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第8話「街を守る力!衛兵団、爆誕!」

 市場と産業が生まれ、村はもはや「街」と呼んでも差し支えないほどの活気を見せていた。

 しかし、人が増えれば、当然問題も増える。


「なんだとてめぇ! この傷薬が銀貨一枚だと? 足元見やがって!」

「ひぃ! ですが、これは王都から命がけで運んできたものでして……!」


 市場の一角で、冒険者の男が商人に掴みかかっていた。

 幸い、周りにいた別の冒険者たちが仲裁に入って事なきを得たが、このような小さな火種は、日に日に増えていた。


(……だよな。これだけ人が増えれば、ルールだけじゃなくて、それを守らせる“力”が必要になる)


 ゲームで言えば、街のNPC衛兵だ。彼らが巡回しているだけで、プレイヤーは安心感を覚える。


『ほう。いよいよ統治機構の整備か。お前の街づくりシミュレーションも、いよいよ本格的になってきたな』


 神様の面白がる声が、頭の中に響いた。


 ◇


 僕は村長や冒険者たちのリーダー、商人たちの代表を集めて宣言した。


「この街の治安を守るための組織――“衛兵団”を作る!」


 その言葉に、皆がざわめく。


「衛兵団、ですか?」

「俺たちみたいな流れ者を、誰がまとめるってんだ?」


 冒険者たちの不安はもっともだ。

 僕はニヤリと笑い、広場の外れを指さした。


「心配するな。まずは形から入るのが、僕のやり方なんでね。――創造クリエイト!」


 まばゆい光と共に、そこに現れたのは、石と木でできた堅牢な二階建ての建物だった。

 入口には『衛兵団詰所』と書かれた看板が掲げられている。


「建物が……!」

「おいおい、今度は砦みてえなもん作りやがったぞ!」


 僕はさらに、建物の前に整然と並んだ武器ラックと鎧スタンドを創造する。

 統一されたデザインの軽量な革鎧、手入れの行き届いたロングソードとスピア。


「衛兵団に参加する者には、この装備一式を無償で貸与する。さらに、活動に応じて給金も支払う。どうだ? 悪くない話だろ?」


 ◇


 僕の提案に、最初に名乗りを上げたのは、意外にも村の若者たちだった。

「俺、やります! この村は、俺たちの手で守りたい!」


 その姿に心を動かされたのか、冒険者たちの中からも腕に覚えのある者たちが、次々と志願してきた。

 リーダーには、最初にこの村を拠点にすると決めてくれた、大剣使いの男を任命した。


「いいか、お前たちの仕事は、この街の平和を守ることだ。住民や商人とのトラブルを仲裁し、危険な魔物が街に近づかないか監視する。そして何より、この最高の拠点ベースを、全員で守り抜くんだ!」


 僕の言葉に、即席の衛兵団員たちが「おお!」と雄叫びを上げた。

 彼らの顔には、ただのならず者ではない、「街を守る者」としての誇りが芽生え始めていた。


『ふっ……それっぽい演説しやがって。お前、本当にただのゲーマーか?』


 神様の茶々も、今日は心地よく聞こえる。


 ◇


 衛兵団が結成されてすぐ、その効果は現れた。

 市場でまた冒険者が騒ぎを起こした時、揃いの鎧を身に着けた衛兵たちが、すぐさま駆けつけたのだ。


「衛兵団だ! 街での揉め事は禁止されている! 話なら詰所で聞くぞ!」


 規律の取れた動きと、統一された装備。

 その姿には、ただの冒険者パーティにはない威圧感と説得力があった。

 騒ぎを起こした冒険者も、バツが悪そうに武器を収める。


 その様子を見ていた村人や商人たちから、ぱらぱらと拍手が起こった。

 衛兵団が、街の住人として認められた瞬間だった。


(よし、完璧だ。これで治安の問題はクリア。街の発展はさらに加速する)


 ◇


 夜、詰所の屋根から、僕はランタンの明かりで輝く街並みを眺めていた。

 市場の喧騒、酒場の笑い声、そして巡回する衛兵たちの姿。

 僕が創りたかった街の原型が、そこにはあった。


『ふん。統治、産業、軍事……。数日で国の基盤を作り上げるとはな。だが、これだけ目立てば、嫌でも気づく奴らが出てくるぞ』


 神様が、忠告とも取れる言葉を呟く。


「気づく奴ら?」


『ああ。この土地を治めている、お偉いさんたち……とかな』


 その言葉の意味を、僕はまだ知らなかった。

 だが、僕の街づくりが、新たなステージに進み始めたことだけは、確かなようだった。

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