第十三話 魔物との戦闘
アルフ達はダンジョン内を進んでいた。
ジェイク達は周囲を警戒しつつ、雑談もたまにしている。
それに対し、アルフが話すことはなかった。
彼らも完全にわだかまりが取れたわけではない。
しかし、ダンジョンでは喧嘩をする余裕がないことを全員が知っていた。
ルーファスが何かに気づく素振りを見せる。
「魔獣だ……いや、魔物が来てる」
魔物、それは、ダンジョンが生み出した強力な生物だ。
すかさずジェイク、アーロンは剣を構え、フィオナは詠唱の準備をする。
魔物。
話には聞いていた。
ダンジョンが生み出す、魔気を帯びた生物のことだ。
魔獣は母体が動物だが、魔物はゼロから生まれる。
「アルフ、魔術の準備をしなさい」
隣にいるフィオナに声をかけられる。
「はい」
次第に足音が聞こえてくる。
「ガルルルル」
やがてそれは姿を現した。
狼のような姿をしており、体長は三メートル程度ある。
全身を黒い体毛で覆っており、闇に溶け込んでいる。
ただ、それが異質だと分かる特徴があった。
その魔物は、頭を三つ持っていた。
「ケルベロスか! なぜこんなところに!」
そう言い、ジェイクは剣を強く握りしめる。
「アルフ、この戦いは私とアルフの立ち回りが大切になる」
フィオナの頬に一筋の汗が伝う。
「はい、全力でやります」
本気でやらなければ。
手を抜いてはいけない。
全員が構えて数秒経ったとき、戦闘が始まった。
ケルベロスは三つの頭を器用に使い、ジェイク、アーロン、ルーファスを噛み砕かんと牙を向ける。
「ガアアァァ!」
三人はかろうじてケルベロスの牙を防ぐ。
フィオナは詠唱を始め、アルフはすかさず魔法を放つ。
風でできた槍が中央の頭に深々と刺さる。
それを好機と言わんばかりに中央にいるアーロンが首を切り落とす。
ルーファスはいささか劣勢だろうか。
既に全身にいくつかの傷を追っている。
「ルーファス!!」
フィオナはルーファスと対峙する頭に攻撃を放つ。
魔法をくらったからか、ケルベロスは既にアルフ、フィオナに注意を払っており、魔術をかわす。
するとアーロン、ルーファス、ジェイクが邪魔だと言わんばかりに2つの首を横に振ってくる。
『ぐうっ!!』
突然の攻撃の変化に三人は軽く吹き飛ばされる。
するとケルベロスがこちらに向かって走り出す。
「グルルアアァァ!!」
「まずい!」
フィオナは詠唱を途中で止めるが、対応が間に合わなそうだ。
すかさずアルフは魔法で正面に氷の壁を生み出す。
ケルベロスは氷の壁に激突する。
氷の壁は多少のヒビを作るが、ケルベロスの突進に耐える。
最初に復帰したアーロンはケルベロスが怯んだ隙を狙い、大剣を思い切り振りかぶる。
「うおおおおぉぉ!!」
大剣はケルベロスの頭を切り落とし、頭は残り一つとなる。
アルフとフィオナは壁の横からケルベロスの最後の頭に向かって魔術を放つ。
魔術は命中し、ケルベロスは瀕死状態になる。
遅れて来たジェイクは下から剣を振り、ケルベロスの喉元を大きく掻っ切る。
「グル……ル……」
ケルベロスはわずかに声を上げ、その場に崩れ落ちた。
「や、やった! ケルベロスを倒した!」
フィオナは両手をあげて喜んでいる。
「いや〜、今回は中々ヤバかったな」
「ああ、アルフくんの魔術が無ければかなり危なかった」
ジェイクとアーロンがその場に座り込みながら言った。
ボロボロになったルーファスがふらふらと歩いてくる。
「そうだな……お前の魔術が無ければ危険だった」
「はい……ありがとうございます」
喜ぶべきなのだろうか。
よくわからない。
「アルフ、素直に喜べ。アルフが俺達を助けたんだ」
アルフの気持ちを察したのか、ジェイクは優しい目で言った。
「……ありがとうございます」
確かに僕の魔法が彼らを助けたのかもしれない。
しかし、それくらいでは自身の心のわだかまりを全て取り除くことはできない。
「それにしても……こんなところにケルベロスが出るのは不自然だ」
ジェイクが何か考えるような仕草をしながら言った。
「そうなんですか?」
「ああ、ケルベロスが出るのはもっと奥の方だ。実際、前にもここまで来たことがあるが、ケルベロスとは今日初めて戦った」
そうだったのか。
ダンジョン内がこんな状況で、ソニアは大丈夫だろうか。
いや、彼女は強い、
なんだかんだしぶとく生き残ってそうだ。
ルーファスは洞窟の壁を背もたれにしながら座り込んで言う。
「そうだな。それに、前来たときより魔獣と会う頻度が多い。ダンジョン内で何か起こっているのかもしれない」
ルーファスの発言にジェイクとアーロンは難しい顔をする。
「そんなことよりケルベロスに勝ったことを喜びましょう!! だって、あのケルベロスだよ!!」
全員が難しい顔をする中、フィオナだけは嬉しいという感情が全面に出ていた。
「ああ、そうだな。凶暴な魔物と言われてるケルベロスを倒したんだ。今はそれを誇ろう」
ジェイクの言葉に全員が落ち着いた表情になる。
「この魔物の素材を持ち帰れば、かなりの成果だな。それにしても、こんな強力な魔物がもう出てくるなんて……」
ケルベロスは凶暴な魔物として有名なのか。
僕の魔法が通用したということは、僕は案外凄いのかもしれない。
そんなことをアルフは心の中で考えていると、ジェイクは真剣な表情でこちらを見つめる。
「なあ、アルフ。一つ言っておかないといけないことがある。もしケルベロスのような凶暴な魔物に出会ったら、俺達はダンジョンを脱出する。そうなれば、君の仲間を助けることはできないだろう。」
その言葉にアルフは大きく目を見開いた。




