第四十話 ジェイクとの再会
僕とジェイクは向かい合う形で席についていた。
リネットは僕の隣だ。
僕とリネットの食事は既にテーブルに置かれており、食事を始めていた。
「久しぶりだな、アルフ。あのダンジョンぶりかな」
「そうですね。お久しぶりです」
ジェイクはダンジョンで行動を共にしていた時は茶色い髪を短くしていたが、今はその髪が伸ばしっぱなしにされている。
だから最初見たときにジェイクだと気付かなかったんだ。
「ああ、最近はどんな感じなんだ?」
「最近……ですか。今は色々あって、ちょっと面倒なことになっているんですが、僕も冒険者になりましたよ」
「そうか……それは良かった」
心なしかジェイクが前より落ち着いている気がする。
「ジェイクさんは最近は何やってたんですか?」
「俺は、まだ冒険者をやっているよ。と言ってもソロでだけどな」
「あれ? 他のメンバーはどうしたんですか?」
アーロンは死んでしまったが、確かフィオナとルーファスがいたはずだ。
「ルーファスは知らないが、フィオナは別の国の魔術学園に行っている」
魔術学園?
そんなものがあるのか。
「元々俺達のパーティーはアーロンありきのパーティーだったからな。あいつが死んで、結局パーティーを解散することになっちまった。まあでも不仲のまま終わった訳では無いからそこは良かったな」
ジェイクの話を聞きながら食事を進める。
「なあ、アルフ」
「なんですか?」
「まさかとは思っていたが、お前なんだろ? 魔族って言うのは」
あ、これはヤバい。
急いでトイレに駆け込む。
「う、ゔぉぇっ」
ああ、吐いてしまった。
キツイな……
……もう、ジェイクと話したくない。
ずっと一人でいたい。
なんでこうなったんだろう。
もう、嫌だな。
ずっとトイレにいようかな。
でも、リネットをそのままにしておくことはできないな。
そろそろ行かないと。
とりあえずトイレを出よう。
そして、自分の席に戻ろう。
「あ、アルフ……」
ジェイクがこちらを見てくる。
「すまなかった。お前の気持ちを考えずに発言しちまった」
「ああ、大丈夫です」
大丈夫じゃないが。
とりあえず自分の席に座った。
リネットは相変わらず無我夢中に自分の飯を食べている。
「本当にすまなかった!!」
ジェイクが頭を下げてくる。
「え、いやだから大丈夫ですから」
「俺が謝ってるのはダンジョンのことだ」
ダンジョンのこと?
「俺のせいで、アルフには辛い思いをさせちまった。あの時、俺はずっとアルフを助けるって言うべきだったんだ」
ああ、確か、魔物ともう一度出会ったら俺達はダンジョンから出る、みたいなことを言っていたな。
あのことか。
「大丈夫ですよ。ソニアも助けることができましたから」
「そうか。本当に凄いな、アルフは」
「……僕はそんなに凄くありませんよ」
「いいや、凄いよお前は」
そんなことないのに。
「アルフはとても強いじゃないか」
それは……僕が魔族だからか?
なんだかまた気持ち悪くなってきた。
「ジェイクさん……僕は、自分の力で、仲間を殺そうとしたんです」
「……それは、良くないな」
嫌な記憶が蘇ってくる。
なぜ彼に話しているんだろう。
彼は関係ないのに。
「いや……もしかしたら殺してしまったのかもしれない」
思い出したくない。
でも、なぜか話してしまう。
「僕は……こんな力……いらなかった!」
これが自分の本心なのか、前から思っていたのかよく分からない。
ただ、今だけは、そう思ってしまった。
「でも、その力でソニアって子を助けたんじゃないのか?」
確かにそうだ。
僕が魔族じゃなかったら、多分ソニアを助けることは出来なかった。
「でも、ソニアを助けても! 他の仲間を殺すんじゃ意味がないじゃないですか!!」
「……いいや、意味はある。そもそも、冒険者っていうのはそういうもんだろ?」
そう……なのか?
「あのな、冒険者っていうのはな、常に犠牲や代償がつきまとうんだよ。強くなるために強い敵と戦って味方が死ぬことだってあるし、民を犠牲にしながら敵を倒すことだってあるんだ」
犠牲や代償……か。
「なんの犠牲もなしに全てを守る超人はいないんだよ。自惚れんじゃねえ。単純にお前の力に代償があるだけだ。その代償をなくすためにお前は努力するべきなんだよ」
僕は……自惚れていたのか。
確かに、そうだよな。
あの力が無ければ、ジャレッドに殺されてたんだろうな。
なんだか少しスッキリした感じがする。
「……ジェイクさん、ありがとうございます」
「お前はまだ冒険者としてひよっ子ってことさ。俺が言うのもなんだが、先輩冒険者に相談することも大事だぞ。意外に人生経験は豊富だからな」
やっぱり、ジェイクは凄いな。
僕なんかより、ずっと冒険者だ。
「言いたいことも言ったし、俺はここを出るよ。本当は謝るだけのつもりだったんだがな。まあとりあえず、俺はいつでもアルフの味方だからな。またいつか会おうぜ」
そう言ってジェイクが席を立つ。
こんな頼もしい冒険者、他にいるだろうか。
ジェイクが手を振って店を出る間、僕はずっと頭を下げていた。
ジェイクが店を出ていくと、リネットが袖を掴んできた。
「ねえ、アルフ。食べないの?」
リネットが俺の食べかけを食べたそうにジッと見てくる。
「ああ、全部あげるよ」
そう言ってリネットの頭を撫でる。
「えへへ……ありがとう」
そう言ってもぐもぐと食べ始めた。
多分、彼女は食べ物に目がないな。
僕の気持ちが完全に前向きになった訳では無いが、少し良くなった気がする。
もうちょっと頑張ろうかな。




