地獄のトレーニング開始!?
〜side プラ子〜
あーし、ずっとダルかった。小中イジメられてて、死にたくて、誰も知らない高校行ってデビューして、初めて仲間ができて、それからは仲間とテキトーに遊んでた。最初は刺激的で楽しかったのに、それが日常になって、すぐまた退屈になった。でも、そんな時出会ってしまった。フィットネス・ワールド・ジャパンの世界に!そこでは皆がキラキラで、綺麗で、強くて……!!
それであーしは決めたの。
超盛れてて、超強いオンナになるんだって。
私は家庭科室で昼食を食べていた。
「教室でご飯を食べるのは怖いんです。また何か陰口言われそうで……。」
そういった私に手練帝院先生は家庭科室を使わせてくれていたのだ。
ちなみに今日のメニューは鶏むね肉のインド風スパイス焼き、スパイスと肉汁をたっぷり吸わせた焼きブロッコリー、それから白ご飯だ。
「岡割!!体重計に…乗るな!!」
「え!?」
手練帝院先生は私に告げた。
相変わらず 腹筋、大胸筋、背筋……エトセトラ全ての筋肉たちも存在感も声も全部デカい。バァァァン!!!と言う効果音が聞こえそうなくらいだ。
「ど、どうしてですか?」
体重計に乗らないのは不安だ。乗ったら落ち込むくせに、今私が何キロなのか、わからないのは怖い。
「体重は水分量で簡単に増減する。塩分量、トレーニング後の炎症、睡眠時間、女性は……その、月経周期などで、簡単にだ。それに何より、毎日体重計に乗って一喜一憂することはストレスになり、自己肯定感を損なう。俺はそれが心配だ。つまり……
「つまり今、数字はお前の敵……ってコト♡♡♡」
唐突に、すぐ背後から女の子の声がして振り向いた。
そこには、ド派手なプラチナ・ゴールドの髪を腰まで伸ばした黒ギャルが立っていた!!!
「……!!!!???」
反射的に声にならない悲鳴が出て、ご飯を詰まらせそうになった。
ギャルは怖い。クラスで私に聞こえるように陰口をいうのは大抵ギャルだ。うちは校則が緩いからギャルは普通にいるが、ここまでのドが付くギャルはそういない。
「こら、プラ子!!オカワリが怯えてるだろう!あと、俺の台詞を取るな!!」
「え〜〜ごめん♡だってプロ先の話死ぬほど長いし〜〜。
あ、あーしもここの部員ね。プランクの桃子♡お前新入部員でしょ。」
「は、はい!岡割わん子と申します……!」
ツッコミどころが多すぎる。
そもそも怖くて顔が見られない。自然と目線が下がってしまう……と!!ぱっつんぱつんの上にテッカテカに黒光りする胸が目に入ってしまう!!視線をどこにやっていいのかわからない!!
「オカワリだっけ?目ぇ見て話しな〜〜?あとよろしくお願いしますくらい言えねーの?そんなんじゃ盛れねぇぞ」
「は、ハイ!よろしくお願いします……(盛れ……??)」
おずおずと目線を上げる。
あ……私が付けられなかったアイシャドウだ。
「てかお前、プランクも知らなそうな顔してんね〜〜。
しょうがねえな!!今日の放課後私が直々にバキバキにしごいてやんよ。いいっしょ?先生♡」
プラ子?先輩の胸ボタンがミシ……と不穏な音を立てる。怖い!
「フム……いいだろう。そろそろオカワリもトレーニングを始めるいい時期だ!!プラ子はプランクに関しては一流だからな、信じていいぞ!!」
「ええ〜〜〜〜〜!!??」
なんだか大変なことになってしまった。
私一体どうなっちゃうの!?ていうかプランクって何!?私死ぬ!?…などと考えているうちに、あっという間に放課後になっていた……。
「イチ!」
「「「「「「「イーーチ!!!!」」」」」」」
「ニ!」
「「「「「「「ニーーィ!!!!」」」」」」」
「サン!」
「「「「「「「サーーン!!!!」」」」」」」
こ、これがプランク……!!
辛い!辛すぎる!!何かいろんなところが痛い!!!
ヨガマットの上にうつ伏せて、肘を付きながら上体から足までを真っ直ぐにした状態で、私は内心悶えていた。
「オ"ラァオカワリ!!ケツ下げんな!!!」
何かの棒をパシンパシンしながらプラ子先輩が近づいてくる。怖い!!
不安になって手練帝院先生を見ると、満足げにウン、ウンと頷いている。
あ……これもうやるしかないやつだ。
「押忍ッ!プラ子先輩!!」
「馴れ馴れしいッ!!」
「すみませんでした桃子先…」
「その名で二度と呼ぶな✕すぞ」
「ヒッ……押忍!!!(理不尽!!!)」
「オカワリぃ……お前はプランク赤ちゃんだから30秒でいいぞ!てか……耐えろよ?
あーし嫌いなんだよね、“根性ない女”」
「ヒィィッ……!!押〜忍!!!!」
やだやだ怖い怖い怖い怖い……!!!
筋肉の限界と恐怖で物理的に震えが止まらない。これやらないと私死ぬんだ、これやらないと私死ぬんだ……!!!
「ニジュウハチ!!
ニジュウク!!
……サンジュウ!!!」
ドサッ!!!
30のカウントを聞くと同時にヨガマットに思い切り倒れ込んだ。
「ゔああああ!!!!」
私ってこんな悲鳴出るんだ……と思うような声が漏れ出る。
「アッハッハッハッハッハッ!!!!」
!?
プラ子先輩が笑っていた。
そしてなぜか、周りの部員たちが拍手していた。
「お前やるじゃん!!!!初回だし15秒持つかなってとこだったのに……お前一分耐えてるぞ、わん子♡」
「……え…??でも今30って……」
息も絶え絶えに返事をする。
「ほら、ウチの部の掛け声って独特だろ??だから30っつっても実質一分は掛かってんだよ笑」
「理不尽!!!」
流石に声に出てしまった。あの拍手、そういうことか……!!
「あっすみませんその……せ、先輩」
「もープラ子先輩でいいぞ!」
「プラ子先輩……ありがとうございます!!」
「よしよし、挨拶も完璧!盛れてんなわん子♡そんなお前にプレゼントだ♡」
プラ子先輩はスクールバッグから何かを ブチッと取って 私に渡した。
「これって……」
それはめちゃくちゃに可愛くギラギラにデコられた、制服のシャツにつけるリボンだった。
「ほら、あーし筋肉盛っちゃったから、リボンつけらんなくなっちゃって〜〜。5時間くらいかけてすげー可愛くデコったからもったいなくてスクバに着けてたんだけど、わん子にならあげてもいいかなって」
「いいんですか?そんな大事なもの…」
「い〜の!
わん子が納得するくらい盛れたら、それ着けな♡♡」
「プラ子先輩……ありがとうございます!!」
「ヨッシャ!!この調子でサイドプランク行くぞ!!」
「まだあるんですか〜〜〜!?!?」
「ったり前だろ!!ついてこいよ〜〜!!盛ってくぞ!わん子!!!」
「押忍!!!!」
燦然と輝く西陽の中、心なしか目に涙をためながら手練帝院はウンウンと頷くのだった。
(……いや、サイドプランクって何??)
あれから何週間経っただろう。トレーニングを重ね、正しい食事を摂る毎日が、厳しく、でも楽しく、目まぐるしく過ぎていった。
私は久々に全裸になって鏡を見た。
「く、くびれだ…!!!私に、くびれがある……!!!!」
生まれて初めて、私のウエストにくびれが出来ていた!!
やった……飛び跳ねたいくらい、嬉しい。
今なら、乗ってもいいかもしれない。
(岡割!体重計に…乗るな!!)
手練帝院先生、今なら大丈夫、ですよね……!!
おずおずと体重計に乗る。
「え………!?」
第三話に続く!!!!




