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第十七話 ソニア

ただ強くなる。

 そのために剣を振る。

 きっかけは些細なもので、ただ、英雄に憧れた。

 子供なら、誰もが一度は憧れる存在だ。

 そして、普段の生活の中で、人々の生活を守る存在がいた。

 騎士だ。

 町中は騎士が見回ることがあり、時々見かけることがあった。

 純白の鎧を全身にまとい、腰に剣を携えているその姿はとてもかっこよかった。

 

 ある日、路地裏で恐喝されている人を見た。

 一人の女性を、二人の男が囲んでいる。

 このままだと彼女は危険な目に合うかもしれない。

 そこに向かって一人、走り出す男がいた。

 軽そうな装備をまとっている。

 冒険者だ。

 その男はすぐさま二人の男を倒し、女性を救い出した。

 その姿は、騎士と同様、とてもかっこよく写った。


 何を考えたのか、幼い年齢でありながら旅に出ることにした。

 何を持っていけばいいか分からないが、とりあえず小さな剣を腰につけ、水と食料を大量に持っていくことにした。

 旅の道中、魔獣に襲われることがあった。

 当然幼い自分が倒すことはできないため、魔獣を見つけるたび、ときには隠れ、ときには逃げたりした。


 旅の経験がないため、どうやって食料を調達すればいいか分からず、持ち込んだ食料は次第に腐っていった。

 やがて空腹に耐えきれず、旅の道中で倒れてしまう。


「君、大丈夫か?」


 銀髪の女性に声をかけられる。

 耳が長い。

 普通の人間ではないのだろうか。

 空腹で話すことができない。

 銀髪の女性は何を思ったのか、自分を背負ってどこかに向かっていった。


 それから彼女の元で修行するようになった。

 彼女はルイザという名前らしい。

 ルイザは強かった。

 魔術にも剣術にも達者で、自分に勝てる要素はなかった。

 

 ルイザは剣術と魔術を同時に使う戦い方を得意としていたが、自分にはそんな器用なことは出来なかった。


「ソニア! 踏み込みが甘い! もっと強く踏み込め!」


 ルイザの指示に従うように力強く踏み込み、木刀を振る。


「いいぞ、ソニア! その調子だ!」


 ルイザの指導は的確だ。

 彼女の指示に従うことで自分が強くなるのを感じた。


 ある日、突然ルイザが少年を連れてきた。

 ルイザは少年がアルフという名前で、魔族だと言った。

 魔族……本物だろうか。

 私の国では基本的に魔族は嫌われ、恐れられている存在だ。

 しかし、実際はほとんどの人は魔族と出会ったことすらなく、私も正直どんな反応をすればいいか分からなかった。


 私は稽古を終えると、毎回草むらに寝転ぶのが日課になっている。

 魔族の少年は私が寝転ぶ度に隣に座ってくる。

 私は彼が何を喋っているか分からない。

 しかし、彼が隣に座ること自体は嫌いじゃなかった。


 しばらく時が経ち、アルフとも話すようになった。

 彼は中々面白い。

 魔族ということもあってか、時々価値観が私達と違うと感じることがある。

 そこが面白いところだ。


 稽古を重ねるごとにアルフはどんどん強くなっていった。

 最後に手合わせをしたときは、上手いこと魔法を使いながら木刀を交えてくるようになっていた。

 剣の腕はまだまだだが、稽古を積めばきっと強くなるだろう。


 アルフとの最後の手合わせの後、アルフはなぜ強くなりたいのか聞いてきた。

 英雄に憧れて、たくさんの人を救いたい。

 その気持ちは変わらない。

 アルフには違う目的があるのだろうか。

 分からない。


 ルイザがしばらく戻ってこない間、私の気持ちはずっと揺れていた。

 私は強くなっている気がしなかった。

 修行を通して知ったが、私は魔術はそこまで得意ではない。

 ルイザは魔術を得意としており、彼女とは色々と合わないのかもしれない。

 もちろん彼女には感謝している。

 ボロボロの私を助け、稽古までつけてくれたのだ。

 しかし、このままでは先には進めない、そう思うようになっていた。


 ダンジョンの存在は知っていた。

 たくさんの魔獣が住み着き、ダンジョンの奥には魔物がいるという。

 いつしか、成長するためにはここに行くしかないと、そう思うようになっていた。





 村人から馬を借りてダンジョンに向かう。

 この村にはよく訪れており、顔見知りも多かった。

 馬を貸してくれと頼むと、村人は快く貸してくれた。

 当然、対価のお金は払った。


 ダンジョンに向かう道中、魔獣に会うことがあった。

 実践戦闘は少なかったが、十分な自信が自分にはあった。

 その自信の通り、魔獣はあっさりと倒すことができた。

 この程度なら多少束になっても勝てるだろう。

 それほどの自信が、彼女にはあった。


 ダンジョンにたどり着く。

 ダンジョンに来るのは初めてだ。

 ダンジョンに挑むための準備は十分に出来ている。

 さっそく中に入ろう、そう思い、ダンジョンの中へと入っていった。


 ソニアにとって、ダンジョンの中でも魔獣は敵ではなかった。

 特に危ない場面もなく、どんどん奥へと進んでいく。

 魔獣程度では私の相手にならないのだろうか。

 やはり狙うなら魔物だ。

 奥に進んで魔物を見つけ出そう。

 そう思い、ダンジョンの奥へと足を進めた。


 しばらく進むと、上半身は裸の女性、下半身は蛇のような姿の魔物と出会った。

 魔物の右手にはどこから拾ったのか、ボロボロの剣を持っていた。

 ソニアはすぐさま剣を抜き、魔物に向かって走り出す。


 魔物は笑いながら剣を縦に振る。

 ソニアは自信の剣で受け流し、魔物の右腕をすぐさま切り落とす。


「ギエエェェェェ!!」


 すぐさまソニアは魔物の首を切り落とし、魔物は力なく倒れる。

 弱い。

 剣術を長年学んだ彼女にとって無造作に剣を振る魔物は相手にならなかった。

 魔物でもこの程度とは……正直、期待外れだ。

 そう思い、ソニアは更に奥へと進んでいった。


 少し進むと、突然魔獣が現れなくなる。

 不自然だ。

 こうも敵が出ないことがあるのか。

 ダンジョンに潜ったことのないソニアにとって、今の状況が普通なのかどうか判断しかねていた。


 そう考えていると、奥から足音が聞こえてくる。

 姿はまだ見えない。

 しかし、なぜか、こいつはヤバいと、直感がそう訴えた。

 しかし、ソニアの直感とは正反対に、彼女の心は燃えていた。

 まともにやり合える敵が来たと、そう感じた。


 やがてその化け物は姿を現す。

 たくさんの魔獣でも狩っていたのだろうか、その体は返り血で赤く染まっている。


「ヴルルルルゥゥ。」


 化け物は両手に持った剣と斧を構える。

 剣術など教わっていないであろう化け物の構えは不格好に映る。


 ソニアは剣を構えて走り出す。

 化け物は右手に持った剣を横に振るう。

 化け物の剣をソニアは自身の剣で受け流す。


「ぐっ!」


 今まで会った敵の中で一番強い。

 まともに受けたら剣ごとやられかねない。

 

 化け物は次は左手に持つ斧で攻撃をする。

 ソニアはその攻撃を見事に避ける。

 その後、空振った左腕を足場にし、化け物の右目に剣を突き刺す。


「ヴルルアアァァァァ!!」


 右目に攻撃を受けた化け物は痛みのあまり、暴れまわる。

 偶然にも、化け物の右腕がソニアに当たる。


「ゔっ!」


 とっさに剣で防御するが、軽く吹き飛ばされてしまう。

 これを好機とばかりに、化け物は次々と攻撃を加える。


「くそっ!!」


 ソニアはときには剣で攻撃を受け流し、ときには避けたりを続けていたが、続けて放たれる攻撃を防ぎ切ることができず、体の傷が増えていく。

 やがて、化け物の強力な攻撃がソニアを再び吹き飛ばす。


「ぐはっ!!」


 体の内側をやられたのか、思わず血反吐を吐いてしまう。

 勝利を確信したのか、化け物は笑いながらゆっくりと歩みを進める。

 このままじゃまずい、そう思ったソニアは逃げることにする。


 化け物に見えないように魔術を発動させ、化け物に放つ。

 ファイアボールだ。

 化け物は突然の魔術に驚き、まともにくらう。

 その間にソニアは化け物と逆の方向に走り出した。


 どれだけ走っただろうか。

 口の中は乾燥し、過呼吸になる。

 あまりの疲れに足がもつれ、その場に倒れ込む。

 これ以上は走れない、そう考えたソニアは洞窟の壁を背もたれにして座り、化け物がどこかに行くのを待つことにした。

 あの化け物は見逃してくれなさそうだが。


 もしかしたら……死ぬかもしれない。


 その時、遠くから見覚えのある顔が見えてくる。


「ソニア!!」


 聞き覚えのある声にソニアは安堵の息を漏らした。

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