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第十五話 化け物

 その化け物は巨大だった。

 体長は四、五メートルあるだろうか。

 蛇のような巨大な尻尾を持ち、熊のような足を持っている。

 胴体は筋肉質な体をしており、右手に大剣、左手に巨大な斧を持っている。

 頭は猿だ。

 右目には傷を負っており、何も見えてなさそうだ。

 様々な魔獣、魔物をつなぎ合わせたような姿だが、何より不気味なのは、その体のつなぎ目だ。

 つなぎ目は変に歪んでおり、無理矢理くっつけたような気持ち悪さがある。


「グヴヴォォォォ!!」

 

 化け物はソニアを発見すると、顔を歪ませ、ソニアに向かって走り出す。

 巨大な体でありながら、スピードは速い。


「ソニア!!」


 すかさずアルフはソニアの前に立つ。

 この化け物はヤバい、そう思ったが、なぜか体が勝手に動いた。


「グガアアァァ!!」


 化け物は右手に持った剣を振るう。


「アルフくん!!」


 とっさに出てきたアーロンが大剣で防ごうとするが、化け物の力を受けきることができず、吹き飛ばされ、思い切り洞窟の壁に叩きつけられる。

 化け物は左手に持つ斧をアーロンに向かって振るう。

 その攻撃はアーロンに命中し……アーロンの頭を粉砕した。


「アーロンッ!!」


 フィオナの声だ。

 少し遠くから聞こえてくる。


「おまえぇぇぇぇ!! よくもアーロンを!!」

「待て!!ジェイク!!」

 

 ルーファスの声を聞かずにジェイクは走り出す。

 ジェイクは化け物の後ろから剣を縦に振る。

 ジェイク攻撃は命中するが、わずかに剣先が刺さったのみだ。


「ヴルオオォォォォ!!」


 ジェイクの攻撃に怒りを覚えたのか、興奮した化け物はすぐさま後ろを向き、右手の剣を横に振る。

 ジェイクは自身の剣で防ごうとするが、簡単に吹き飛ばされ、アーロンと同様に、壁に叩きつけられる。


「がはっ!!」


 壁に叩きつけられた衝撃でジェイクはうなだれる。


「ファイアアロー!!」


 ジェイクに二撃目を与えようとした化け物にフィオナが魔術を放つ。

 魔術は化け物に命中し、わずかな傷を作る。

 その間、アルフは動かなかった。

 一緒に旅をしたアーロンが死んだ。

 そのことは彼にとって大きな衝撃だった。


 彼は僕を裏切ったと思った。

 魔物が現れたらどうするか話し合ったとき、アーロンはソニアを助けないと言った。

 そんな彼が僕をかばって攻撃を受け、死んだ。

 なぜ、僕なんかを助けた?

 魔法のことをひた隠し、自分のことしか考えていないクズを、なぜ助けた?


「ジェイク!! 今助ける!!」


 そう叫び、ルーファスはジェイクに駆け寄る。

 ジェイクは気絶しているが、まだ息はあるようだ。


「ルーファス!! 危ない!!」


 フィオナの声に反応し、ルーファスは後ろを振り向く。

 そこには、斧を叩きつけようとする化け物がいた。


「ヴルルオオォォォォ!!」

「まずいっ!!」


 その時、一つの火球が化け物に当たる。

 その火球は弱々しく、化け物に傷をつけることはなかった。


「……ソニア?」

 

 アルフはソニアを見る。

 そこには右手を化け物に向けるソニアがいた。


「ソニア……なんで……」

「は? ……当然でしょ? ……人を助けるのは」


 ルーファスはジェイクを担いでその場を離脱し、フィオナと合流する。


「フィオナ、逃げるぞ!!」

「え!? でも、アルフが」

「無理だ!! アーロンもジェイクもやられた!! あの化け物を倒す力はない!!」


 ジェイクはフィオナの腕を無理矢理掴み、この場から脱出しようと走り出す。

 化け物はジェイク達を追おうとするが、火球によって妨害される。


「なんで……僕……」


 化け物を妨害したのはアルフの魔法だった。

 ルーファス達は今、アルフとソニアを置いて逃げようとしている。

 それは、アルフにとって完全な裏切りだ。

 それなのに、なぜか、アルフはルーファス達を助けようとしていた。


「ふふ、やるじゃない……弱者を守るのは……強者の義務よ……」


 なぜ、ソニアはそんなことを言えるのだろう。

 彼らは、ジェイク達はとても強い。

 僕なんかよりもたくさんの経験を積んでいて、チームワークも凄くて。

 彼らの方が強者じゃないのか?


「アルフ……ごめんなさい……ここまで来て……あんな化け物と戦わせるなんて……」


 化け物はゆっくりとこちらに視線を向ける。

 僕達を逃がすつもりはないようだ。


「僕……勝てる気しないんだけど」


 アルフは今まで一人で戦ったことはなかった。

 それに、一番の頼みであるソニアはボロボロであり、この化け物にやられたのは明白だ。


 あんなに強いソニアがやられるのだ。

 僕なんかに勝てるわけがない。


「アルフが……勝てないと思うのは……当然ね。」


 ソニアはゆっくりと頭をあげてこちらを見据える。


「でも……あなたならできる……そんな気がする。」


 なぜ、ソニアはそう思うのか?

 思えば、彼女は普段からよく分からないことがあった。

 しかし、なぜだろう。

 なぜか、ソニアの言葉は、信頼することができた。


「ソニア……分かった。僕、戦うよ」


 そう言うとアルフは剣をゆっくりと化け物に向ける。

 化け物は何を察したのか口元を大きく歪める。

 

「グッキッキッキッ」


 笑っているのだろうか。

 気持ち悪い。

 本当に勝てるのだろうか。

 しかし、戦えるのは僕だけだ。

 やるしかない。


 そう思い、アルフは剣を強く握りしめた。

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