第二十五話 装備屋と薬草採取
アルフ、ソニア、エマの三人は装備を買いに装備屋にやってきた。
僕とソニアの装備に関しては問題ないが、エマは冒険者とは言い難い服装をしていた。
「ここが装備屋か。初めて来るな」
「いらっしゃい! 冒険者かい? 是非色々見て言ってくれ!」
気前のいいおじさんだ。
随分歳を取っているようだが、その体つきは現役で冒険者をやっていけそうな雰囲気がある。
「エマ、とりあえず好きな装備を自分で選んでみる?」
「えっいいんですか? 私、治癒術師だから、戦闘とかできないのですが……」
「どの冒険者も装備くらいは必要だからね。とりあえず好きな装備を探すといい」
「分かりました!」
そう言ってエマは店内を回り始めた。
「私も色々見ておこうかしら。アルも装備を買ったほうがいいんじゃない? 接近戦も考えるならもうちょっとしっかりしたものがいいと思うけど」
「そう?」
そう言って自分の装備を見ると、明らかに軽装だ。
魔人の体は丈夫なので、そこらへんの魔獣なら浅い傷で済む気がするが、もうちょっと整えたほうがいいかもしれない。
装備をつけるならやはり動きやすい方がいい。
プロテクターのようなものがいいだろうか。
ソニアと一緒に装備を見ていると、物陰からガシャガシャと音がし、そこから全身鎧の誰かが現れる。
「アルフ、さん! この、装備は、どう、でしょう!」
大きな音を立てながら近づいてくる。
この子、ふざけてるのか?
「エマ、そんな鎧を着てどうするの? それにもう疲れてるでしょ。さっきからハアハア息が聞こえるんだけど」
「だめ、でした、か?」
「だめというか無理じゃない?」
仕方ないので僕とソニアで装備を見繕うことにする。
エマは直接戦闘をするわけではないので、薄めの鎧にローブでも着ておけば大丈夫だろう。
エマに装備を渡し、試着してもらおう。
「どう、エマ? この装備あたりが妥当じゃない?」
「この装備、いいですね。ちゃんと治癒術師って感じがします」
色は髪と合わせて緑にしてみたが意外と似合っている。
「強いて言うなら、ピンク色ならお姫様って感じもするんですが」
「君は何を目指しているんだ」
その後、僕とソニアの装備も軽く見繕った。
そこまでお金を持っていなかったので大したものは買えなかったが、とりあえず十分なくらいは用意できた。
〜
装備の準備を終え、翌日、薬草採取の依頼をこなすため、近くの森に向かっていった。
「初めての依頼で何だか緊張します!」
「僕も正直少しドキドキしてる。まあでも薬草を採取するだけだし、すぐ終わるだろうね」
森に入り、薬草を探す。
森は基本的に深く行くほど魔獣の発生率が高くなる傾向があり、危険なので森に入ってすぐのところで探す。
しばらく歩いただろうか。
意外と見つからないものだ。
ふと後ろを見ると、肩で息をしているエマがいた。
「エマ、大丈夫?」
「はい、大丈夫、です」
彼女の体は華奢で、体力が多いとは思っていなかったが、もう疲れてしまったようだ。
それに比べて、僕やソニアはまだ全然疲れていない。
この体力の差はどうしたものだろうか。
「よし、ここらへんで一回休もうか」
「え? アル、もう休むの?」
「ああ、まだ時間に余裕があるし、ゆっくり薬草を探そう」
ソニアはまだまだ動きたそうだが仕方ない。
エマはすぐにその場に座り込み、うつむいていた。
「アルフさん、ソニアさん……ごめんなさい。私の体力がないせいで」
「全然大丈夫。僕も少し疲れてたし」
しばらく歩ける程度の体力は時間をかけて身につけるしかないかな。
休憩を終え、再び三人で歩き出す。
少し歩くと、ソニアが地面にしゃがみ込んで何かを回収し始めた。
「アル、薬草あったわ」
「おっ、見つけるのが早いね」
ソニアが採取した葉を受け取り、全体を眺める。
うん、ちゃんと目的の薬草だ。
「アルフさん、こっちにもありました!」
「どれどれ……エマ、これね、実は薬草じゃないんだよ」
「え、そうなんですか?」
ソニアから受け取った薬草を取り出す。
「ほら、葉の裏を見てみて。この2つで模様が違うでしょ?」
「へえ〜そんな細かいところも見ないとだめなんですね」
「そう。だから薬草採取も意外と大変なんだ」
修行のときもルイザさんとよく薬草を採ったものだ。
最初は魔獣に襲われたりして大変だったが。
こうして何事もなく薬草採取を終え、冒険者ギルドに戻った。
「依頼の薬草を持ってきました」
「お疲れ様です。それでは薬草を提出してください」
薬草を提出すると、それを持って受付嬢が奥に行ってしまう。
基本的に依頼の報酬は薬草の鑑定が終わってからだ。
余分に持ってきた分はお金と換金してくれるらしい。
依頼の方が割はいいので、そこまで余分に採ってきてはいないが。
「それではこちらが報酬となります」
そう言って銀貨が数枚渡される。
薬草採取はDランク依頼のため、報酬自体はそこまで多くないが、初めての報酬のせいか、思わずニヤけてしまう。
「報酬を貰えるのって、とても嬉しいですね!」
エマの言うとおりだ。
「おっ、イーストが依頼を達成したようだぜ」
周りから声が聞こえてくる。
明らかに周りの冒険者がこちらを見ているので、イーストは自分達のことだろう。
ストロングイーターをイーストに略したってことか……なぜそう略した。
「さて、実は僕、このお金で行きたいところがあるんだよね」
エマとソニアはキョトンとしているが、言葉を続ける。
「夜は三人でご飯食べようか」




