第十二話 隠し事
「それにしても、ジェイクさん達はやっぱり冒険に慣れてるなって感じがしますね」
「そりゃそうだ。冒険者になってから結構経ってるからな。ここにだって何回か来てるわけだし」
アルフの声にジェイクが答える。
現在、焚き火を囲むようにしてアルフ、ジェイク、アーロンは休憩をしていた。
焚き火の上には鍋があり、スープがグツグツと煮込まれている。
ルーファス、フィオナは見張りで、少し離れている。
「しかし、魔術師が二人いるのは中々頼もしいな」
アーロンが自分の皿に取り分けたスープを飲みながら言った。
「そうだな、アルフがいなければここまでスムーズに進めなかっただろう」
「そ、そうですかね?」
そんなことを言われると照れてしまう。
実際、彼らには助けられてばかりだ。
一人では絶対ここまで来れない。
ダンジョンに来てから全く人を見ていないが、ソニアはここまで一人で来たのか。
無事だといいのだが。
三人で食事をとっていると、見張りをしていたルーファスとフィオナが戻ってくる。
「ジェイク、奥から冒険者が来ている。魔獣に襲われているようだ……助けるか?」
僕達の他にも冒険者が来ているのか?
それにどうするって、助けるのが普通じゃないのか?
「ああ、当然助けるぞ!」
ジェイクがそう言うと、簡単な準備をし、全員が洞窟の奥に走り出す。
しばらく進むと、熊の魔獣に追われている一人の男がいた。
「お、お前ら!! 助けてくれ!!」
男がそう叫ぶとほぼ同時に魔獣が男に向かって爪を振るう。
魔獣の爪は簡単に男の右足を切り離した。
「ぐああっ!!」
アルフは森の中で自分が熊の魔獣に襲われたことを思い出す。
あの男を助けなければ。
そう思い、アルフはとっさに魔法を魔獣に向けて放った。
ウィンドアローだ。
風の矢は魔獣の右肩に刺さり、血しぶきが上がる。
「なっ! ……行くぞ!」
魔法がきっかけとなったのだろうか、ジェイク達は魔獣に向かって走っていく。
その間にもう一度同じ魔法を放つ。
今度は魔獣の胸に深々と刺さった。
「グルルアアアア!!」
魔獣は痛みに怯む。
その間を狙ってジェイク達は次々と剣を振るった。
最初の魔法が効いたのか、ほとんど追撃を許さず、大量の傷を負った魔獣はその場に倒れ込んだ。
アルフは走って倒れ込んだ男に向かう。
「大丈夫ですか!?」
近くで男を見ると、男の右足は根本からごっそり無くなっている。
さらに、その前に傷を追ったのか、右腕も残っていなかった。
右腕、太ももからゆっくりと鮮血が流れていき、体はピクリとも動いていない。
最初にフィオナがこちらに来て、男の様子を見る。
「……死んでるわね」
死んだ……のか。
初めて人が死ぬのを見た。
男の目は光を無くしており、傷口からは未だに少しずつ血が流れている。
気持ち悪い。
アルフはその場で吐いた。
その後、ジェイク達が走ってこちらまできた。
「おい、お前、あの魔術は何だ?」
ルーファスが口を開く。
その表情はとても冷たい。
今まで魔法のことを隠してきた。
なんて言えばいいんだろう。
頭がうまく回らない。
「聞いてんのか。あの魔術は何だ? 今まで隠してきたのか?」
ルーファスの声は妙に落ち着いている。
周りは何も言わない。
「ふざけんなっっ!!!!」
ルーファスに腹を蹴られる。
苦しい、気持ち悪い。
思わずうずくまるアルフを持ち上げるようにしてルーファスは胸ぐらを掴む
体に全く力が入らない。
すかさずアーロンが止めに入る。
「ルーファス、やり過ぎだ」
「うるさい!! アーロン……黙っててくれ」
ルーファスの声にアーロンは動きを止める。
「おい、お前。こっちはな、常に命をかけてるんだ。魔獣と戦うときも、必死になって、全力でやってるんだ!」
ルーファスの声はアルフに届かない。
いや、届いている。
ルーファスが何を言っているのか分かる。
ただ、何も考えられない。
「お前が突然ついて来るって言って、俺は嫌だった!! 当然だ!! こっちになんの利益もないし、邪魔だからな!!」
静かな洞窟内にルーファスの声だけが響く。
「だがな、ジェイクは、アーロンは、フィオナは、これまでずっとお前に背中を預けたんだ!!!」
周りはやけに静かだ。
「今まで適当に魔術を打ってたのか!! それで仲間が死んだらどう落し前をつけるんだ!!!!」
周りは何も言わない。
……そうか、皆ルーファスと同じことを思っているのか。
ルーファスはゴミを捨てるようにアルフを地面に放り投げる。
「ジェイク、帰るぞ。こいつがいるとダメだ。どうせお前のことだ、こいつを見捨てて進むことなんてできないだろ?」
「……待って……ください……」
自然と言葉が出る。
何故だろう。
「……ソニアを……見つけないと……」
ソニアがダンジョン内にいるとは限らない。
もしかしたら、もう家に戻ってきてるかもしれない。
でも、ダンジョンの奥に進まないといけないと、自然に思ってしまった。
「……そうだな。俺もできればアルフの仲間を助けたい」
ジェイクが答える。
「なあルーファス、アルフはまだ15歳だ。このくらい見逃してやろう」
「……くそっ、分かったよ」
ルーファスがジェイクの言葉に不満そうな顔をしながら答える。
「自分のことばかり考えやがって。お前は最低のクズだ」
最後の言葉がアルフの頭に残る。
僕は……クズなのか……




