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第四十四話 行動

 食事を取り終わり、僕とリネットは椅子に腰掛けていた。

 ルイザさんは用事があるとかで何処かに行ってしまった。

 禁術書に関することだろうか。


「アルフ、これからどうするの?」

「う~ん、どうしようか」


 僕としてはエマと一度話をしたいが、彼女は話せる状況なのだろうか。

 そもそもどこにいるのかも知らない。

 

 どうしたものかと考えていると、玄関の扉が開く音がして、一人の女性が姿を現した。


「……アル」

「ソニア……」

 

 唐突な対面に、何を話せばいいのか分からなくなる。

 しばらくの間沈黙が続き、やがてソニアが口を開いた。


「エマは近くの教会で生活しているわ」


 エマ……生きてくれていたんだ。

 良かった。

 僕のせいで死んだりしなくて……本当に良かった。


「アルはこれからどうするの?」

「え、どうするって……」

「エマのことよ」

「それは……」


 エマと会ってあのことを謝りたい。

 でも、それがエマのためにならない気もする。

 エマはそもそも僕ともう会いたくないのかもしれないし。


「私はエマとアルを会わせたくない。理由は分かってるでしょ?」


 それもそうだろう。

 元々ソニアは正義感が強い。

 彼女からすれば殺人未遂の加害者と被害者を再び会わせるようなものだろう。


「正直、エマと会わないのが正解な気がする。でも、ここで会わないと一生後悔する気がする」


 これはただのわがままだ。

 でも、ここでそう言わないと駄目な気がした。


「そう、じゃあ好きにしたらいいんじゃない?」

「え? さっきまで僕とエマを会わせたくないって言ってなかった?」

「言ってたわね。実際にそう思っているし。でも、私はアルの気持ちも分かってあげたい」


 ソニア……なんてカッコいいんだ。


「それに、私はアルを信用してる」


 僕は過ちを犯したのに、それでも僕の味方をしてくれるのか。


「……ありがとう、ソニア」


 ソニアと出会えて本当に良かった。

 もう決心はついた。

 エマに会いに行こう。


「ところでアル。その隣の子は誰?」

「ああ、この子はリネット。奴隷なんだけど……訳あって一緒にいる。って、リネット?」


 リネットの方を見ると、項垂れたまま動かない。

 近くによると、スースーと声が聞こえてくる。

 この子、座ったまま寝てる?


「えっと……ソニア、リネットを僕の部屋で寝かせてくるよ。その後、教会に向かおうと思う」

「そう、それなら私が彼女をベッドに連れて行く。アルは教会にすぐ行った方がいいわ」

「ああ、ありがとう。行ってくる」


 そう言って僕はソニアとリネットを残して家を出た。





 僕の家からエマがいる教会まではそれなりの距離があり、たどり着く頃には周辺は暗くなっていた。

 町を歩いている間、魔族が現れたと書かれている張り紙を見つけた。

 僕と一緒に以前戦った獣人族のジャレッドの似顔絵が貼り出されていたが、正直あまり似ていない気がする。

 一番の特徴であるツノはすでに髪に隠れるほど短くなっており、魔族だと気づかれることはないと思うが、一応フードを深く被りながら移動をした。


 たどり着いた場所には、教会以外にも建物があるようだ。

 外から見ると教会の一部の部屋は明かりが消えていたが、全体的にまだ明かりがあった。

 こっそり侵入してエマに会うことも考えたが、面倒事になるのは嫌だな。

 ここは正々堂々エマに会いたいと言うべきか?

 ……よし、決めた。


 教会の正面にあるドアを開き、中に入っていく。


「すみません。誰かいますか?」


 中から人の声はしない。

 試しに扉を開けると、そこには誰もいなかった。

 それにしてもこの教会は大きい。

 夜で人がいないせいか、余計に広く感じる。

 

「こんな時間に何かご用ですか?」


 突然後ろから声をかけられて振り返ると、そこには一人の男が立っていた。


「あなたは?」

「私はアイザック・マルコヴィック。この教会の司教です」


 見た目はおっとりしたおじさんといった感じだろうか。

 まさかいきなり司教様と出会ってしまうとは。


「おや、君は……ここに入っていい存在なのですか?」

「え?」


 どういう意味だ?

 いや、今は言うべきことがある。


「あの、司教様はエマという少女をご存知ですか?」

「エマ……ああ、聖女様のことですね」


 聖女様?

 そんな名前で呼ばれているのか?


「僕、エマに会いに来たのですが」

「ほう、聖女様のご友人ですか?」

「まあ友人というか、仲間なので」

「……もしかして、聖女様を説得して連れ去るつもりですか?」

「え? それは……」


 どうなんだろう。

 確かにまたエマと一緒に冒険者として活動したいと考えたりもした。

 でも、そのあたりはエマ次第な気がする。


「どうなるかは分かりません」

「そうですか……聖女様は今は別の建物にいます。扉から出て左手にある建物です」

「僕が会ってもいいんですか?」

「話をする分には構いません。それからどうするかは聖女様が決めることですから」


 そう言って司教様はどこかに行ってしまった。

 なんとも掴みどころのない人だったな。

 教会から出て左手の建物に向かう。

 この建物には部屋がいくつもある。

 ここは宿舎に近い施設なのだろうか。

 

 建物に入って廊下を進むと、"エマ・デルーカ"と書かれている看板が扉にかけられている部屋があった。

 ついにここまで来た。

 これから僕はエマと話すんだ。

 部屋に明かりはついていないようだが、まだ起きているのだろうか。

 ……正直、話すのが怖い。

 もしかしたら、僕はエマに拒絶されるかもしれない。

 だが、もうここまで来てしまったんだ。

 僕は勇気を振り絞って扉をノックした。


「……どちら様ですか?」

「エマ……僕だ」

「アルフ……さん?」


 久しぶりの声に僕は少しの懐かしさを感じた。

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