表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

信じてみる

全27部分です。お付き合いよろしくお願いします。


よろしければ、ご評価もお願いします!

 昼に休み、夜に動くという生活をしていた五里は、なかなか寝つけずにいた。


 すると、皆が寝静まった夜半に誰かが屋敷に入ってきた。


 足音はまっすぐに五里のもとへ進んだ。


 五里は部屋の隅に立ち、足音のほうを向いて身構えた。


 襖がゆっくりと開き、男が顔を出した。


「おーい、寝たか?」


 暗くてほとんど見えていない男と違い、五里はうっすらと見えていた。


 男は小声で続けた。


「起きろ。静かに起きて、ついてきてほしい」


 どうやら、殺しに来たわけではないとわかったので、五里から話しかけた。


「江ノ介か?」


「うわぁっ!」


 男は驚き、勢い余って、襖を押し倒してしまった。


 しかし、昼間と同様、誰も来なかった。


「そうだ、江ノ介だ。驚かさないでくれよ」


「勝手に驚くな。いくつか知りたい」


「とにかく、今はついてきてほしい」


 誰もいない暗闇に向かって話す江ノ介だが、外に出るのは造作もないようで、物音一つたてなかった。


 二人はその足で大津を離れた。


 だいぶ空が明るくなってきたころ、山の始まりで休んだ。


「まずはじめに言わせてほしい。妹のヤヤを助けてくれたこと、心より感謝いたす。返しきれぬ恩ができた」


 五里は初対面の男を信用しないのだが、普通に向き合ってくれるとなれば、ヤヤの兄でもあるし、話は違った。


「運が良かったのだ。俺のほうこそ、お前に助けられたようで」


 江ノ介はまったく恐がる様子がない。ヤヤといい江ノ介といい、五里はまともに接してくれることが、何より嬉しかった。


「五里といったな?何故に、あの屋敷に入ったのだ?」


 五里は、誰であろうと全てを語るつもりはない。それがヤヤの兄でも、ヤヤでも。


「玄将には恨みがある。許せない。必ず殺す」


 五里は視線を逸らして言った。


「この度、俺はお前を助けたが、それでヤヤの恩を返せたとは思わない。どうか、俺にできることがあれば言ってくれ」


 復讐することに五里は後ろめたい気持ちもあるのだから、それを手伝うと言われても、受け入れるわけにはいかなかった。


「これは俺が一人でしないと意味がない。嬉しいけど、手助けはいらない」


 五里は立ち去ろうとするが、江ノ介は腕をとって付いてきた。


「なれど、このまま別れることもない。せめて、俺が世話になっているお方に会ってもらえないか?ヤヤのことを話したら、感動されて、涙を流して、会ってみたいとおっしゃるんだ!」


 そんなことなど、五里には意味がない。無視して歩き続けた。


「そのお方も、玄将と同じご身分にあり、玄将のことをよく知っている。五里が入った屋敷には玄将はいなかった。玄将に辿り着きたいのならば、会ってみてはどうか?」


 五里は足を止めた。


「武士は嫌いだ。もしかしたら、その男も殺してしまうかもしれないぞ!?」


 五里の目は急に、刃の切っ先のように鋭く冷たくなった。


 江ノ介も武士の端くれであるが、このときばかりは縮み上がった。


 それを必死に隠して、続けた。


「とても立派な御仁だ。そんなことにはならん」


 二人は夜になってから京を目指した。


近々 次話投稿 予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ