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1 気づき


まだ趣味で書いている程度、何分未熟者ではありますが楽しんでいただけたら幸いです。



(2023/12/14 02:11:00)

 恋愛RPG『グランプロミス』


 剣の一族、ディンガー男爵家には、

 初代ディンガー男爵が王から賜った『笛』があった。しかし誰もが知らぬうちに『笛』はなりを潜め、単なる御伽噺と化していた。


 燃えるような赤い髪に、輝く黄金の瞳、ディンガー男爵家嫡男アーノルド・ディンガーは13歳となり士官学校へ通うこととなる。

そこで出会った仲間たちと共に、卒業後に探検者としてパーティを組んだアーノルドはルーキーとして異例の速さで昇進する。


 不自然なスタンピード、怪しい司教から救い出したのは人体実験の被害者プロミだった。

ピンクブロンドを持つ随分と小さい少女との出会いは、妖精教という犯罪組織と国をまたにかけた事件へと影響していく。




  本編 

 episode1「スタンピード」

 episode2「暗殺者ギルド」

 episode3「リーデン共和国妖精教会」

 episode4「オスタン王国妖精教会」

 episode5「エルフの霊具」


 外伝 士官学校

 episode1「校外演習」

 episode2「剣術大会」

 episode3「聖騎士試験」







 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







 …


 ……


 ………一体どうしてこんなにも眩しいのだ??







 ある時から意識を覚醒した。



「МВЕМНЙСЖММЕМЁИР」


「ЕИФЦОСРИЁРЙР」



 視界がぼやけてピントが合わない。

 どうやら体もどこか不備があるようだ。ふにゃふにゃとした動きで精一杯だ。


「ФёИИдИёМЕЕеЕ」



 女性と思わしき声が聞こえる。


 自らの名前も、今どういう状況なのかも分からない。

あまりにもできることがないため、逆に冷静だ。


ただの夢?いや違う。


 現実としか思えない空気感、声、匂い、感触。

 自らにこびり付いた「地球」という星の知識。


 個人に関する事だけ、ぼんやりとして忘れてしまっている……。




 そして今、目の前に「地球」の知識では理解出来ない生命体がいる。


 メイド服を着た茶髪の女性の頭のから狐のような耳が生えているのだ。

 いわゆる獣人。

人間と思われる霞んだ金髪の妙齢の女性が狐となにかを話している。



 しばらくしていて、1つ気づいたことがある。それは、恐らく狐は…「奴隷」ということだ。


 なぜって?首輪がついてるからだ。

 その上、首に魔法陣のような刺青が見える。


 これはファンタジー産の奴隷だろう。



「地球」の奴隷と言えば、劣悪な労働環境に罵られることなんてマシと思える暴力で虐げられている。

魔法陣なんて便利なものもない。

 だが、話しているところを見ている限り、虐められたりはしていない。蔑まれてもいないようだ。



 どうやらこれは記憶の中にある「異世界転生」と言うやつらしい。

 私は今、客観的に見ても大人と同レベルの思考ができているが、体は赤ん坊だ。

まぁ、奴隷がいるという幸福を受け取ろう。


 メイド服を着た女性がいて、奴隷がいる。

つまり、いいとこのお坊ちゃ…いやお嬢ちゃんかもしれないが!


 と・に・か・く!

 金銭的に恵まれた家庭に生まれ、大切にされているということだ。






 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 それからしばらくして私は、自らの名前と考えうる状況について理解した。


 私の個体名は「リーム」


 屋敷のランク的に…というかテンプレート的に250%貴族だと思う。

家名もありそうだが、私を囲む状況では名前を認識することで精一杯なのだ。


 誰だって赤ん坊をフルネームで呼ぶことなんてないだろう?つまりそういうことだ。


 普段は「リーム様」や、「お坊ちゃま」と呼ばれている。


 そしてこの目の前の狐は恐らく「ピーナ」

 たまに来る霞んだ金髪のおばさんは「カロリナ」


「ВМЁЕМЁЁ…で リーム様も ФЭиЭз …したねぇ。」

「ピーナ ЕГдЩзе… から ЫЪШбШ でしょう。」


いつも飽きないのだろうか、この2人は永遠に中身のない会話をしている。たぶん。、



 それは置いておいて、

つい最近発覚したそれはそれは重大な大事件。




 事の起こりは2日前だった。




 屋敷が騒がしいなと思ったら、どうやら偉い人が来たみたいだ。


 空気が変わった感じがする…

ピーナがやけに慌ててせっせと張り切っている間、私は赤ん坊らしく、ヨダレをすすり手をにぎにぎしていた。


 しばらくしてドダドタと足音が近ずいてくる。

いつも視界の片端に写っている、高級そうな自室の扉が開いたのがわかった。


 一体全体何がやってくるのだ


 入ってきたのは見慣れたカロリナではない、見知らぬ巨人である。


 三、四人ほど男たちが歩いてきて、おそらく護衛と思われる男からか、剣と金属の当たる音が聞こえた。


 カチャンカチャンとこちらに鋭い眼光を向けながら歩いてくる。


 恐怖である。怖い。恐い。自らが無力な赤ん坊なのが憎い!



「うぇっ…」


 私は思わず顔をクシャらせた。

 30代後半だろうか、金髪に近い茶髪のカイゼル髭を生やしたおっさんが

ニコニコしながらこちらに近ずいてきたのだ。


 彫りの深い西洋人のような顔にはめ込まれた真っ黒な瞳と目が合った。




(えッ?公爵……?)




 私は体をくねらせ泣き叫び、自らの状況の理解を拒んだ。



 そう。おっさんの顔は前世で見た事があるのだ。








『グランプロミス』


 田舎男爵家出身の主人公が、成長と共に仲間と出会い、最終的には冒険者となりパーティを組み、

国家転覆を狙う犯罪組織「妖精教」と戦うゲームである。


 この妖精教、ただの犯罪組織ではない。なんなら国家間で戦争を起こすほどの力を持つ。更に幹部たちは「魔妖具」と呼ばれるチート装備を持つ強敵なのだ。


 この《グランプロミス》を、転生前の私はかなり気に入っていたようだ。



 ちなみにこのおっさんと同じ特徴をしたキャラクターの名前は「公爵」


 個体名は出てきていない、なぜならストーリーに影響を及ぼさないモブキャラだからである。


 つまり「公爵」さんがニコニコしながら私を抱っこした時点で…





 私の個体名は「リーム・ヴァリュアブル」となる……

 そしてこの人物は、後にラスボスの右腕となり、episode4で異端審問官に拷問され処刑されるのだ。


 この世界には稀に教会の祝福の儀式にて能力(スキル)の他に、固有能力(オリジナルスキル)を発現することがある。


 100人に1人ほど、まぁ場合によっちゃあ無くてもいいような、しょうもないものもある。

 逆に有用な固有能力(オリジナルスキル)であればその得意な力を使ってほとんどのものが成功を収めるだろう。



 もちろんラスボスの右腕くんにも固有能力(オリジナルスキル)はある。


 その名も『傀儡人形(パペットドール)』である。


 能力は人形を操ること。ある程度思考能力のある傀儡人形を生み出すことも出来る。

魔力の使う量によって、外見の精巧さや機能の高さなどがある程度変わる。なかなかに強い。


 容姿端麗で頭脳明晰、しかし冷血で鉄仮面、それがリーム・ヴァリュアブルである。

 彼はその容姿からたいそう女性にモテたが…傲慢不遜で相手を全く寄せつけない。


 サブヒロインであるロータリア・ドベルト侯爵令嬢という婚約者もいた。


 ただし、

 処刑後主人公について行くか、ついて行かない場合はリームの弟と婚約し、ヴァリュアブル……伯爵家となった我が家に嫁ぐこととなる。




 自らのフルネームと自らのifワールドの未来を理解した。



 そして思った。




 前世、転生系を読んでいた私は思っていた。





 何故主人公は皆、性格がいいのか。





 2週目の人生で金持ちに生まれ変わって、好き勝手出来るのに何故しないのか。





 それに、奴隷がいるのだ。

 裏切られる可能性のない部下……最高じゃないか。


 奴隷以外身の回りに起きたくない。


 あわよくば身の程をわきまえた可愛い子と癒されたい。


 この王国の国教、ルース教は「魔女、妖精、死者の霊」を「邪悪」としている。


 主神は雄鶏の姿をした日の神。

 朝を象徴する鳴き声は「魔女の魔力を衰えさせ、妖精を驚かし、死者の霊を冥府へ送る」力があるそうだ。


 ルース教的にいきなり赤ん坊が喋りだしたり異常な発達を見せれば悪魔付きor妖精付きとして異端審問一択だろう。


 死亡フラグを盛大に前触れさせるような危険性を犯せるわけがない!!




 私はリーム・ヴァリュアブルとして生きる。


 赤ん坊の役すらも完璧にこなすのだ。






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