表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/27

願いと呪い

全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。


よろしければ、ご評価もお願いします!


「佐子は美人だった。だから選ばれてしまった。それだけだ」


「おっかさんを知っているんだな?」


 暁理は姿勢を崩した。


 普通の中年男性の表情に変わり、旅の途中で井山を訪れたことから話し始めた。


 五里には初めて聞く話ばかりだ。


 佐子を攫ったのは武士ではなく、武士を装ったただの山賊だったこと。


 佐子は京に着くと、武士に売られ、寺に囲われ、毎日念仏を唱えて過ごしたこと。


 いまや左半身を覆うほどに広がった痣の正体が、母の願いを叶えた代償だったこと。


 どれも五里の想像を超えていたが、暁理の目を見ていると素直に受け入れられた。


「その痣は私が仕込んだものだ。私を恨むか?」


「いや、あんたを恨めばおっかさんを恨むことになる。おっかさんの願いを叶えてくれたこと、ありがとう」


 五里の目は、穏やかではないが、温かみのある目になっていた。これには暁理も驚いた。


「その痣、いずれ全身を覆い、その身を喰らい、お前は死ぬことになる。呪いの一つだ。それを解く術はあるが、どうしたい?」


「このままでいいや。まだこの体が要る。それが終わったら、また来てもいいかな?」


「よいが、私は治す術を知らぬ」


「じゃあ、誰が解けるんだ?」


「私の師匠だけだ」


「どこにいる?」


「二年前にここを出ていかれた。東北の方へ行くと言っていたが、それ以上は分からない」


「名前を教えてくれ」


「それはできない。誰にも言うなと、言われたのでな」


「わかった。感謝するよ、たくさんありがとう」


 五里は去ろうと、立ち上がった。


「泊まっていきなさい」


「仏さんの家は居心地が悪いや」


 五里は最後に笑って見せた。


 閉じられた引き戸に向かい、暁理は手を合わせた。


近々 次話投稿 予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ