なのに今の俺は肥満体型で、人付き合いはネットのみ。
両親のスネをかじりながら今もPCに向かい合っている。
今はもう両親のことを悪く思っていない。
今の状況は自分が招いた結果だということも理解している。
ただやり直すのにどこから始めれば良いのか考えることすらできなくなっているのだ。
後悔の念が重くのしかかる。
今までいくらでもやり直しはできたはずだ。
経営に失敗した父ですら新たなスタートを切ったのだ。
でも自分が思い描いていた姿と今の自分があまりにもかけ離れており、また精神的に未熟であった俺は思いはしても行動に移せないでいた。
「何やってんだ俺」
そんなつぶやきを残し、再びPC画面に映し出されているラノベを読み始める。
ラノベを読むのは好きだ。
どれも主人公が新たな人生を送り、しかも大半が新たな世界で大きな力を手に入れ、充実した日々を過ごす。
そんな主人公を自分に置き換え妄想することで現実を忘れる。
もし自分ならばどう行動を取っただろうかと考えることも楽しい。
きっと自分ならもっとうまくやれたはずだという変な自信もある。
「俺もこんな風にやり直したいな・・・」
《やり直せるよ》
え?
《だからやり直せると言ってるのじゃ》
は?
声?
《お主が望むならやり直すチャンスを与えると言っておる》
はあ?
ついに俺頭おかしくなったか?
《こっちじゃ、後ろを見よ》
声に従い後ろを振り向くと、そこには妙に大人びた可憐な少女が立っていた。
投稿しちゃった・・・
ど素人による投稿です。温かい目でお読みください。