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第十一話 初めてのダンジョン

 魔気が大量に溜まり、動物が近くにいると、魔気によって魔獣になる。

 魔獣が魔気の溜まり場に集まり、やがて魔気の規模はより大きくなる。

 そして一定の魔気量になるとコアが形成され、魔物という存在が産まれる。

 魔気が溜まる場所は明確に定まっている訳では無いが、洞窟、草原、森林、海中など様々だ。

 しかし、それらには必ずコアが存在し、まるでそのコアを守るように魔獣や魔物が闊歩する。

 それがダンジョンと呼ばれるものの正体だ。


「さて、行こうか。フィオナ、地図を頼む。アルフは松明を持ってくれないか?」

「はいはい、分かってるわ」

「分かりました!」


 元気に返事をしたのはいいが、松明の用意なんてない。

 どうしようとあたふたしていると、フィオナが松明と地図の用意を始める。

 よかった、僕が松明の準備をする必要はなさそうだ。

 松明に火をつけるとフィオナはアルフに松明を渡し、地図を広げる。


「ダンジョンの地図なんてあるんですね」

「ええ。と言っても、前来たときにマッピングしたやつだけどね」


 なるほど。

 ダンジョンではマップを作る能力も必要なのだろう。


「あのね、アルフ。先輩としての助言だけど、もし魔術師としてやっていきたいなら何かしら別の事をできるようになった方がいいわよ」


 フィオナは人差し指を立てながら話している。

 どういう意味だろうか。


「基本的に剣士とかは周りを警戒するのが仕事だからね。剣士は敵の攻撃にすぐ対応できるけど魔術師は急な戦闘に適してない。だから、剣士が周りを警戒している間に魔術師は別の事をするの」


 フィオナの言葉には妙な説得力がある。

 彼女が冒険者としてかなりの場数を踏んでいるからだろうか。


「マッピングとかは私ができることの一つね」

「なるほど。何ていうか、冒険者は皆、常にやることがあるんですね」


 自分にできることは一体何だろう……


 そうして全員が準備を終え、洞窟に入っていく。

 洞窟内は基本的に広かった。

 高さは十メートル程度だろうか。

 横幅は高さの二、三倍はある。

 アルフ、フィオナを中心にして前にルーファスとアーロンと、後ろにジェイクが位置取り、歩いていた。

 探索するときの陣形らしい。

 

「アルフ、ここからは私も積極的に戦闘に参加するから、あまり的確な指示はできない。あなたは自分で考えていい感じに魔術を打ちなさい。」

「はい、分かりました。フィオナさん」


 ダンジョンに来るまでの道中で何度も魔獣と戦っており、その度にフィオナから様々なことを教わった。

 ここからは自分だけで判断する必要があるのか。

 正直まだ少し自信がない。

 そんなことを考えていることに気づいたのか、フィオナはアルフの背中を叩く。


「大丈夫よ。この私が教えてきたんだから!」


 そう言われて少し安心する。

 フィオナさんがそう言うならきっと大丈夫だろう。


 そうして歩いていると、ルーファスが右手を横に広げた。


「全員、止まれ。魔獣だ……三体いる」


 三体!?

 そんな同時に来るのか。


「明かりにつられて来たのか? ……俺が左の奴を倒す。フィオナ、アルフ、魔獣の姿が見えたら右側二体に魔術を打て」


 ルーファスに言われてフィオナが詠唱を始め、自分も続けて詠唱を始める。

 二人の前に魔法陣が現れ、次第に魔術が形成されていく。


 まだ魔獣の姿は見えない。

 ルーファスは暗闇に溶け込むように消えていった。

 少しずつ魔獣の足音が近づいてくるように聞こえる。

 いつ魔獣が現れるだろうか。

 ……見えた!

 フィオナと共にすぐさま魔術を放つ。


『ウィンドアロー!』


 風が矢を形作り、二体の魔獣に向かって矢がそれぞれ飛んでいく。

 もちろん風なので、はっきり見える訳では無いが。

 二本の矢の一本は見事に心臓部分に突き刺さり、もう一本は脇腹あたりに刺さる。

 魔術が当たると同時にルーファスは暗闇から現れ、短剣をもう一体の魔獣の腹に深々と突き刺す。


「一体生きてるぞ!」


 ルーファスの声とほぼ同時にジェイクが駆け出す。

 脇腹に魔術を受けた魔獣はまだ生きているが、動きは鈍い。

 すかさずジェイクが両手に持った剣を振るうことで魔獣を絶命させる。


「よし、もう大丈夫だ」


 ジェイクは魔獣に刺さった剣を抜きながら言った。

 戦闘が終わってから気づいたが、魔獣は猿のような姿をしていた。

 熊や狼の魔獣ほどではないが、普通の猿よりは大きい。

 

「すみません、僕が魔術で仕留めきれなかったせいで……」


 自分の魔術で魔獣を倒し切ることが出来なかった。

 洞窟や戦闘にまだ慣れていないせいだろうか。

 普段の稽古のほうが魔術の精度が高い気がする。


「構わん。お前の未熟さも理解している」


 ルーファスがそっけなく答えた。


「まあでも、アルフくんがいなかったらちょっとした混戦になった可能性もあったからね。十分役に立っているさ」


 すぐそばにいるアーロンが言った。

 そう言われると嬉しい。


「まだ始まったばかりなのに何弱気になってるのよ。もっと自信を持ちなさい! さあ、先に進むわよ」


 そうだ、まだダンジョンに入ったばかりだ。

 ここで弱気になっていたらこの先やっていけないかもしれない。

 そう考え、先に進むことにした。

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