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第九話 夜番

村からダンジョンまでにはかなり距離がある。

 そのため、アルフ達は馬車を使ってダンジョンに向かっていた。


「ねえジェイク〜この馬車狭いんだけど〜。もうちょっといいやつ買おうよ~」

「いやいや、このくらいの広さがあれば十分じゃないか? わがまま言うんじゃない」

「え〜」


 フィオナの不満をジェイクは一蹴する。

 現在、馬車の中にはアルフ、ジェイク、フィオナ、アーロンの四人がいる。

 ルーファスは外で馬の手綱を引いていた。

 確かにこの人数では少し手狭にも感じる。

 しかし、僕にとってはこれも冒険の醍醐味だと、少しワクワクしてる部分もある。

 そんなことを考えていると、隣に座っているアーロンが声をかけてくる。


「アルフくん。君は剣を持っているようだが、戦えるのかい?」

「はい……その……実践経験はないですが……どちらかというと僕は魔術の方が得意です!」


 剣や魔術は稽古でしか使ったことがない。

 実際に魔獣と対面したときに使いこなせるだろうか。

 少し不安だ。


 それはそうと、このパーティーはみんな人間だ。

 一応魔法と魔族のことは伏せることにしよう。


「おお、そうか! その若さで魔術を使えるのか! それなら魔術はフィオナじゃなくてアルフくんに任せてもいいかもな!」

「ちょっとアーロン、何言ってるの! 私の方が魔術の扱い上手いから! 多分」


 アーロンはガハハと豪快に笑う。

 それにつられるようにしてジェイクがわらった。

 フィオナは終始不満そうな顔だった。

 彼女はこのパーティーではいわゆるいじられ役なのだろうか。





 旅を始めて数日が経った夜。

 アルフとジェイクは二人で焚き火のそばに座り、夜番をしていた。

 村からダンジョンまで向かうには馬車でおよそ一ヶ月かかるため、まだまだ馬車の旅は続くだろう。

 未だに魔獣と一切出会わない。

 最初はほとんど魔獣は現れないとジェイクが言っていたが、どうやら本当らしい。


「どうだアルフ、初めての旅だと言っていたが、意外と楽しいもんだろ?」

「はい、楽しいです。と言っても、まだ移動しかしていませんが」

「確かにそうだな。……あのな、俺のパーティーは皆仲間思いでいいやつばっかだ。珍しいんだぜ? 普通は赤の他人をなんの理由もなく旅に同行させることなんてありえないからな。」

「それについては本当に感謝しています。」


 ジェイク達に拾ってもらわなかったらどうなっていただろうか。

 多分一人で無理矢理ダンジョンに向かって、途中で野垂れ死んでいたかもしれない。

 それともルイザさんが家に戻ってくるのを待っていたのだろうか。

 あ、もしものために家に置き手紙を準備したほうが良かったかもしれない。

 今更どうすることもできないが。


「冒険者は楽しいぞ? 色々な出会いがあるからな。もちろんその分別れもある。でもな、たくさんの人と出会って、仲間を作って、一緒に魔獣を倒したりする。そうやって作られた絆は何よりも強い。」


 冒険者か……

 ルイザさんは冒険者の頃を語るとき、いつも懐かしむような目をしていた。

 冒険者はとても楽しいものなのかもしれない。


「いいですね、冒険者。僕も、いつか冒険者になりたいです。」


 町に行く機会があったら冒険者になってみてもいいかもしれない。

 ジェイクは何を思ったのか、自身の拳を僕の胸につけた。


「お前はもう冒険者だろ? こうして俺達と旅をしてるじゃないか。」


 ジェイクにそう言われ、自身の心に何か込み上げるものを感じる。

 なぜそんなことを言うのか、明確な理由は分からない。

 ただ、彼が何を言おうとしているのかなんとなく分かった気がした。


「はい……ありがとうございます。」


 きっと、彼は心の中に冒険者として大切な何かを持っているんだろう。


 その時、ジェイクはアルフの尊敬する人の一人になった。


「ところで……アルフはフィオナのことをどう思ってる? ほら、あいつ、普通に可愛いだろ?」

「え? 急に何言ってるんですか!?」


 突然の話題に焦る。

 なぜここで彼女が話に出てくるんだ。


「おいおい、そんなに声を出したら他のやつが起きちまうよ。」


 そう言ってジェイクは自身の手でアルフの口を塞いだ。


「正直な話、あいつはもう20歳を超えている。今が婚期じゃないかって思ってるんだ。」


 婚期!?

 まあ確かに、そうなのか?

 正直、フィオナは可愛い方だ。

 それこそ、相手を見つけることも彼女にはできそうだが。


「そういうジェイクさんはどう思ってるんですか!?」

「俺にとってフィオナは……仲間であり、妹だな。ほら、妹がずっと独身だと兄も気にするだろ? それにアルフ、お前はもう少し経てば絶対イイ男になる! 俺の勘がそう言ってる!」

「そうは言っても……僕、まだ15歳ですよ? それに、まだフィオナさんのことはよく分かっていませんし。」

「なんだアルフ、お前はうぶだな〜。それともなんだ、もう好きな人でもいるのか?」


 突然そう言われ、アルフの脳内でルイザの姿が思い浮かぶ。


「え!? それは……その……よく分かんないです。」

「そうかそうか! 可愛いやつだな〜アルフは!」


 そう言ってジェイクはアルフの背中をバシバシ叩く。

 普通に痛いんだが。


「まあとりあえず、そういう事はあとにしてアルフの仲間をまず見つけないとな。」


 そうだ。

 僕はソニアを追ってここまで来ている。

 ソニアと出会わなければ旅に出た意味がない。


「そうですね。ジェイクさん、ダンジョンまでよろしくお願いします。」


 その後もしばらく夜番は続いた。

 くだらない話もたくさんしたが、ジェイクとの話は参考になることがとても多かった。

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