第25話 チート魔法
「ユウト、三層の情報助かった!」
「今度何か奢らせてくれ!」
「四層も期待しているからな!」
ギルドや街で冒険者を見かけるたびに、声をかけられるようになってきた。
「ああ、でもステータス以外は全部【白銀騎士団】からもらったものだ。礼ならシルバに言ってくれ」
その度にこう言うのだが、誰もシルバに礼を言う者はまだいない。
あそこまで啖呵を切った手前、話しかけづらい――ましてや、礼などもってのほかなのだろう。
中には俺を介して、シルバに相談する者まで現れた。俺はマネージャーじゃないっつーの。
まぁ、シルバの件は時間の問題。時が解決してくれるだろう。
ギルドでクエストを受注した俺たちはさっそく、迷宮に潜る。
最近、俺とアリスはずっと同じ部屋に篭っている。
その部屋とは四層の外れにある突き当りの部屋で、普通の者たちであれば行く価値がないと考える場所。むしろ、誰からも敬遠されるほどだ。
その最大の理由は、出現する魔物だ。
マントボアというイノシシ型の魔物で、特徴は猪突猛進。
それ故、躱せば勝手に壁にぶつかり、数秒間気絶する。そこを狙えばいいのだが、問題はその数。
避ける隙間がないほどの数で轢き殺してくるのだ。
突進の威力は、現在ナンバーワンの防御力を誇るシルバの目の色を変えさせるほど。
その噂が広まり、誰もここには来ない。来るのは俺たちか、全階層をきれいにマッピングをしなければ気が済まないやつくらい。
それは俺たちにとって好都合だった。
なぜなら一番おいしい狩場を独占できるから。
誰もが嫌がるこの部屋には一つだけ必勝法がある。
それがこれだ。
「《ライトニングウォール》!」
俺たちを目掛けて突進してくるマントボアたちが、雷の壁すら恐れず突っ込んでくるのだ。
最初のうちは次々と《ライトニングウォール》に触れ、感電したマントボアたちを、アリサと一緒に剣でトドメをさしていたのだが、今はもう剣すら必要ない。
《ライトニングウォール》に触れただけで淡いエフェクトを残し、消えていくのだ。
それだけではない。ユニークモンスターのブラッディボアも極稀に、一緒に出現する。
四層でユニークモンスターを見かけていないと、皆が口を揃えているので、きっとここにしか現れないのだろう。
MPがなくなったらマジックポーションで回復し、マジックポーションがなくなったら道具屋へ向かう。冒険者ギルドに寄れば、マントボア関連のクエストを一気に完了できる。
一石二鳥どころではなく三鳥、四鳥にもなるのだ。
誰だ? 《ライトニングウォール》が外れ魔法と言ったやつは?
そしてその結果がこれだ。
【名 前】ユウト
【ジョブ】雷鳴士(9/20)
【状 態】良好
【L V】20(8up)
【H P】288/288
【M P】515/515
【筋 力】123 (48up)(+20)
【敏 捷】144 (56up)
【魔 力】300 (128up)
【器 用】144 (56up)
【防 御】123 (48up)(+10)
【魔 防】173 (64up)(+5)
【適 性】火魔法F(9/12)・風魔法F(9/12)・水魔法F(9/12)・雷魔法E(9/10)
【重 量】85/123
【装 備】鉄の剣
【装 備】旅人の服
【アクティブスキル】
・《ライトニング》・《ライトニングウォール》
・《ファイア》
・《ウィンド》
・《ウォーター》
【パッシブスキル】
・《鑑定》
・《雷の加護》(9/20)
【名 前】アリサ
【ジョブ】剣士(12/15)
【状 態】良好
【L V】20(12up)
【H P】390/390
【M P】194/194
【筋 力】153 (84up)(+20)
【敏 捷】174 (96up)
【魔 力】85 (36up)
【器 用】174 (96up)
【防 御】132 (72up)(+10)
【魔 防】132 (72up) (+5)
【適 性】剣術D(2/10)
【重 量】60/153
【装 備】鉄の剣
【装 備】旅人の法衣
【アクティブスキル】
・《二連切り》・《スラッシュ》
【パッシブスキル】
・《索敵》
ちなみに言っておくと、現在のシルバのレベルは18らしい。
二次職になり、確実にレベルが上がりにくくなっている。
さらに気づいたのは、二次職でも、ジョブによってレベルアップする必要経験値が違う。
これは【白銀騎士団】でも起きている現象で、【騎士】のレベルは、土魔導士や水魔導士、僧侶よりも上がりづらいという。
ただ、ここで一つ困ったことが起きた。
アイテムだ。
運がいいのか、悪いのか分からないが、ユニークモンスターを倒しても【真理の書】しか出てこない。
二層、三層ではレアな装備が出たというのも聞いている。
そして、俺たちの頭を抱えさせている問題が、アイテムストレージを【真理の書】が逼迫しているのだ。
持てるアイテムは十個まで。しかし、俺とアリサのストレージを【真理の書】が、五枠ずつ奪ってしまっている。
最初は無料で譲って、ほかのプレイヤーに恩を着せようとも考えた。
しかし、俺たちと同じく【真理の書】が余って、商売をする者たちも多数いる。彼らにとって、俺たちが無料で譲ると商売の妨げとなり、逆に目をつけられてしまう可能性もある。
今はまだいないが、いつかきっと、代金だけむしり取って商品を渡さない輩は出てくるだろう。
だからこそ、【商人】が求められているのだが、【商人】のジョブに就いたプレイヤーは見当たらない。
ポーターを雇うという案もあったが、現実的にかなり厳しいということが判明。
それは、ポーターがまだ、ここの階層に来られる環境ではないからだ。
というのも、プレイヤーが同じボスと戦えるのは一度きり。その階層のボスを倒してしまうと、もう挑むことができない。
だから、彼らは自らの力でここまで来なければならない。
姫プやキャリーを排除しているのだ。
ただ、これに関してはやりようはある。例えば、臨時でパーティを組んで、今俺が戦っているような部屋で一緒にレベリングをするとかだ。
レベルさえ上がってしまえば、ボスも倒せるだろう。しかも、何人かで同時に挑んでもらえば、危険度は下がる。
しかし、これはまだ先の話。今は自分たちのことで手一杯。
だから、俺たちは別のやり方で、アイテムストレージの問題を解決しようとしている。
その近道が、この部屋でマントボアを狩り続けること。
そして、それがもうそろそろ達成されてようとしている。
ここは、アリサの言葉を借りるとしよう。
目指せ! 一国一城の主――!




