第十話 魔獣との初戦闘
ジェイクとアルフの夜番の次の日。
アルフ達がいつも通り馬車でダンジョンに向かっているとき、突然馬車が止まった。
「魔獣だ!!」
外にいたルーファスが叫ぶ。
すかさず中にいたジェイク達は馬車の外に出ていった。
アルフも遅れて馬車を降りる。
「この旅初めての魔獣だな」
ジェイクは腰につけた剣を抜きながら言った。
「アルフは見学してな。俺達のかっこいいところを見せてやる」
ジェイクはそう言いながら一本の剣を構える。
アーロンやルーファスも既に剣を構えている。
アーロンは大きな体に見合った大剣、ルーファスは二本の短剣だ。
フィオナは後ろで何もせず魔獣を見ている。
「ガルルルルッ」
魔獣は大きな狼のようだ。
体長は二メートル程だろうか。
前に出会った熊の魔獣よりは小さいが、十分に脅威である。
「行くぞ!」
ジェイクがそう言うとアーロン、ジェイクが走り出す。
魔獣もジェイク達の行動に合わせて走り出し、凶悪な牙でアーロンに襲いかかった。
「グルルアアアア!!」
「ぐっ!!」
アーロンは両手で持った大剣で魔獣の攻撃を防ぐ。
すかさずジェイクが魔獣の左横に回り込み、剣を振るった。
魔獣はジェイクの攻撃に反応し、右側に飛ぶようにして避けた。
「ギャウンッ!!」
魔獣が着地するタイミングで変な鳴き声を上げる。
魔獣が着地する場所にはルーファスがおり、短剣を深々と魔獣の横っ腹に刺していた。
「うおおおおぉぉ!!」
アーロンは大剣を上に構えて魔獣に振り下ろす。
魔獣の首はいとも簡単に胴体から離れていった。
「どう、アルフ? 私達凄いでしょう!」
隣にいるフィオナが言った。
「はい、とても凄いです!!」
完璧な連携だった。
魔獣の動きを読み、少ない手数で倒す。
これほど理想的な倒し方は他にないだろう。
すると、アーロンがこちらに歩いてくる。
「フィオナ、お前は何もやっていないだろう。何を偉そうに言っているんだ?」
「え、ちょ、何よ! 私がなにかする前に勝手にあなた達が倒したんじゃない!!」
フィオナは顔を赤くして言った。
「いい? アルフ。私はあなたより凄いんだから、私を敬いなさい!」
「はい! 分かりました、フィオナさん!」
「よろしい!」
ここで謎の主従関係ができてしまった。
まあ、自分の発言も要因の一つだが。
そんなことを言っていたらジェイクの声が聞こえてくる。
「魔獣だ! もう一体現れたぞ!」
二体目が現れたのか!?
アーロンは走ってジェイクの方に向かっていき、フィオナはアルフに声をかける。
「ちょうどいいね。ねえアルフ、魔獣を倒したことがないんでしょ? それなら早速実践練習でもしようじゃない」
そう言うフィオナはどこか自信がある様子だ。
僕が魔獣討伐に参加するということだろうか。
ちょっと不安だ。
「私に任せなさい! あなたを一流の魔術師にしてあげるわ!」
そう言ってフィオナは魔獣に向かって歩き出す。
さっき倒したのと同じ狼の魔獣だ。
僕は遅れてフィオナについていった。
魔獣の近くではジェイク達が集まり、今にも戦闘が始まろうとしている。
「さて、アルフ。ファイアボールとかは使えるでしょ?」
「はい、使えます!」
「じゃあそれでいきましょう。早速詠唱を始めちゃって」
詠唱には時間が必要だ。
まだ魔獣と牽制しあっており、戦闘は始まっていない。
とりあえず言われた通りにやることにする。
「はい! この身、この気に力を与え、」
右手を前に出して詠唱を始めるとほぼ同時に戦闘が始まる。
「戦闘をよく見なさい。今、誰が、なんのために、何をしているのか正しく理解して」
戦況を見ながら詠唱を続ける。
右手の先に魔法陣が現れ、火球が少しずつ作られていった。
「この場に火の精霊の力を借りん、」
基本的にアーロンが魔獣の攻撃に耐え、ジェイクがすかさず攻撃をする。
ルーファスは程よい距離を保って気を狙っているだろうか。
「状況を正しく理解して……今!!」
「ファイアボール!!」
魔術によって作られた火球が魔獣に向かってまっすぐ飛んでいく。
ちょうどジェイクの剣を牙で防いでおり、火球を避けられずにまともにくらった。
すかさずアーロンが自身の大剣でトドメを刺した。
「ほら、完璧だったでしょう? 私の指示が的確だったわね!」
「はい、フィオナさん! 僕、初めて魔獣を倒しました!!」
厳密には魔獣を倒したのはアーロンだが。
初めての魔獣との戦闘にアルフは興奮していた。
「ふふ、良かったじゃない。それじゃあ素材の回収は彼らに任せて待ちましょうか」
しばらくして、ジェイクとルーファスが魔獣の素材を回収して戻ってきた。
あの魔獣は毛皮が売れるらしい。
ジェイクが隣りに来て声をかける。
「いや〜アルフがあの魔術を放ったんだな。やるじゃないか」
「ほとんど私の指示だけどね!」
確かにその通りだ。
魔術師は敵に魔術を打つだけだと思っていたが、あんなに色々考える必要があるのか。
フィオナさんも凄い人だ。
「アルフ、ここからは魔獣も増えていくだろう。その分、ダンジョンに近づいているということだ」
「そうなんですか?」
「ああ、ダンジョンっていうのは魔気が一箇所に溜まることで出来るものだからな。ダンジョンに近づくに連れて魔気も大きくなる。魔気が増えると魔獣も増えるのさ」
そういえばルイザさんも似たようなことを言っていたな。
確か動物が大量の魔気を浴びると魔獣になるんだっけ。
アルフ達は馬車に戻り、ダンジョンへ向けて再び進みだした。
〜
その後も何回も魔獣と対峙した。
ジェイク達は毎回見事に魔獣を仕留めており、凄いとしか言いようがなかった。
出発してから一ヶ月が経った頃。
いつものように馬車で進んでいると、途中で馬車が止まり、手綱を引いていたルーファスが顔を覗かせる。
「着いたぞ、お前ら」
馬車を降りると、そこには巨大な洞窟があった。
「でっか……」
入り口の高さは十メートルはあるのではないだろうか。
洞窟の中は暗く、外からだと奥は全く見えない。
「さて、ここから本番だな」
隣りにいたジェイクが言った。
こんなところにソニアは入っていったのだろうか。
生きて帰ってこれるのか、これ?
そんなことを考えているとアーロンに後ろから肩を叩かれる。
「アルフくん、安心していいよ。この俺が守ってあげるからね」
「とても頼もしいです。アーロンさん」
「アーロン、ダンジョンの中で子供を守る余裕があるのかよ」
ルーファスが言った。
なんだろう、少しトゲのある言い方だ。
「大丈夫だとも。アルフくんも、ルーファスも皆守るさ」
「はあ、できるといいな。それ」
ルーファスの返事を聞いてガハハと笑うアーロンがとても頼もしく見える。
そんなことをしているとジェイクが皆を集める。
「さて、とりあえずダンジョンに入るのは明日にして、今日は体を休めよう」
「そうね。なんかもう馬車で疲れちゃった」
そうして僕達は明日からダンジョンに挑むこととなった。




