もう一枚の葉
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
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そのころ、玄将は宮中の検非違使庁にいた。
「玄将殿。貴公は知ってらっしゃるか?」
玄将の秘書にあたる府生の持成が、自慢気な顔で話しかけた。
「なになに、何事か?」
だいたい何を言おうとしているのかはわかる。
「じつは近頃、鬼が都中を歩き回っていると、耳にしたのだ」
「鬼だと!?」
「鬼!恐ろしいことに、人を喰らい、刀も矢も通さぬ体を持つ鬼だ」
「なんと恐ろしい。いやいや、マロたちがそんな弱気ではいかない」
玄将は扇子を扇いで、わざと強がっているように見せた。
「貴公。顔が引きつっておられる。くっくっく」
「何を言うか。鬼にかまけて、さぼろうとするな」
「しかし、鬼を捕まえれば、次の別当の座は、、、」
「ふんっ、不謹慎な。喪中にあるぞ。仕事にもどれぃ!」
玄将は、部下が一度捕まえた鬼を何者かに逃がされたことを、まだ知らない。
日勤の玄将が屋敷に帰ったのは、昼過ぎだ。
座敷に上がると、青ざめた顔の部下たちが待っていた。
「何!逃げられたじゃと?何をしておる。もう一度捕まえて来い!」
無理を言われても、言い訳をすれば仕事を失いかねない。部下たちはそそくさと出て行った。
「おーい。吉助やー」
吉助とは、玄将がずっと世話をしている六歳の孤児である。
「はい!ただいま」
廊下に軽い足音が近づいて来る。
「吉助、参りました」
「これからトトメのもとへ行くぞ」
「それでは整えます」
男が女の家に行き、遊び、互いに相手を見定める。トトメとは女につけた仮の名だ。本名はなかなか教えないものだ。
玄将は必ず吉助一人を連れて行くことにしている。吉助は邪魔するようなことはしないし、使いに走らせられる者が一人ほしい。都合良いのだった。
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