初めての涙
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
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佐子は痩せ細り、両親も常に体調を崩したままだ。
八歳になった五里の体は、左腕の痣が広がり、胸と背中も黒くなっていた。そして、左腕だけが大人よりも大きくなっていた。
広がる痣と左腕は服でなんとか隠していた。
昼間は一緒に働いて、五里が佐子を支えた。夜寝るときは一枚の布団で、佐子が五里を包むようにして寝た。
枕もとで佐子はよく、強くおなり、強くおなり、と繰り返し言い聞かせた。
ある日、神社で祭りがあるからと、村の変わり者が五里を誘いに来た。
佐子は何かおかしいと思ったが、祭りに行ったことのない五里が無邪気に喜ぶので、足を運ぶことにした。
神社への道中、一緒に歩いていた変わり者が突然走りだして、先に行ってしまった。
急げない佐子と五里は、それでも前に進んだ。
神社の近くの落ち葉が広がるところを歩いていると、急に目の前がひっくり返った。
二人は落とし穴に落ちた。
そんなに深くはないが、木を鋭く削った杭が何本も立っていた。
佐子は咄嗟に五里を抱き、背中から落ちた。
体中に杭が刺さり、佐子は即死した。一方五里は、軽く打っただけで済んだ。
五里は、動かなくなった母を揺すり、泣きながら呼びかけた。
優しく頭を撫でてくれた手は、垂れたまま動かない。
穴の上から声が聞こえて顔を上げると、村人たちが覗き込んでいた。
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