第二十六話 酒場
日が落ちてきた頃、アルフ達はとある酒場のテーブル席に座っていた。
「凄い活気がありますね」
「本当にそうだね」
この時間はちょうど人が混む時間帯なのだろう。
たくさんのの人が樽のジョッキをあおり、テーブルに置かれている食べ物を口に頬張っている。
「ソニアは確かお酒飲めるんだよね」
「ええ、お酒は強い方よ」
「そうなんだ。僕、お酒飲んだこと無かったから、飲んでみたかったんだよね」
「いいんじゃない? アルもお酒強そうだし」
「そうかな? じゃあ早速頼む?」
そう言ってメニューを開く。
メニューには様々な食べ物や飲み物が載っている。
「エマってお酒飲めるの?」
「え!? えっと……飲めます!」
エマが動揺しているのが分かる。
この反応は飲めないな。
「無理しなくていいからね」
店員を呼び、注文をする。
僕とソニアは甘めのお酒、エマはジュースにして、他にもいくつか料理を頼んだ。
エマは注文に対して何かごちゃごちゃ言っていたが無視した。
しばらくして三人分の飲み物が届く。
「じゃあ最初の依頼達成ということで、乾杯!」
各々乾杯と言いながらジョッキをぶつけて飲み始める。
今回は自分がお酒を飲みたいのもあるが、お互いの交流も兼ねている。
実際に、エマとソニアが二人で話しているところをほとんど見ていない。
元々ソニアは口数が少ない方なので、最初は中々交流も難しいだろう。
しばらくしてから来た料理を食べたが、かなり美味しく、思わず手が進んでしまう。
「アルフさん、ソニアさん。改めてパーティーに入れてくださりありがとうございます」
エマはこちらに向かって頭を下げる。
「それは構わないけど、エマは、何で僕達のパーティーに入りたいと思ったの?」
「それはアルフさんにあのとき助けてもらったからです!」
ソニアと街を見て回っていたときか。
確か路地裏で白いローブを着た二人の男に絡まれていたな。
そこらへんのことは聞いてもいいのだろうか。
「それに、試験でのお二人が凄くて、是非仲良くなりたいなって思ったんです!」
直接言われるとなんだか照れてしまう。
ソニアも少しニヤついているように見える。
「そうだったんだ。まあ、とりあえずご飯とか楽しんでいこう」
「はい!」
その後、それなりに食べ進めていたせいか、結構胃にものが溜まってきたのを感じる。
お酒を飲んでいるからか、少しボーッとしてきた。
エマはお手洗いに行くと言って席を離れたが、結局エマとソニアが二人で会話をすることはほとんどなかった気がする。
そう思っていると、隣に座っているソニアが僕の肩に触れてきた。
あれ……ソニアのジョッキが5本くらい空になってるんだが。
「ねえ、アル。私のことどう思ってるの?」
気付けばソニアの顔がすぐ近くにあった。
彼女からいい匂いがしてくる。
なんというか、女性特有の匂いだろうか。
思わずドキドキしてしまう。
「えっと……ソニア? どうしたの?」
「…………」
ソニアは何も言わず、ずっとこちらを見つめてくる。
近くで見て改めて思ったが、彼女の顔はとても整っており、誰もが見惚れるのではないだろうか。
少し酔ってるからそう思ってるのかな?
「あれ……アル、こんなところに傷あったっけ?」
ソニアの手が首元に触れる。
毎日のように剣を振っているはずなのに、その指は細く、とてもきれいで、女性らしい手だ。
心臓の鼓動は速くなり、自分の顔が熱くなっているのを感じる。
「ダンジョンの化け物と戦ったときにできたのかな?」
「そうなんだ。それで、結局私のことをどう思ってるの?」
ただでさえ近かった顔が更に近くなる。
このまま近づいたらキスしてしまうんじゃないか?
「ソニアは……ライバルで、親友だと思ってる」
「そっか。良かった」
そう言ってソニアが自分から離れる。
未だに心臓の鼓動が速い。
「私も同じこと思ってた。嬉しい」
彼女の微笑みに再びドキドキしてくる。
普段の生活では見ない顔だ。
「ただいま戻ってきました!」
そう言うエマは相変わらず元気だ。
それに、エマはお酒を飲んでいないはずなのに少しふらふらしているように見える。
「あれ、アルフさん、どうしたんですか? 顔が凄く赤いですよ?」
「これは……酔ったんだ」
そう言って更にジョッキをあおる。
なんだか眠くなってきたな。
「そうですか。飲み過ぎには注意してくださいね!」
「ああ、もちろん、だよ」
まだまだ飲みはこれからだ。
もっと二人と色々話したいし。
〜
目を覚ますと、そこには白い壁がある。
ここは……家だ。
知らぬ間に寝てしまったのだろうか?
まだ少しボーッとする気がする。
部屋を出てリビングに向かうと、そこにはソニアがいた。
「アル、おはよう」
「うん、おはよう」
ルイザさんはいないのか。
「こんな時間まで寝てるなんて、よっぽど酔ったのかしら」
「え?」
窓から外を見ると、既に太陽がてっぺんまで昇っている。
一体何時間寝たんだ?
「今日も冒険者ギルドに行くわよ。ほら、準備して」
そう言われて準備をし、ソニアと共に家を出ると、家の前にエマが立っていた。
「アルフさん、エマさん。おはようございます!」
朝から元気がいい。
「うん、エマ、おはよう」
「おはよう、エマ」
挨拶をすると、こちらに向かって歩いてくる。
「いやあ、昨日は大変でしたよ~。アルフさんがぐっすり寝ちゃうんですから」
「あはは、ごめん」
ぐうの音も出ない。
昨日は一体いつから寝てたんだ?
「ソニアさんがアルフさんのことをおぶって帰ったんですから! ね、ソニアさん?」
「そうね。昨日は大変だったわ」
そう言ってソニアとエマが僕より先に歩き始める。
あれ、なんか彼女達仲良くなってない?
僕が寝たあとに何かあったのか?
「アルフさん、遅いですよ!」
「え? うん」
早歩きで二人のもとに向かい、並んで歩く。
「じゃあ、冒険者ギルドへ行きましょう!」
「そうだね、行こうか」
二人共ご機嫌そうだ。
二人が仲良くなったのはいいが、勝手に仲良くなられると少し自分が置いていかれた感じがする。
まあでも、飲みに行って良かったな。




