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第三十四話 魔獣の出現

 あ悪夢というものは、突然訪れる。

 悪夢に前兆(ぜんちょう)というものはない。

 たとえ隠れて牙を()いでいたとしても、誰にも気づかれなければ前兆(ぜんちょう)にはなり得ない。



「だいぶ準備が整ったようだな」

「はい、いつでも解放する準備はできています」


 そう話すのは黒いローブの二人の男だ。

 敬語で話す男は平凡な顔つきである。

 ため口で話す男も平凡な顔つきであったが、特徴的なのは右側に大きく裂けたような跡がある口元だろうか。

 黒いローブをまとっていることも相まって、その男の不気味さを一層(かも)し出している。


「これがあれば計画も上手く行きそうだ」

「はい、計画を成し遂げましょう」

「ああ、やっと、やっとだ! こんなに時間をかけて、強力な冒険者の対策もしっかりしてきた! 最近は目をつけられているようだが、まだ誰も真の目的に気づいていない! これさえ上手く行けば、確実に私達は王国を支配できるはずだ!」


 口の裂けた男はククククと笑い始める。

 そのとき、二人の男に向かってまた二人、男が歩いてきた。

 ダレルと黒いローブをまとった巨大な男だ。


「やっと計画が終わるのか」


 ダレルが言った。


「ああ、そうだ。お前の野望も達成されるぞ!その代わり、ちゃんと働けよ?」

「心配せずとも十分な働きはするさ。安心しな」


 巨大な男がぶっきらぼうに言う。


「俺は好きにさせてもらうぜ」

「好きにしろ。だが、やり過ぎるなよ。お前はやっかいごとを持ってきがちだ」

「まあ、すべて何とかなってるじゃねえか」

「それは結果論だ!! お前より強い奴が現れたらどうする!!」

「そんなやつがいるといいんだがな」


 巨大な男はどこか余裕そうな雰囲気があった。



 悪夢の被害者は何が起こったか分からず、ただ受け入れるしかない。

 ただひたすら、いずれ来るときを待つ。

 血に()えた獣達は日陰で牙を研ぎ続け、今、その牙が脅威を向こうとしていた。





「ずっと見回りしてますけど、怪しい人あんまりいないですね」

「うん、初日のときだけだね」


 アルフ、ソニア、エマの三人は夜の暗い道を歩いていた。

 今日はあいにくの雨で視界が悪い。


 数日間見回りを続けているが、エマの言うとおり、特に不審な人物は見かけていない。


「何か、嫌な感じ」

「そう? ブラックヘルを見かけないのは良いことなんじゃない?」

「見かけないってことは、私達があいつらのたくらみに気付けていないってことよ」


 確かに、ブラックヘルは確実に何かをやらかしてくる気はする。

 大事になる前に鎮圧(ちんあつ)できるといいのだが。

 そう考えていると、ソニアがいきなりその場に立ち止まる。


「……アル、エマを任せる」


 そう言ってソニアが走ってどこかに行ってしまった。


「あの、ソニアさんはどこに行ったんですか?」

「えっと……分かんない。とりあえず二人で見回り続ける?」

「えっはっはいっ!! 続けます!!」


 やけにエマがうきうきしている。

 別に何か楽しいことをやるわけじゃないんだけど。

 とりあえず路地裏を二人でまっすぐ進む。


「あの……こうして二人で話すことほとんど無かったですよね」

「そういえばそうだね。いつもソニアと三人だったね」


 ソニアと二人になることは結構あるんだが。


「私、ずっとアルフさんと二人で話したいなって思ってたんですよ」

「え、そうだったんだ」


 知らなかった。

 今思えば、意外と僕は彼女のことをあまり知らないのかもしれない。


「あの……ずっと気になっていたのですが、アルフさんの魔術ってどうなっているんですか? 確か詠唱なしで魔法陣も出てませんでしたよね?」


 そう言えばまだエマに自分が魔族だということを言っていなかった。

 エマも僕達の仲間だ。

 言っても問題ないだろう。


「エマ、ずっと言っていなかったけど、実は僕」


 その時だった。

 遠くから魔獣の鳴き声のような音が聞こえてきた。


「アルフさん! 今のって……!」

「ああ、大変なことになっているかもしれない。すぐ行こう!」


 エマと共に音のした方向に走り出す。

 耳を澄ますと、人の声のようなものも聞こえてくる。

 

「あの、アルフさん! 前にブラックヘルに会ったとき、あの人達魔獣を捕まえていませんでした!? もしかして、その魔獣が暴れているのでは!?」

「うん! その可能性が高い、かも!」


 とりあえず音のした方向にたどり着かなければ何も分からない。

 他の冒険者も見回りをしているとはいえ、一般人が被害を受けてる可能性を考えるとあまり余裕はない。


「はあ、はあ、はあ、はあ」

「エマ、大丈夫?」

「はい、まだ、走れます!」

「よし! ついてきてね!」


 こうしてしばらく走っていると、逃げ惑う人々が見え、魔獣の姿が見えてきた。


「エマ、あれ!」

「はい! 冒険者らしき人も、います!」


 魔獣と戦っているのだろう。

 既にボロボロになっている。

 すぐさま冒険者の男に加勢する。


「大丈夫ですか!?」

「お、お前は、イーストのエマちゃんと謎の男じゃねえか! ソニアちゃんはいないのか?」


 イーストとは僕達のパーティー名、ストロングイーターの略である。

 というか謎の男ってなんだ。

 なぜ僕だけ名前が知られてないんだ。


「ソニアは今はいません! 魔獣は僕達

が相手をします!」

「お前らだけで大丈夫か!?」

「はい、なんとかします! あなたは住民の誘導をお願いします!」

「分かった!」


 そう言って冒険者の男はこの場から抜け出す。

 目の前には今にも攻撃してきそうな魔獣がいる。

 巨大な狼の魔獣だ。

 前に戦ったことのある狼の魔獣よりも大きい。


「アルフさん、もしものときはイーストと言うので、その時は目を瞑ってください」

「え? それはどういうこと?」

「一瞬だけ相手を怯ませられると思います!」

「それは頼もしいな」


 そう言って僕は剣を魔獣に向ける。

 エマは戦闘が苦手で守らなければいけない存在だが、治癒魔術が使えるということもあってか、近くに居るだけで安心感がある。

 エマが仲間になってくれて良かった。


「グルルルルルル」


 向こうはもう待ってくれなさそうだ。

 魔獣との戦闘では先に攻撃したほうが有利な気がする。

 すぐさま魔獣に手を向け、魔法で風の球を放つ。

 風の球は見えにくいはずだが、何かを感じ取ったのか、上手く避けられてしまう。

 すぐさま剣を持って魔獣に向かって走り出す。


「ガアアアア!!」

「ぐっ!」


 魔獣の牙を剣で防ぐ。

 魔獣が剣を噛み砕かんとしているうちに、魔獣の腹に蹴りを入れる。


「はあっ!!」


 怯んだ魔獣にすぐさま剣を振り、魔獣の喉を深く掻っ切った。


「アルフさん! 大丈夫ですか!」

「うん、なんとかなった」


 少し危ないところもあるが、この程度の魔獣なら安定して倒せるようになってきた。

 自分が強くなっているのを感じる。


「ほお~、お前、中々やるじゃねえか」

「誰だっ!!」


 声のした方向に剣を向けると、そこには黒いローブをまとった巨大な男がいた。

 フードを深く被っており、顔は見えない。


「お前は……ブラックヘルか!」

「まあ……そうだな。いや、そんなことはどうでもいいんだ。俺と戦おうぜ」


 すると突然、ローブの男から圧のようなものを感じ始めた。

 こいつは……ヤバい。

 僕が……戦うのか。

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