ずっとそうだった
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
よろしければ、ご評価もお願いします!
五里の叫び声を聞いた村人たちは、武器になりそうな農具を持って多良のもとに集まっていた。
「あいつ生きてるぞ」
「お、おい。どうする?」
「やっぱり殺しちゃいけなかったんだ」
「多良が死んだのはあいつらのせいじゃ。なんとしても殺さにゃ、皆病気で死ぬぞ」
「あいつを殺して村を守るんだ」
男たちが怯えながら集まっていると、神社に近い家から煙が上がり始めた。
女や子供の悲痛な叫び声が聞こえる。
男たちが慌てて駆け付けると、火と鎌を持ち、裸に血まみれの五里がいた。
「ひぃっ!」
「や、やれー!」
二十人を超える男たちがいっせいに五里に襲い掛かった。
五里は子供だが、見た目の異形さが大人たちを怯ませた。
五里は無我夢中に暴れまわり、気がついたころにはたくさんの死体が転がっていた。
夢から醒めたばかりのような、ぼんやりとした心地で家に帰ると、敷きっぱなしの布団があった。
五里は服を着て布団に入り、枕を抱きしめた。涙が止まらない。
まだ空は明るいが、そのまま泣き疲れて眠った。
物音がして目を覚ますと、少し暗くなっていた。
再び枕を抱きしめると、枕の中に文字のある木片を見つけた。それを懐にしまい、外に出た。
五里が玄関を出ると、村人たちはすぐに襲い掛かった。女も大勢いる。
皆、血走った目で鎌や鍬を振りかざした。
無防備な五里だが、左腕だけで抗うことができた。
五里が左手で握れば腕でも足でも潰れ、殴りつければ腹も背も弾けた。
それでも気が狂ったように襲い来る村人たちを、必死に殺していった。
「お前らが悪いんだ。お前らが悪いんだ!」
五里の心は怒りでいっぱいだった。
人を殺すたびに、涙する鬼の顔が目に浮かんだ。
それは、毎晩眠りについたあと、すすり泣く音で目を開いたときに見た、佐子の恨みに歪んだ顔だった。
日が完全に沈み、五里は火を持って村中を徘徊し、人がいれば殺し、家があれば燃やした。
そうして朝が来ると、村人は五里一人になっていた。
近々 次話投稿 予定