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第四十二話 エマ2

エマ視点


 酒場の一件以来、ソニアさんとも仲良くなることができました。

 ソニアさんが恋愛を知らないと聞いてびっくりしましたが、中々楽しく話せました。

 今日はアルフさんも入れて三人で魔獣討伐をします。

 私は非力で魔獣と闘うことなんてできないので、もしものときは治癒魔術でサポートしようと思っています。


 冒険者ギルドで依頼の手続きを終えて森の方向に向かっているときでした。

 私はとある洋服屋さんに展示されているドレスに目を奪われてしまいました。

 いつかこんなドレスを着て、アルフさんと一緒にディナーとかしてみたいです。


「……エマ、何やってるの?」


 アルフさんの声で我に返りました。

 こんな妄想をしている時ではありませんね。

 今は魔獣討伐に集中しましょう。


 魔獣討伐を終えて、魔獣の素材をアルフさんが回収しています。

 結局、私はほとんど何もできませんでした。

 魔獣がいた痕跡があった洞窟は(にお)いが酷くて、すぐに気持ち悪くなってしまい、そのせいでアルフさんやエマさんに迷惑をかけてしまいました。


 アルフさんとソニアさんはすごいです。

 アルフさんが魔獣と戦っているときは、詠唱をせずに魔術を発動しているように見えました。

 きっと凄腕の魔術師なのでしょう。

 カッコいいです。


 魔獣討伐の後に変な人達に会ったのですが、ソニアさんがダレルと名乗る男の人と互角に渡り合っていました。

 凄すぎます。

 ちなみにその人達から離れて森を出るとき、私は怖くて動けなかったのですがアルフさんにお姫様抱っこをしてもらいました。

 人生で一番幸せでした。


 その後も色々ありました。

 アルフさんがSランク冒険者を倒しちゃうこともありました。

 アルフさんはいつも優しいですし、どんどん好きになっていく気がします。

 でも、そんな気持ちが()らぐのは突然でした。


 ある日、私達三人は冒険者ギルドの依頼で首都の見回りをしていました。

 ソニアさんと一度別れ、アルフさんと二人で行動していたんです。

 初めは暗い道をアルフさんと二人きりで歩くことができて少し嬉しかったんです。

 でも、それが続くことはありませんでした。


 首都内で突然魔獣が発生して大変なことになったのです。

 私達二人は町の人を守るために急いで行動します。

 体力のない私はアルフさんの足を引っ張っているようで嫌でした。

 でもこんなことはいつものことです。

 アルフさんやソニアさんを手助けするために、一つの道具を買っていました。

 この道具は使い切りで、一瞬だけ強い光を放って敵を怯ませることができます。

 結局使うタイミングはなかったのですが。


 アルフさんが魔獣を倒すと、黒いローブを着た男が来ました。

 アルフさんとローブの男が何かを話しています。


「……お前は何者だ?」

「おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名前はジャレッド・テイラー。まあ、いわゆる獣人族という奴だ」


 ……え、獣人族?

 それって魔族で、人族の敵のはず。

 

 男がフードを取ると、そこには獣の顔がありました。


 ……怖い。

 すぐに逃げ出したい。

 

 アルフさんが何かを言っていますが、何も聞こえてきません。

 なぜアルフさんは、魔族の前で平然としているのでしょう。

 私は立っているのがやっとです。


 気付けば二人の戦いが始まっていました。

 剣の動きが速くて、目でも追いつけません。


「お前……もしかして、魔人か?」


 え……魔人?


「ああ、そうだ」


 アルフさんが?

 あんなに優しかったのに?

 …………怖い。


 足がすくんでその場に座り込んでしまいました。

 


 アルフさんが…………魔人?

 怖い。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


「エマ! 大丈夫!?」


 魔人が……近づいてきて……


「やだっ!! 来ないで!!」


 あれ? 

 私、アルフさんの手を払って……

 私…………今…………仲間を…………アルフさんを…………裏切って…………


 気付けば戦いは終わっていて、獣人の人はどこかに行ってしまいました。

 アルフさんがこちらに向かって歩いてきます。


「あの……アルフさん?」


 その姿はいつもと違っていて、頭には二本の角、腰には長い尻尾がありました。

 裏切ったことを謝らないと。

 今のアルフさんは怖いですが、いつもはあんなに優しいんです。

 きっと、いつものように接してくれるはずです。


「ごめん……なさい……私……」


 あれ、私、体が浮いて。


「ぐ……ぐる…しい……」


 アルフさんの……手が……私の……首に……


「ごめ……なさい……ごめ…………なさい…………」


 私…………間違えた…………のかな?


「…………め…………さ…………」


 そして私は意識を手放しました。





 ベッドの上で最初に目を覚ましてから何日か経ったでしょうか。

 今日も教会にある個人部屋のベッドで横になっていました。

 すぐ隣にはソニアさんが椅子に座っています。


「食事をお持ちしました。ごゆっくりお召し上がりください」


 白いローブの男がベッドの横の小さなテーブルに料理を置いて部屋を出ていきました。


「エマ、体はどう?」

「はい! すっかり良くなりました!」


 手も足も問題なく動かすことができます。

 これなら、近いうちにベッドの生活も終わりそうです。


「それなら良かった」


 ソニアさんは優しさからなのか、それとも必要性を感じていないからなのか、ベッドで目が覚めてから何かを聞いてくることはありませんでした。


「ご飯はしっかり食べるのよ」

「もちろんです!」


 ソニアさんの言葉に思わず、お母さんがいたらこんな感じなのかなあと思ってしまいました。


「それじゃあ私は町の見回りをするわ」


 魔獣の騒動以降、ソニアさんはいつも怪しい人がいないか目を光らせているようです。


「頑張ってください!」

「ありがとう」

 

 その言葉を最後に、ソニアさんは部屋を出ていってしまいました。


 しばらくして、白い髪を生やした人が入ってきました。

 年齢は50代くらいでしょうか。

 私はこの人を知っています。


「司教様……」

「聖女様。考えはお決まりですか?」

「はい」


 これからどうするか、それはすでに自分の中で決めてあります。


「またこの教会で働きます」

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