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淡き幻想の彼方へ

淡き幻想の彼方へ外伝 ミゾレ編

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2021/09/30



 雨がざあざあ降っている。

 そんな中、森の中を迷子になっている少年がいた。

 少年の名前は、ミゾレ。


 ミゾレは、森の中に果物をとるために、やってきていた。

 それは、お店で買うとお金がかかるが、自然に生えているものを採取すれば無料だからだ。

 つまり、節約するために、森に入ったのだった。

 ミゾレの家は貧乏だ。そして、大家族。

 だから彼は、少しでも家計の足しになる事がしたいと思った。


 しかし、採取しているうちに、雨が降ってしまった。


 大雨が降るなかミゾレは、雨宿りが出来る場所を探していた。

 右往左往する彼がやがてたどりついたのは、さびれた研究所だった。


 蔓に覆われて、建材はサビついている。


 廃棄されて長い年月が経っている事が外観からうかがえた。


 ここで、雨宿りしようと彼は判断し、玄関先で腰を下ろした。

 雨が降りしきるなか、風が冷たく吹き付けてくる。


 このままだと風邪をひいてしまうかもしれない。

 そう思った、ミゾレは建物の中に入る事にした。


 住人のいなくなった建物に、勝手に入るのは気が引けたが、健康には変えられなかった。





 建物の中に人はいない。

 しかし、機材などはそのまま残されているようだった。

 人の気配だけがなくなっていた。

 そこには、不気味な静寂が満ちていた。


 ミゾレは、目的もなく歩き回った。

 じっとしているのも退屈に感じたからだ。


 建物の中は、外観と同じようにさびれている、と思いきや思ったより綺麗だった。

 まるで、内部と外部の時間の過ぎ方が異なっているかのようだった。


 誰かが定期的に管理をしに来ているのかもしれないと思った。


 ミゾレはくしゃみをした。


 もしかしたらこの研究所の中に、体を温めるものがあるかもしれない。

 

 濡れた服を乾かす場所なども。

 ミゾレは、気後れしつつも研究所の奥へと進んでいく。


 すると、そこには巨大化したウジ虫が何匹もいた。

 ミゾレは悲鳴をあげながら、逃げる。

 普通のウジ虫は、ゆっくりとしか進めないはずだった。


 しかしウジ虫は、足が速かった。

 ミゾレは追いついたウジ虫達に、のしかかれられた。

 そして、食われるかという思いをした。

 だが、ウジ虫はミゾレを喰わなかった。


 のしかかれれていたミゾレに、青い液体のようなものがかかったからだ。

 それきり、ウジ虫達は動かなくなる。

 見ると、ウジ虫達は何者かに引き裂かれたようだった。


 助かった、と思った。


 だが、ウジ虫が絶命した後も、その何者かは必要以上にウジ虫を引き裂いていく。


 まるで下にいるミゾレごと、殺そうとしているかのように。


 ミゾレは慌てて、ウジ虫の下から這い出た。


 すると、その何者かがミゾレに襲い掛かっていた。


 それは、ぶよぶよとした人間らしき何かだった。

 だが、肌は青くなっていて、頭皮からは髪のかわりに、蛇が生えている。


 おとぎ話に出てくる蛇の髪の異形のようだった。


 ミゾレは悲鳴をあげて、逃げ惑った。






 そして、ひたすら走って、丈夫な扉の部屋へと逃げ込んだ。


 そこには、たくさんの拷問器具が並べられていた。

 悲鳴をこらえて、目を見張るミゾレ。


 何者かが追ってきているはずなので、静かにしなければならなかった。


 やがて、扉が叩かれる音がする。


 だが、その部屋の扉は頑丈だった。


 何者かは入っては来られない。


 やがて、扉の外にいた何者かは去っていった。


 しかし、安全になったとは思えなかった。


 ミゾレは拷問器具が並ぶその部屋から一刻も早く出たかった。


 体を休める間もなかった。

 辺りを窺い、部屋の外に出たミゾレは玄関からではなく、窓から外に出る事にした。


 一瞬でもその狂った空間にいたくなかったからだ。


 しかし、窓は開かなかった。

 しかもそのガラスは、どんなに叩いても割れない。


 ミゾレは閉じ込められたようだった。

 途方にくれるしかなかった。


 しかし、絶望に浸る時間すら、そこは許してくれないようだった。


 その場に、うっすらとした黒い影のようなものがあらわれた。

 不気味はそれは、何をしてくるでもない。

 しかし、これからもそうとは限らない。


 ミゾレは再びそれらから逃げ回らなければならなかった。


 追い立てられるように建物の上の階へと昇っていく、ミゾレ。


 ミゾレは屋上に出た。

 外は雨が降っていたが、そんな事はもはや気にならなくなっていた。


 ミゾレは屋上から外に出るために、外壁を伝って降りようと考えた。


 雨の中、足を滑らせないように慎重に行動する。


 ミゾレはゆっくりと、建物の壁を伝って、降りていった。


 しかし、途中の階で窓に何者かが映った。

 それは、うじむしを切り裂いたあの何者かだった。


 手に持っているナイフが、青い体液で濡れているため、間違いないと思った。


 ミゾレが何度もたたいても割れなかったガラス窓は、何者かの拳であっけなく割れた。


 その何者かはミゾレにナイフを突き立てようとする。


 ミゾレは慌ててその場から離れようとして、足を滑らせた。


 ミゾレは地面に落ちたが、がかろうじて意識はあった。


 だか動ける体ではなかった。


 体中が痛かった。


 骨が何本か折れているかもしれなかった。


 研究所の窓から、何者かがナイフを落とそうとしているのが見えた。


 それがいるのは、ちょうそミゾレの真上だった。


 ミゾレがやめてくれ、と訴えるがその何者かは聞き入れなかった。


 ナイフから手をはなす。


 地面に倒れたミゾレめがけて、ナイフが吸い寄せられていった。


 ミゾレは胸からナイフを生やし、吐いた。


 ただ、果物を採取しに森へ訪れた少年。


 彼は、そこで生を終える事になった。



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