第二十七話 ルイザと王城
賑わう人々の間を通り抜け、ただひたすらに歩みを進める。
まだ午前中だというのに随分と賑やかだ。
向かう先は既に決まっている。
王城だ。
しばらく進むと、やがて巨大な城が見えてくる。
「そこで止まれ!」
城に入ろうとすると門番の騎士に呼び止められる。
「城になにか用か?」
「王と謁見がしたい」
「王は今は忙しい。お引き取り願おう」
さすがに急に来て王に会うことはできないか。
仕方なく、懐に入れていた冒険者カードを門番に提示する。
だいぶ昔に使っていたものだ。
「これは!? 少々お待ちを」
門番は冒険者カードを見るとすぐに返し、城内へと入って行った。
しばらくして、門番が戻ってくる。
「王は忙しく、すぐに謁見することはできないが、カンドル公爵が話をしたいとのことだ」
「分かった。じゃあカンドル公爵に会わせてくれ」
「それではあそこにいるメイドについていけ」
門番の指差す方向に一人の女性が立っている。
彼女のもとに向かう。
「君が連れて行ってくれるメイドか?」
「そうでございます」
「ではカンドル公爵のもとに連れて行ってくれ」
「承知いたしました。ご案内します」
メイドに連れられて城内へと入っていく。
城はしっかりと掃除が行き届いており、とてもきれいな庭が周囲を囲む。
城の入り口にたどり着くと、扉を開けて中に入っていく。
以前と変わらず広い廊下だが、メイドの歩みに迷いはない。
やがてとある部屋にたどり着くと、メイドがノックをする。
「カンドル様、お客様がお見えになりました」
「通してくれ」
その声を聞いてメイドがドアを離れる。
ドアを開け、部屋の中に入っていく。
部屋の中はいくつかの高級そうな装飾品が置かれており、中央には巨大な机の前で事務作業をしている男がいた。
「久しぶりだな、ソニア」
「ええ、久しぶり、カンドル」
軽く挨拶をかわす。
彼は、私が冒険者だった頃の知り合いだ。
「引きこもりのお前がここに来るなんて、何か急用か?」
「ちょっと問題が発生しててね」
カンドルはペンを止めてこちらを見据える。
「何があった?」
「国の北の方にダンジョンがあるでしょ? そこで根源悪……スロースが現れた」
「何!?」
カンドルは両手を机について立ち上がる。
かなり驚いているようだ。
「……何か確証はあるのか?」
「ええ、私がスロースと直接会ってる。彼の力をこの身で感じたな」
「くそっ! ただでさえ王国内で問題が起きているというのに!」
「カンドル、ことの重大さは分かってるよな?」
「当然だ!」
実際にこの問題はかなり重い。
根源悪が現れたということは、つまり世界が危険に晒されるということなのだから。
「よりにもよってこんな忙しい時期に……とにかく、急ぎで会議を開く必要があるな。恐らく会議は明日になる。その時はルイザも来てもらうぞ」
「ああ、分かった」
さすが公爵といったところか、この先やることをしっかりと見据えている。
「ところでカンドル。王国内で問題が起きているって言ってたが、それはどういうことだ?」
「ん? ああ、どうやらブラックヘルという組織が王国内にいるらしくてな。何やら怪しい行動をしているようだ」
「それは面倒な奴らだな。そのブラックヘルという組織の目的は分かっているのか?」
「それがほとんど何も分かってないんだ。目的が分かれば対策のしようがあるのだがな」
王国内も色々面倒そうだ。
アルフとソニアが変に関わらなければいいが。
「とにかく、今は根源悪についてだ。ルイザ、とりあえず知っていることを全て話してくれ」
「もちろん」
そう言ってソニアは椅子に座り、根源悪のこと、キメラのような魔物のことなど、様々なことをカンドルと話した。
〜
「ルイザ、そろそろ時間だ。帰るといい」
そう言われて窓越しに外を見ると、もう日が暮れている。
思ったより長時間話してしまった。
「じゃあ失礼するよ。明日もここに来ればいいんだろ?」
「ああ、よろしく頼む」
カンドルの声を最後に、扉を開いて廊下に出る。
頭で色々考えながら話したせいか、ここに来てどっと疲れが出てきた。
帰ってしっかり寝よう。
城の入り口に向かって歩いていると、一人の男が反対側から歩いてくる。
「君は………ルイザかな?」
アーバスット公爵だ。
彼はコンドルと同様に高位の貴族で、小太りの男だ。
彼とはほとんど話したことないが、一応挨拶程度はしておこう。
「お久しぶりです、アーバスット公爵」
「本当に久しぶりだな。何か用があったのか?」
「そうですね。面倒事がありまして。後ほどアーバスット公爵にも知らせが入ると思います」
「そ、そうか! じゃあ知らせを待つことにしよう!」
アーバスットは明らかにうろたえていた。
何かバレてはいけない隠し事でもあるのかもしれない。
この手の貴族は大方、自分の領土で何かしら問題を抱えているのだろう。
私にそんなことを気にしてる余裕はないので、とりあえず放っておくことにする。
「それでは、私は城を出るところなので、失礼します」
「ああ、そうだな。引き止めて悪かったな」
「お気になさらずに」
そう言ってアーバスットと別れ、城を出る。
この時間、アルフ達は家にいるだろうし、早く家に帰ろう。




