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第二十三話 試験と仲間

「アルフさん、ソニアさん。ここが試験場になります。普段の訓練場でもありますが」


 受付嬢はそう言って扉を開けた。

 扉の先にあったのは運動場で、ところどころにマトのようなものが見えた。

 ちらほらと剣を振っている人がいる。


「さて、それではソニアさんから試験をしましょうか。試験官があそこにいるので、彼と手合わせをしてください」


 試験場からこちらを見てくる男がおり、ソニアはその男の元へ向かう。

 男の試験官で髭をはやしており、いかにもベテランの風格を漂わせていた。


「君が試験を受ける新人だな。じゃあさっそく試験を始めようじゃないか。ほら、この木刀を使え」


 男は二本持った木刀の一本をソニアに差し出す。

 ソニアは木刀を受け取り、多少距離をとって構える。


「おっ、もう始まるぞ!」

「さて、今回の新人はどの程度だろうな」

「俺、さっきもあの子のこと見てたけど、剣を抜くのがめちゃくちゃ速かったぜ! 期待できるんじゃないか」


 周りを見ると、たくさんの冒険者が試験場を囲っていた。

 冒険者達は随分と賑わっており、まるでちょっとしたお祭りのようだ。


「あの、なぜこんなに冒険者が集まってるのでしょう?」

「冒険者希望の試験はちょっとしたイベントなんですよ。ここで新人を見極めて、中にはパーティーに引き抜こうとする人もいるんです」


 受付嬢が丁寧に答えてくれる。

 よく見ると、さっきまでここで剣を振っていた人達もこちらを見ている。


「さあ、君の好きなタイミングで来なさい」


 試験官がそう言うと、ソニアはすぐに走り出し、木刀を縦に振る。

 試験官はそれを木刀で防ごうとするが、押されてしまう。


「うおっ!」


 試験官はソニアの剣を弾き、木刀を振るが、あっさりとソニアは避け、試験官の喉元に木刀を突きつける。


「……ふっ、俺の負けだ」


 試験官がそう言うと同時に、とんでもない新人が来たと、周りの冒険者が湧き始める。

 さすがソニアだ。

 試験官相手でもあっさりと勝ってしまった。

 ソニアは木刀を引くと、僕に木刀を渡してくる。

 彼女は汗一つかいていないように見える。


「アル、次はあなたの番よ」

「ああ、そうだね」


 ソニアの木刀を受け取ると、試験官の方に歩いていく。


「あなたがそのまま僕の試験を担当するということでいいんですよね?」

「ああ、そうだな。ったく、参っちゃうね。こんな腕の立つ新人が来るなんて。もしかして君も強いのかい?」

「う~ん、それなりだと思います」

「ははっそうかい。まあ手合わせをすれば分かることだ。早速やろうか」


 お互いに木刀を構える。

 どちらかといえば魔術のほうが得意なので、正直試験管に勝てるとは思っていないが、それなりに良い勝負はしたい。

 ソニアが圧倒したせいで、明らかに周りの冒険者が期待しているのが分かる。

 ソニアより先に試験を受けたほうが良かったかもしれない。


「さあ、来なさい」


 実際に木刀を構えて分かったが、この試験官はかなり強い。

 試験官は動かなそうなので、試験官に向かって木刀を振る。

 試験官はソニアと同様に木刀で僕の攻撃を受けた。


「なっ!? 君は中々の力を持っているな!」


 自分は魔族なので、力だけで考えれば人間より全然強い。

 そのせいか、初めは試験官も手間取っていたが、攻撃に慣れてきたのか、上手く攻撃を防ぎ始める。


「よし、ここらへんにしよう。大体君の能力は分かった」


 ソニアの後だからだろうか、周りの反応は薄い。

 やっぱり剣術のみの勝負は苦手だ。

 力が強くても、どうしても技術で受け流されることが多いように感じる。

 

「お疲れ様でした、アルフさん。次は魔術の試験ですね。立て続けになりますがよろしくお願いします。」


 受付嬢がそう言うと、その後ろから試験官が現れた。

 気づけば周りの冒険者がかなり減っている。

 何故だろう、周りから直接何かされたわけじゃないが、期待されていないと思い少しがっかりする。

 魔術はマトに当てるだけだったので意外とすぐに終わった。


 試験を終え、ギルド内の丸テーブルで待つことにする。

 試験の様子を見ていたのか、他の冒険者達がソニアに声をかけてくる。

 パーティーの勧誘をされる度にソニアは断っていた。

 僕も別に悪くはなかったと思うんだが、まだ誰も話しかけてこないのが少し寂しい。


「あの……すみません。私とパーティーを組んでくれませんか?」


 え、僕が冒険者パーティーに誘われた!?

 ふと声をかけられた方を見ると、そこには少女が立っていた。

 少しはねた緑の長髪に緑の瞳。

 身長は低く、だいぶ幼いように見える。

 体が動く度、頭頂部にあるアホ毛がはねていて可愛らしい。

 どこかで聞いたことのある声だ。

 どこで聞いたのだろう?


「あの、どこかで会ったことある?」

「はっはい! 昨日のこと覚えてますか?」


 昨日?

 昨日はソニアと二人で街を見て回ってたはずだが……


「私、路地裏であなたに助けてもらった人です!」

「ああ! あのときの!」


 確か二人の男に襲われそうになっていた子だ。


「はい! 昨日は危ないところを助けてくださりありがとうございました!」


 思い切り頭を下げると同時にピョンピョンはねる彼女のアホ毛を目で追ってしまう。


「それで、パーティーに入れてくますか?」

「う〜ん、ソニアと相談したいんだけど……そういえば自己紹介してなかったね。俺はアルフ。君は?」

「あっすみません! 私はエマ・デルーカって言います!」


 元気のある子だ。

 ふとソニアの方を見ると、勧誘の波が終わって疲れたのか、椅子にぐたっと座り込んでいた。


「珍しく疲れてるね、ソニア」

「そりゃあそうよ。あんなたくさんの人に声を掛けられたの初めてだもん」


 今までルイザの元で修行していたせいで、たくさんの人に慣れていないのかもしれない。


「なあ、ソニア。この子がパーティーに入りたいって言ってるんだけど、どうしよう?」

「アルが入れていいと思うんならいいんじゃない?」


 随分とあっさりした答えだ。

 これから冒険をする仲間になるのかもしれないわけだが、そこまで気にしていないのだろうか。


「エマってなんの職業なの?」

「はい! 私は治癒術師です! 傷とか治せるのできっと役に立てると思います!」


 治癒術師はかなり珍しい。

 治癒魔術は教会が保有する魔術で、基本的に一般の人が使えることはない。

 人柄も良さそうだし、パーティーに入れてもいいかもしれない。

 何より……彼女が凄くパーティーに入りたそうな目で見てくるし。


「是非パーティーに入ってくれ、エマ」

「はいっ! よろしくお願いします!」

「ああ、よろしく」


 エマの右手を取り、拍手をする。

 まだ彼女については分からない事だらけだが、しっかり協力し合える関係を作っていこう。

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