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第7話「市場爆誕!商人と冒険者で村が都市に!」

 ダンジョンが公開されてから数日、村には街道から荷馬車を連ねた商人たちがひっきりなしに訪れるようになっていた。


「ここが噂の村か! 新しいダンジョン目当ての冒険者で溢れているとは聞いていたが、これほどの活気とは!」


 商人たちは目を輝かせているが、すぐに問題に直面する。活気はあるものの、商品を広げて取引をするための正式な場所がないのだ。


(冒険者がいて、物資がある。あとはそれを循環させる経済の心臓部……“市場”さえあれば、この村は爆発的に成長する!)


「――創造クリエイト!」


 僕は広場の中央で叫んだ。

 光が収まると、そこには雨風をしのげる屋根付きの巨大な市場と、商品を並べるための無数の屋台が出現していた。


「なっ……一瞬で市場が!?」


 商人たちが呆然とする中、僕はさらにいくつかの品物を創造して見せる。

 樽詰めのエール、見たこともない香辛料、長期保存が可能な干し肉。


「こ、こんな品々、王都でも滅多にお目にかかれるものじゃないぞ!」


 商人たちの興奮は最高潮に達した。しかし、僕は一人、静かに汗をかいていた。


(……まずいな。このまま僕が商品を供給し続けたら、僕一人でこの世界の物流を回すことになっちゃう。そんなの絶対に無理だ)


 その時、僕の思考を読んだかのように、神様の声が脳内にポップアップした。


『おい、ユウマ。お前、忘れていないか? その創造魔法は、あくまで“きっかけ”を与えるためのものだぞ』


「え、つまり……無限に生産し続けるのは……?」


『バカか。お前は一生アイテムを作り続けるだけの製造マシンになりたいのか? そんなことをしたら、この世界の経済も文化も育たん。お前の役目は、あくまで種火を与えることだ。その火を大きく燃やすのは、ここに住む人間たちの仕事だろうが』


(そりゃそうか!)

 神様の的確すぎる指摘に、僕は苦笑するしかなかった。


「なるほど……。僕は最初のきっかけを作る“導火線”ってことか」


 ◇


 理解が追いつくと、やるべきことは明確になった。

 僕は商人や村人たちが見守る前で、創造魔法のイメージを切り替える。


「――創造クリエイト!」


 僕の手のひらに現れたのは、完成品ではない。

 一握りの「小麦の種」、数本の「トウガラシの苗」、そして「ブドウの苗木」だった。


 それを見た村長や村人たちが、目を輝かせせる。


「こ、これは……! これなら、我々の畑で育てられるぞ!」


「その通り。種や苗なら僕が出せるけど、これを育てて、増やしていくのは皆さんの仕事です」


 僕がそう言うと、村人たちは力強く頷いた。

「わかった! やってやろうじゃないか! これなら、村全体の新しい仕事になる!」


 その様子を見ていた商人たちが、興奮気味に僕へ詰め寄ってくる。


「もし! もしこの香辛料や、あの素晴らしい酒がこの土地で量産できれば……我々が王都で売りさばけば、金貨がざっくざくですぞ!」


「ええ、量産は皆さんにお任せします。僕がやるのは、あくまで“初めの一つ”をこの世界に生み出すことだけですから」


 僕がそう断言すると、商人たちはゴクリと唾を飲んだ。

 その目は、僕を畏怖すべき存在として見ていた。


「……その御力、まさに神の奇跡……!」


(いや、だから神の友達なんだってば)


 僕が心の中でドヤ顔をすると、すかさず神様からのツッコミが飛んできた。


『心の声も全部聞こえてるからな』


「ひっ……! またやっちまった!」


 ◇


 その日の午後には、新しく生まれた市場で商人たちが持ち寄った品が売買され、その隣では村人たちが新しい畑を耕す準備を始めていた。

 この村に、初めて「経済」と「産業」が同時に生まれた瞬間だった。


(いいぞ、いいぞ! 僕が用意した“きっかけ”で、みんなが自分で考えて動き始めた! この村、最高の“神ゲー”になる予感がするぜ!)


『忘れるなよ、ユウマ。お前は導火線であって、火そのものじゃないからな』


「いやでも、僕がいなきゃ火すらつかないじゃないですか」


 僕が少し調子に乗って返すと、神様は心底楽しそうに言った。


『調子に乗るなよ。お前のプライベート、これからもずーっとストーカーし続けてやるからな』


「やめろぉ! 覗き見はやめてくれー!」


 僕の悲痛な叫びは、活気づく市場の喧騒に、あっけなくかき消された。

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