第二十一話 ソニアとのデート
街をぶらぶらしてしばらく経っただろうか。
このまま自分が行きたい場所に行くのも申し訳ないし、タイミング的にもちょうどいいだろう。
「ソニアが行きたいところはある? 次はそこに行こう」
「そう? う〜ん、どこに行こうかしら」
ソニアが悩んでいるが、行きたい場所がたくさんあるのだろうか。
「それじゃあ、服を見に行かない?」
服か。
確かに今まで服装を気にしたことはほとんどなかった。
いい機会かもしれない。
「いいよ。そこに行こうか」
どこにあるかは分からないが、探せば見つかるだろう。
しばらく歩いて服屋を見つけ、アルフとソニアは中に入る。
そこには、様々な服が置いてあった。
「ねえアル、この服とかどう?」
ソニアが服を見せてくる。
白色のワンピースで可愛らしい。
「お客様、良かったら試着をなさいますか?」
「試着していいの? じゃあ試しに来てみようかしら」
そう言ってソニアは試着室に入っていった。
試着室から出てくると、先ほど見せた服を着たソニアが出てくる。
「どう、アル?」
彼女のワンピース姿はとても似合っていた。
普段稽古用に着ている服ばかり見ていたせいか、とても新鮮でなんかドキドキしてくる。
「とても似合ってるよ」
「そう……ありがと」
彼女の反応がヤバい。
何だその少しニヤニヤした表情は!
なぜ少し下を向いてモジモジしている!!
「もうちょっと色々見ていこうかしら」
「それならお客様、オススメの服もありますので、是非ゆっくりしていってください」
その後もいくつかの服を試着したソニアを見たが、そのたびにドキドキした。
色々試着して満足したのだろう、店を出るときのソニアはとても笑顔だった。
ソニアの反応に満足したのか、何も買っていないのに店員も笑顔で見送ってくれた。
「さて、次はどこに行こうかしら」
服屋での彼女の反応は新鮮だった。
もしかしたらこのまま彼女の行きたいところに行ったら僕の心臓は耐えられないのではないだろうか。
そんなことを考えていると、新たに行きたい店を見つけたのか、看板に指を指してこちらを見てくる。
「アル、次はあそこに行きましょう!」
ソニアが指を指す場所は、男性が入れない領域、すなわち、女性の下着専門店がそこにはあった。
とりあえずソニアの肩に手を置いて目を合わせる。
「ソニア……あそこに僕は入れない」
「どうして? 男性禁止とかどこにも書いてないわよ?」
「まあそうだけど……別に今行かなくてもいいんじゃない?」
「え? 今行きたいんだけど」
「どうして今なの?」
「……最近、胸が大きくなってる気がして、新しい下着が必要なのよ」
とんでもないことを聞いてしまった。
思わず一瞬視線が胸あたりに向いてしまう。
服を着ているからなのか、大きくなってるかどうかはよく分からなかった。
「ソニア、もし行くなら一人で行ってくれない? 僕は外で待ってるから」
「そう? 仕方ないわね。ひとりでいくわ」
そう言ってソニアは一人で店に入っていった。
まさかソニアがあんなことを言うとは思ってもいなかった。
普通、男の僕にそんなこと言うか?
外で待っていると、人通りが少なくなってきているように感じた。
日が暮れてきたのだ。
そろそろ帰った方がいいかなと考えていると、路地裏の方から声が聞こえてくる。
なんだろうと思って顔を覗かせると、そこには白いローブ着た二人の男が一人の少女に対して何か話をしていた。
「ほら、来なさい。早く帰りますよ」
「やだっやめて! 放して!」
二人の男が少女を無理矢理引いているように見える。
明らかに怪しい雰囲気だ。
思わず声をかけてしまう。
「あの、何をしているんですか?」
僕の声を聞いた少女は男の腕を払い、急いで俺の後ろに隠れた。
「君は……彼女の知り合いか?」
「いえ、そうじゃないんですけど、困ってる感じだったので」
「彼女はね……必要な仕事を放ったらかしにしたんだ。だから連れ戻しに来た」
背中に触れている彼女の手が小刻みに震えている。
何かが変だ。
「大丈夫、彼女をこちらに渡せば何もしない。それにこれはこちらの問題なんだ。どうか彼女を渡してくれ」
そう言って男が近寄ると、少女の震えが更に大きくなった。
思わず僕は腰につけた剣を抜いてしまった。
抜かれた剣を見て男たちはたじろぐ。
「きっ君! 自分が何をしているのか分かっているのか!」
「彼女が怖がっているので、俺は彼女を守ります」
男二人が何かを話し始め、一人の男が前に進み、剣を抜いてくる。
「すまないが、彼女がどこかに行くと色々問題があってね……返してもらうよ」
男の実力は知らないが、こっちはソニアとしょっちゅう手合わせをしているんだ。
相手が多少手強くても勝つ自信はある。
こういうときは先手必勝である。
思い切り地面を踏み込み、前に走り出す。
……あれ?
すぐに懐に入れた。
相手を殺したいわけではないので、柄の部分で頭を狙う。
「ぐほっ!?」
そう言って男は倒れる。
なんか……弱くね?
もう一人の男がすぐさま駆け寄り、倒れている男を抱えた。
「きっ君! 覚えてなさい! 君はやってはいけないことをしたんだ!」
そう言い残し、男二人は去っていった。
なんか意外とあっさりだったな。
「あのっ! 助けてくださりありがとうございます!」
「困っているのを助けるのは当然だからね」
少女がこちらを見つめている。
少し汚れているフードを被っており、はっきりとは見えない。
彼女の身長が低いせいだろうか、かなり幼く見える。
「あのっ……あの、あの!」
どこか興奮しており、落ち着きがない感じがする。
「えっと、とりあえず落ち着いて? 深呼吸でもする?」
「はい!」
そう言って少女が息を吸って吐くと、次第に少女の顔が赤くなってきた。
「ちょ! 息を吐いたら吸わないと! 深呼吸って知ってる!?」
その声に気づいたのか、息を吸い始めた。
この子、大丈夫か?
「はあ、はあ、すみません。中々落ち着かなくて」
「別にいいけど……それで、何か俺に言いたいことがあるのかな?」
「はい! えっと、私のことを助けるあなたの姿がとてもかっこよかったです!」
「うん? ありがとう?」
この子、大丈夫かな。
何か言おうとして深呼吸ができないほど興奮したと思ったら、僕のことがかっこよかったって言うなんて。
かっこよかったって言われて嬉しいことは嬉しいんだけど。
そういえば、もうソニアは店を出ているのだろうか。
「僕、そろそ行かないといけないんだけど、一人でも大丈夫そう?」
「え…………大丈夫、です」
なんか残念そうな顔をしている。
まあ大丈夫かな?
「じゃあもう行くね」
「はい! 助けてくださりありがとうございました!」
そう言って少女は深くお辞儀をする。
早くソニアのもとに行ったほうがいいだろう、そう思って、少女に軽く手を振ってこの場を去った。
ソニアが入ったお店に戻ると、ソニアは既に店の外にいた。
「アル! 遅いじゃない! 突然いなくなって心配したんだから!」
彼女が心配してくれたのか。
なんか、ソニアは最近少し変わった気がする。
「ごめん、ソニア。じゃあ帰ろっか」
そう言って二人は家の方向へ歩いていった。




