残ったもの
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
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翌日、落とし穴に戻ると、燃えかすの中に佐子の骨があった。それを集めて、穴を掘って埋めた。
佐子の墓を作っていると、神社から神主が出てきた。
「そこでいいのか?」
五里は殺人衝動が起こったが、差し出された握り飯を見ると、涙が溢れ出た。
神主は都から来たが、貴族ではなく、ただの旅人だった。
東北へ行くつもりだったが、村人に頼まれて神社を作った。貧しい村なので社は非常に小さい。
五里は狭い石段に腰かけ、放心状態で半日を過ごした。
「おぬし、何を持っておる?」
五里は懐から木片を取り出した。
そこには文字がかかれているが、五里は字を読めない。
「正鳳寺、暁理。これはなんだ?」
「おっかさんの枕にあった」
五里の目は怯えている。
「そうかそうか。で、どうするんだ?」
「おっちゃんは?俺を殺すのか?」
神主は笑った。
「殺してどうするものでもない。それで、これからはどうする気なんだ?」
「俺にはもうこの木しかない。おっかさんが残してくれたもんだからな」
「じゃあ、大切に持っておきな。私はまた旅に出る。じゃあな」
神主は社に入っていく。
「ちょっと待って。これ、もう一度読んでおくれ!」
「しょーほーじ、京にある寺の名前だ。ぎょーり、坊主の名前だな。じゃぁ、達者でな」
五里は、その日は家で夜を越した。
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