閑話 サウス・ヴァリュアブル
私はサウス・ヴァリュアブル。オスタン王国で外交大臣を務めている。
ヴァリュアブル公爵家は、元は宝石商で富を築いた商人であり、建国と共に伯爵として貴族の仲間入りをする。
そこから祖父の代までに公爵家まで成り上がっていた。
父は女好きで、私は愛妾から生まれた庶子だった。正妻や側室、本筋の兄達からは奴隷のように扱われ、居ないものとし、社交界へ顔を見せることも無かった。
13歳の年、長男がなにかの恨みで暗殺され、15歳の年、次男がギィートス連合国の革命戦争で亡くなった。
急遽ヴァリュアブル公爵家に籍を入れられ、後継者のお鉢が回ってきた私はその年2年遅れの士官学校入学を果たした。
皆に追いつこうと、資料室で勉強するうち常連となり、決まった定位置の椅子が開けられているほどであった。
そんな資料室で出会ったのは銀髪の美しい少女だった。
何度も目が会い、話し交流を重ねるうちに私達はお互いに惹かれていった。
私から婚約を申し込むも、家の事情か断られた。
だが、諦めきれない私は彼女のことを調べることにしたのだ。
結果、彼女は留学中の身であり、隣国リーデン共和国の貴族パルティア・ドゥーゲン伯爵令嬢だった。
その上、美しさからこの国の王太子の側室として婚約を申し込まれているというのだ。
彼女は社交界では「白鳥」と称される有名な美少女であったが、社交界に疎い私は彼女の噂を全く知らなかったのだ。
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最終的にこの恋は実り、私たちは結婚し待望の第一子を授かることとなった。
この頃になると、彼女は相変わらず少しお茶目で底抜けにやさしかったが妊娠のストレスからか、ふくよかになり始めた。
彼女への恋のような燃える恋慕は、落ち着き始め穏やかな親愛へと変化し始めた。
生まれた男の子はパルティア譲りの銀髪に、私譲りの真っ黒な瞳。2人で考え、リーム・ヴァリュアブルと名づけることとなった。
スペアとして、もうひとり跡継ぎを産めば安泰である。
第二子を授かったのは、リームが産まれてから2年後だった。
生まれたのは男の子。パルティアと似た色彩であり銀髪に少し青い翡翠色を持っていた。パルティアの祖父から、シェープ・ヴァリュアブルと名づけることとなった。
リームは、1歳になると既に言葉を話し始め、3歳になる頃にはハッキリと意思疎通ができる聡明な子だった。
4歳になると文字を覚え始め、5歳になると飛び抜けた頭の良さが目立ってきた。
リームは幼い頃からワガママで、パルティアの真逆のような苛烈な性格をしていた。
もっとも、5歳を過ぎると礼儀を覚え本音を隠すことを学び、7歳となり13歳で学ぶはずの、士官学校の内容すらも理解できるようになった。
その頃には二面性が目立ち始め、私達がその傲慢で身勝手な考えを矯正しようと叱るほど、リームの頭の良さを前に言いくるめられてしまうこととなる。
基本的に好奇心旺盛で少し傲慢な性格である。
が、なにに触れたのか、普段のリームはどこに行ったのか、顔から表情が抜け落ちる。
なにか考えているのか、難しい顔をし傲慢さは普段より5倍増し、冷血で何とも心がない人形のような一面を持っていた。
普段の性格か、冷血な性格か、あまりにも落差が激しく普段は演技であり、冷血な性格が本性なのか。と、私は悩み始めていた。
歳を経つ事により一層聡明になっていくリームは、その冷血な一面を見せることが少なくなって来ているのだ。
この時期を過ぎれば私はおそらく一生その冷血な一面に触れることが出来ないだろう。
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