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閑話 シェバルト・ダーテンダ

私はダーテンダ子爵家に生まれた、特に誰も期待されていない三男だった。


8歳の時に祝福の儀式で固有能力(オリジナルスキル)賜ったのは、運が良かったと言えるかもしれない。

私が賜った固有能力(オリジナルスキル)は《厳守の硬盾パンクチュアルプロテクト》約束や時間を真面目に厳守し、思いや行動が誠実である時、守ることに対して強靭な力を発揮することが出来るというものだった。


騎士には、騎士<中級騎士≦聖騎士<上級騎士など自らをアピールする箔付としてや、実力の正確な情報のため試験があり、それによって自らの収入や奉仕先も変わる。


士官学校を卒業した私は

恵まれた体格や優位な固有能力(オリジナルスキル)のおかげで上級騎士試験に合格し、ある程度安定した収入があるが、木念仏で無表情なせいか25歳を過ぎても結婚相手はなかなか決まらなかった。




王宮騎士として奉仕していた私は、特にやりがいのない仕事に飽き飽きしており、ヴァリュアブル公爵家の嫡男の専属護衛騎士を募集していると昔、世話になった上級貴族からまた耳に聞き、募集してみることにした。


もちろん採用条件は上級騎士。

給料は月金貨50枚と、世話係も兼ねているのか、相場よりかなり高く、王宮騎士の1.5倍はあった。

採用人数は5人で、どうやら金貨50枚は5人のうち1人選ばれる専属騎士のみで他の護衛騎士は金貨25枚であった。

これでも相場より十分高いのだから、公爵家はどれだけ裕福なのだろうか考えもつかない。




ヴァリュアブル公爵家の家令と予想される男が面接官をしており、私の他に20人ほどがこの護衛騎士の募集に応募してきたようだった。


嫡男の名前はリーム・ヴァリュアブルと言うらしく、現在5歳。聡明で4歳で既に文字を書けたと言うから末恐ろしい。基本的にワガママではあるが許容範囲で、弟と仲がいいというのが家令から説明された性格だった。



公爵家嫡男の、ワガママの許容範囲とは。まぁ随分期待できなそうである。

私は今まで平民から嫌われるような貴族の騎士もしてきた上、感情が出にくい…というより無表情なので、このお坊ちゃまがワガママであっても特に仕事を辞めるような気にはならないだろう。




多少ワガママであった方が、やりがいもあるというものだ。王宮騎士は壁に突っ立っているか、王宮で迷った文官やお貴族様の案内をしたり、訓練や鍛錬もあるにはあるが、基本形式美を意識する王宮騎士に、実践的な訓練を積みたいと考える私はあまり合わなかった。


無事護衛騎士枠で面接に合格した私は、同僚となる予定の護衛騎士達と選ばれた専属騎士と顔合わせをすることとなった。



ヴァリュアブル公爵家は、今まで奉仕した貴族の中で一番の大貴族であり、やはり屋敷も豪勢だった。王都にもう1件このサイズの屋敷を持っていると聞いた時は、下手すれば公爵家は王家と同等の金持ちではないかと、あそこがヒュんとなったものだ。




ヴァリュアブル公爵家の騎士団は上級騎士20名に、中級騎士50名、その他合計200名、各地の駐屯地にバラバラと在籍しているようだ。

ヴァリュアブル公爵家の皆様がいらっしゃる王都の屋敷に在籍している騎士は上級10名に中級20名と、その他20名の合計50名だ。

これだけ広い屋敷なのだから妥当ではある。



騎士団の駐屯地には、4名の騎士がおり、おそらく私以外の護衛騎士4名もこの中にいるのだろう。


「失礼します。私はヴァリュアブル公爵家嫡男リーム様の護衛騎士としてこちらに配属されました、シェバルト・ダーテンダと申します。」


「私も今日護衛騎士として配属されたわ。エンファーよ。平民だから、失礼なことしちゃうかもしれないけどよろしくね。」


「私は専属護衛騎士として配属された、モーチェ・ヴリタニアだ。こちらこそよろしく頼む。」


「私も本日護衛騎士として配属されました。ロベルトです。エンファーさんと同じく平民ですので、礼をかけてしまった場合はフォローしていただけると幸いです!」


茶髪で低身長、身軽そうな女性がエンファー。20代後半だろうか、私と同じくらいだろう。敬語を使わないことに、少し違和感を覚えるが、ここに来た時点で上級騎士、ということはかなり強い。気安く話せそうだ。


専属騎士として選ばれたモーチェは、鮮やかな赤髪に焼けた肌を持ち、ここら辺で珍しい。おそらく少し遠くの血が混じっているのだろう。性格は硬そうだが、美しい容姿であり170cmはある長身、さながら女騎士らしく好感が持てる。選ばれたのも納得だった。


ロベルトは金髪に茶色の瞳をした中肉中背の若い男だ。目がクリっとしていて犬のようだ。騎士にしては珍しくレイピアを使うようだ。腰に刺さったものは、鞘から見ても業物だろう。馴れ馴れしい感じもするがこれも彼の武器だろう。


「今日から在籍することとなった騎士は揃ったな。5人目の護衛騎士は本日は来ない。名はハベル・リーリス、共和国の騎士らしい。少し引き続きに、時間がかかるらしく今週末には来るそうだ。私の名前はキール・サムソン、ここでは副団長をしている。ハベルが到着し次第、リーム様と顔合わせを行うこととなる。護衛騎士は騎士団とは別組織として指揮系統には影響しないため、私のことは同僚として、接してくれ。これからよろしく頼む。」


「「「「よろしくお願いします!!」」」」


春の木漏れ日の元、爽やかな風が吹き抜ける。長年王宮騎士として働いてきた私の新たな門出だ。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







遅れて合流したハベル・リーリスは騎士にしては珍しく黒い長髪で、瞳は茶色だった。身長は私と同じくらい高く、身体は細かったが、しなやかな猫のような動きをする男だった。


性格はこの中で私と1番近いだろう。寡黙というわけではなく基本真面目だが、時々ふざけるのが好きなので、私よりロベルトと仲がいいようだった。


鎧を磨き、剣を持ち、マントをはおった私達は、本日初めてリーム様と顔合わせすることとなる。


リーム様と顔合わせをする前に、公爵夫人に挨拶をすることとなり、家令案内され公爵夫人の部屋をめざした。

始めて入る御家族が暮らす屋敷内は、異常なほど清潔で広く、キラキラとシャンデリアが輝く、子爵家三男には見慣れない光景だった。

これは本当にヴァリュアブル公爵家は王家より金持ちだろう。


「奥様、リーム様の護衛騎士の皆様が来られました。」


二階の角部屋に案内された私達は扉の向こうの声を聴いた。


「入って」


鈴のような声だ。

パルティア・ヴァリュアブルと言えば、10年前は社交界で有名な「白鳥」と呼ばれた美少女だった。輝くような白銀の髪に鮮やかな翡翠の瞳、小柄ながらもグラマーな体型で王子すらも虜にした程だ。

現に、ヴァリュアブル公爵は側室を設けていない。

開かれる扉にワキワキしながら扉を凝視する。


「皆さん初めましてね。私はパルティア・ヴァリュアブル。これから私の息子をお願いね。」


(……!?)



「はは!!かしこまりました。」




…さすがモーチェだ。私は公爵夫人のあまりの変わりように驚き、膝を立て頭を下げるので精一杯だった。

公爵夫人は昔の面影を残してはいるが、かなり大きくなっていた。


唖然としながら公爵夫人との挨拶を終えた私は、いよいよリーム様へ挨拶へ行くこととなった。


「リーム様、護衛騎士の方がいらっしゃいました。」


「入れ」


声変わり前の少年の声だ。まだ5歳というのだ、これは聡明という情報に間違いは無い。


扉を開けると、またしても唖然とした光景が拡がっていた。


これこそ、「白鳥」の息子だろう。

キラキラと銀に輝く細い髪は、目にかかる、普通より少し長めのカットだ。

キリリとした眉に、黒曜石のような真っ黒な瞳。まだふっくらとした頬は、すこし赤く染っており、唇はつやつやとしていて、少女と言われても違和感がない。というより少女のようだ。


そして膝の上に同じく銀髪の赤ん坊がリームに抱えられながらすやすやと眠っていた。


「ヴァリュアブル公爵家の兄弟は2人揃って天から舞い降りてきた天使のようだ」一一


どこかで聞いたその言葉に、今は内心で激しく頭を振っていた。


「初めまして、リーム様。私は専属騎士を拝命した、モーチェ・ヴリタニアと申します。これからよろしくお願いします。」

「却下だ。」


先制して挨拶をしたモーチェに、リームは不機嫌そうに否を下す。


「?」

「お前を私は専属騎士だとは認めない」

「…?」


モーチェはかなり困惑しているようだ。

噂以上に、かなりワガママだ。モーチェは不運だが、ここで専属騎士を外されても護衛騎士には残るだろう。


「おい。お前、そこのダークブラウンの男。」


「はい、なんでしょうか。」


(まずい…なにかとんでもない事を言われるんじゃ。)



「お前が私の専属騎士だ。」


「は、はいッ、拝命致しました!」





口角を釣りあげたリームは、それは様になっていた。

これがリーム・ヴァリュアブル公爵令息。

生まれてきた時から「貴族」に違いない。

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