大きめの葉
全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。
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皆が目を覚まし始めた、まだ暗い都を、江ノ介は五里を連れて走った。
「どうだ?来たほうへ戻れないだろう?」
「向こうだぞ」
進めど曲がれど、似た景色が現れる都は、方角を見失いやすい。
しかし、五里はあっさりと指差してみせた。
「驚いたな。京に長くいないと難しいのだがな」
山の中に比べれば容易いことだった。
人と会うことなく良就の屋敷に着いた。井山の村長の家よりも大きいが、京の中では小さいほうである。
江ノ介はなぜか裏口から入っていった。
「じきに夜が明ける。良就さまは夜勤に出ておられるので、お帰りになれば床に就かれる。昼には起きるので、会うのはそれからだ。それまでは庭にでも身を隠してくれ」
「わかった」
五里は、隠れるのが得意になっていた。すぐに姿を潜ませた。
日が昇り始め、人通りが多くなってきた頃、良就が帰ってきた。
「おかえりなさいませ」
出迎える奉公人の中には江ノ介もいる。
「江ノ介も用が済んだようだのう」
「はい」
「ゆっくり報告を聞きこう」
二人で部屋に入り、良就の着替えを始めた。
「気取られやしないだろうね。誰にも」
「知っているのは私とヤヤだけです」
「それで?」
「やはり、玄将は鬼に気付き、捕らえようと罠を張っておりました。鬼は、ばけものと言えどもまだ子供。あっさりと捕まりました」
「さすがは玄将というところか。ところで、痣の様子はどうだった?」
「顔と右腕、両足の膝よりも下、だけは人肌でしたが、それが何なのでしょう?」
「その痣は、、、その鬼、死ぬのが近いかもしれん。最期に立ち会うのがお前ならば、せめてお前だけでも優しくしてあげなさい」
「はい。恩もありますので、そのときは」
「で、報告の続きがあるのだろ?」
「はい。その鬼を連れて参りました」
良就の顔が柔らかく動いた。
「ほう!なるほど。お前が玄将の手下から助けてやって、鬼を味方につけたということか」
「はい」
「よくやった。ふぁーあ。終りか?」
良就は大きく欠伸をした。
「はい」
「眠い。とりあえず寝る」
良就は寝室に移動した。
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