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第一話 見知らぬ場所

一話目ですね。

 暗い。

 床は固くて冷たい。

 首に着けられた鉄の輪が邪魔だ。

 少し汚れた布を着せられている。

 一日に2回ある食事はごく普通のパンとスープ。

 お世辞にも豪華だと言えない。

 部屋には窓はなく、通路側には鉄の棒が縦に並んでいる。

 鉄格子というやつだ。


「〜〜〜〜〜」


 鉄格子の奥には2人の人が話しながら歩いている。

 時々こちらを冷たい目で見てくる。

 彼らは一体何を話しているのだろうか。

 謎だ。


 しばらく家に帰っていない。

 お母さん元気かな?





 約二週間前


「ここは……どこ?」


 気づいたら見知らぬ場所に立っていた。

 知らない人、知らない建物、知らない匂い。

 全てが知らないものだった。


 確か行ったことのない洞窟に遊びに行ってたんだ。

 それで、洞窟の奥の床に知らない模様があって、突然光ったと思ったらここにいた。

 訳が分からなかった。


「〜〜〜〜〜。」


 知らない男の人に話しかけられた。

 何を言っているのか分からない。


「あの、ここはどこなんですか?」

「〜? 〜〜〜〜〜。」


 男は首をかしげながら答えた。

 なんだか難しい顔をしている。

 何を言っているのかわからない。

 訳が分からない。

 僕は思わず、男を背にして逃げるように走り出した。


 どこを見ても、知らない人、知らないものばかりだ。

 一体どこに行けばいいんだ?

 心臓の鼓動が早い。

 全身から冷たい汗が吹き出てくる。

 走り出してすぐに息が切れた。

 いつもはもっと長く走れるのに。

 早く家に帰りたい。

 自然と自身の足は人のいない方向に向いた。


 気づいたら人通りが少ない道に来ていた。

 周りの建物はさっき見たものよりボロボロだった。

 時折すれ違う人の服もボロボロで、明らかにさっき見た人達と雰囲気が違っていた。

 僕はとりあえずさまよう。

 向かう先など決めていない。

 決めようがない。

 フラフラと歩いていると、向こうから来た人と肩がぶつかった。


「〜〜〜〜〜!!」


 明らかに怒っていた。

 体格がよく、とても強そうだ。


「ごっ、ごめんなさい!」


 そう言うと僕はまた走り出した。

 怖い。

 人が怖い。

 何を言っているのかわからないのが怖い。

 知らないものばっかりなのが怖い。

 

 しばらく走ったあと、疲れて道端に座り込んだ。 

 周りに人は見えない。

 静かだ。

 自身の腹から音が鳴る。


「お腹空いた……」


 すると、建物の影から2人の人が歩いてきた。

 スーツのようなものを着ており、靴は真っ黒だ。

 綺麗な服だ、と思った。


「〜〜〜〜〜。」


 2人の内の片方が声をかけてくる。

 身長が高く背筋が真っ直ぐしている。

 丸眼鏡をかけており、髪は白髪で、オールバックにしていた。

 相変わらず何を言っているのか分からない。


「……お腹空いた。」


 2人に対して自然とそう言ってしまった。

 2人は困った顔をしていたが、何かを察したのか、バッグに手を入れ、パンを取り出して自分に渡してくれた。

 僕は思わず、パンを受け取ってすぐに食べ始めた。

 この人達はいい人達なのかもしれない。

 何を言っているのか分からないけど、僕にパンをくれた。


 パンを食べ終えると、話しかけてくれた人が何かジェスチャーをしている。

 ついてこいって言っているのだろうか。

 僕が立って2人に着いていこうとすると、2人は優しく笑ってくれた。

 僕はこの人達に着いていくことにした。





 優しい人達が僕を暗い部屋に入れてからしばらくが経った。

 優しい人達はたまに来ては身振り手振りを入れながら話しかけてくれる。

 いい人達だな。

 きっと僕をこの部屋に入れたのも何か意図があるのだろう。

 もしかしたら彼らは僕に住む場所を提供してくれたのかもしれない。


 カッカッカッ


 通路側から歩く音が聞こえる。

 優しい人達だろうか。

 音は僕の部屋の前で止まった。

 そこには以前パンをくれた優しい人と、フードを被った見知らぬ女性がいた。

 まとっているローブは高級な雰囲気がある。


 女性は俺の方を見ると、フードを外した。

 美しい女性だ。

 耳は周りの人より2、3倍は長い。

 身長は僕より高いくらいだろうか。

 自分の身長はそこまで高くないが。

 髪は透き通った白で、長く伸びていた。

 服のせいか、どのくらいの長さなのかは分からない。

 何より特徴的なのは目だ。

 右目は緑色、左目は紫色。

 いわゆるオッドアイというものだ。


「……〜〜〜〜〜?」

「〜〜〜〜〜。」


 通路にいる二人が会話を交わすと、扉は鍵で開けられ、女性が中に入ってきた。

 女性は部屋の中に入ると、僕の頭を優しく撫でた。

 正直少し怖かったが、美人な人に撫でられてドキドキした。


「〜〜〜……。〜〜〜〜〜。」

「〜〜〜。〜〜〜〜〜。〜〜〜〜〜。」


 そう言うと2人は通路の奥に進んでいった。

 新たに別の人が部屋の中に入ってくる。

 もう片方の優しい人だ。

 優しい人は僕の首の輪を外し、僕の手を引いて歩き出した。

 どこへ行くのだろう。


「〜〜〜〜〜。」


 僕の手を引く人は何か言っているが、相変わらず分からない。

 優しい人に体をもみくちゃに洗われ、きれいな服を着せられた。

 なんかいつもと違う。

 その後、とある部屋に連れて行かれた。

 部屋の扉を開けると、テーブルを挟んで二人がソファに座っていた。

 美人な女性と丸眼鏡の優しい人だ。

 部屋の中には高そうな装飾品があったが、数はそこまで多くはない。

 シンプルな部屋だ。

 部屋に入ると、美人な女性が僕の前まで歩いてきた。


「〜〜〜〜〜。」


 彼女はそう言うと僕の手をとり、部屋を出た。

 相変わらずドキドキする。

 後ろを見ると、部屋にいた人は僕達に向かってお辞儀をしていた。


 通路をしばらく進むと上に続く階段があった。

 見たことがある。

 確か階段の奥には外につながる扉があったはずだ。

 言葉の通り、階段の先には扉があり、彼女は左手で僕の手を取ったまま、右手で扉を開けた。

 久しぶりの外はとても眩しかった。


 僕達は外をしばらく歩いた。

 途中に出店があり、ジッと店を見ていたら彼女がその店の商品を買ってくれた。

 木の棒に肉が刺さっている食べ物で、凄く美味しかった。


 しばらく歩き、人気のないところに来た。

 周りを見渡しても人の気配はない。

 すると突然彼女は僕のことを抱いた。

 彼女の胸が俺の首元に当たる。

 やわらかい。

 何をしているのか分からず、混乱する。

 彼女は片手を下にかざし、何かを言い始めた。


「〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜、」


 長い。

 一体何をしているのだろうか。

 しばらくすると、地面が白く光り出し、模様が浮かび上がった。

 どこか見覚えのある模様だ。

 なんだろう。


「〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜!」


 彼女が何かを言い終えると、白い光は自分の周りを覆い、視界は真っ白になった。

 しばらくすると光は消え、そこには人も模様も、何も残っていなかった。

ありがとうございました。

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